コロコロ
「鈴華様、こちらに用意が整っております」
ずらりと調理人が苗子の後ろに並んでいた。
「あ、皆さんは忙しいでしょうから、仕事に戻ってください」
しまった。
私が顔を出すってことはそういうことか。申し訳ない。
……呂国では……私はほぼ姫の扱いじゃなかったからなぁ。まぁ好きにさせとけばという感じで。
さすがに、蛙が卵を生むところが見たいと、冬場に庭を掘り返して蛙を探し始めたのは怒られたけど。
だって、本には蛙の卵やおたまじゃくしが蛙になることはかかれていても、蛙がどうやって卵を産むのかまでは書いてなかったんです。5歳ころの話かな。
「じゃぁ、苗子はこれをつぶしてください。私はその間に」
と、調理場をきょろきょろしていろいろ必要な物をかき集める。
何をしているんだろうと、調理人たちはちらちらとこちらを気にしながら仕事をしている。
「呂国では里芋で作る料理なんです。あ、呂国でも、東の方の一部地域の郷土料理……というかハレの日のごちそうなんですけど。ジャガイモで作っても美味しいと思うんですよ」
と、気になっている人のために説明しながら調理。
調理と言っても、私も料理が特別得意な方ではない。でも、本を読んで気になったものがあれば調理場へ飛んで行って料理人に作ってもらったり一緒に作ったりしていたので、何も出来ないわけではない。
「ここからがちょっと馴れが必要なんです」
と、油を入れた鍋を火にかける。
「油をこんなに大量に?料理……ではないのか?」
という驚きの声が聞こえてきた。
うん。呂国のときも、初めて見た人たちはみんな同じように驚いていた。私も本で読んだときは本当に驚いて。
その地域の者を呼んで実際に作ってもらったものを食べた時は、もっともっと驚いて。
一緒に食べた城の料理人たちが、東の村の人のところに弟子入りして3分の1に減っちゃった時には、お父様に「何をしたんだ!」と怒られて、それを調理人の一人が私が食べたものを出してお父様をなだめてくれたんだ。「これは仕方がない。修業が終わり次第、呼び寄せメニューに入れるように」と、料理人たちの復帰まで少ない人数による質素な料理を認めたんだった。懐かしいな。あれは7歳くらいだったっけ?
「えーっと、これくらいです、これくらい、このタイミングで、えいっ。それから、えーっと、途中で裏に返して、色がこれくらいのときに、そっと引き上げ、あの、あとお願いしていいですか?」
一番近くで手を止めてみていた料理人の一人に残りをお願いする。
なんせレンジュさんの持ってきたパンもジャガイモも大量だったのでたくさん作れますから。
「はい、味見しましょう」
初めて作った。
もともとは里芋で作る……コロッケ。
グラコロの話が話題ですが……。
コロッケって、何でも美味しいと思うのは私だけ?