儀式の終わり
「長く仙山にいた者は、地上の穢れた空気に馴染めなくて病を発しやすくなる」
へ?
「地上の穢れた空気?なんか、すごく失礼な言い方をしてるように聞こえます」
さすがにレンジュの言葉にカチンと来た。
「ああ、すまん。不浄というわけではないのだ。なんといえばいいのか。仙山は高さ故か、地上の病が上がってこない。風邪をひくものも居ない」
へ?
「仙人たちが風邪をひかないというのは、健康で丈夫だからじゃないの?本には仙人だからって書いてあったけれど……」
「いや。風邪を引き起こす穢れがないからだ。姫たちもここにいる間に風邪をひくことはない。だが、地上に戻れば穢れがある。もともと体の強いものであれば風邪で命を落とすことはないが、長く仙山にいて風邪すら引いたことのない者たちにとっては、風邪にすら打ち勝つことはむつかしい者もいる。まして、風疹などの病にかかってしまえば……」
ちょっと待って。
「もしかして……。いやなら黒の宮を辞めればって言った私の行為は……」
親切のつもりだったけど。
黒の宮を辞めなさいイコール、仙山を下りろ、イコール、死んでも知らないっていう意味?
うわあ。
「苗子、どうしよう……」
苗子の顔を見る。
「大丈夫です。結果として皆、残っていますし、姫様方の一方的な悪意により使用人が辞めさせられないように、指示の出し方のルールやほかにもいろいろと制度がありますから」
ほっと息を吐き出す。
「よかった。でも、彼女たちには悪いことをしちゃったわね。辞めてなんて心臓が止まる思いだったでしょうね」
「自業自得ですよ。黒の宮の悪口をあんなにはっきりと口にしていたのですから。正直、鈴華様が嫌ならやめればと言ったことで、他の者たちも胸がすっとしたと思いますよ。私を含め他の人は、この黒の宮が好きで希望を出して働いている者ばかりですから。
「そういってもらえると嬉しい。ありがとう。でも、事情を知らなかったとはいえ……悪いことをしたことは事実だわ……。できれば半年の間に彼女たちにも黒の宮を好きになってもらえるといいけれど……」
レンジュが笑い出した。
「はははっ、お人よしだな。まぁ嫌いじゃないけどなそういうのも。さ、じゃぁ、後宮のルールを説明する儀式も終わったし。改めて、何が食べたい?」
レンジュがパンとジャガイモをバスケットに戻し始めた。
なっ!何をするの!
私のジャガイモっ!
「待って!」
ジャガイモを持つ手を勢いよくがしっと両手でつかむ。
「ジャガイモ、食べます」
ギラギラの目つきでレンジュさんの手に握られたジャガイモを見る。
「いや、だから、これは儀式用で、ちゃんとした食事を持ってくるから」
何を言っているんだろう。意味が分からない。
ご覧いただきありがとうございます。
不浄とい単語で表してますが、ようは、ウイルスだとか病気の元が高い山に登ってこないので。
かわりに高山病とかなんかあるんじゃないの?と思いますが、そこはそこ。
不思議な力の働く仙山ですから。
そう、分かりますね?
「ファンタジーだもの」
ええ。何か「は?」と思うことがあれば
「ファンタジーだもの」
と、いいつつ、ジャガイモとか食べ物は日本と同じです。
なんでだよ!
「ご都合主義だよ!」
(´・ω・`)ちーん