儀式の意味
「何でもいいや。続けるぞ。怒った姫たちを前に、俺たちはこういうんだ『なんでもよいという指示に従ったまでです』と。『不満があるのでしたら、分かりやすい指示をするようにお願いいたします』って言うんだよ」
苗子が、レンジュさんの言葉を引き取って続きを説明する。
「過去に、頼んだことと違うということで処罰される使用人がいました。そのほとんどが、姫様方が心で思っていたものと、使用人がこれだろうと思ったこととの違いによるものでした。もっとはっきりとした指示があれば処罰されるようなこともなかったはずでした。そこで、後宮ではそのような行き違いがおきませんよう、指示する側も支指示を受ける側もあいまいな表現を避けることに決まりました。本当に何でも良いときは何でもよいと言っていただければ構いません」
なるほど。なるほど。
「わかったわ。肉が食べたければ肉料理が食べたいと言えばいいのね。もっと具体的に肉料理の希望……煮込んだ甘めの肉料理が食べたいと言うっていうことね。料理名が指定できるのが一番いいわけね。ああ、でももしかして、おかゆはおかゆでも、茶碗に8分目、柔らかさは形がかろうじて残る程度で、水分は多めと……料理名だけでなくもっと細かく指示しなければならないのかしら?だとするとちょっと大変ね……」
とぶつぶつと言い始めた私に、レンジュが笑った。
「ははっ、いや、まぁそうだな。細かいと言ってもレベルがあるよな。まぁなんだ。こだわりのポイントがあれば細かく指示することだ。指示されなかった部分が違ったからって文句は言うなよっていう、使用人からの保険くらいに思えばいい。塩が足りないと思えば、次からはもう少し塩をきかせてくれといえば済む。塩が足りない、料理人を交代させなさいと言わなきゃそれでいい」
「え?塩味が足りないくらいで料理人を交代させるの?」
信じられない。
「まぁ、実際そういうレベルで辞めさせたこともあるから生まれた儀式だ」
ん?あれ?
「でも、逆手にとれば、黒の宮で働きたくないなら、塩をたくさん入れればよかったんじゃない?」
あーっと、苗子さんが額を抑えた。
「使用人は、使える姫にお暇を出されると、仙山には二度と上がれなくなります」
へ?
お暇って、休暇のことじゃなくて、クビってことだよね?
「別の宮に移動するわけじゃないの?」
黒の宮が嫌ならやめれば、赤の宮とか青の宮とか別の宮で働けるわけじゃなかったんだ。
仙山を下りることになるのか……。
「でも、黒の宮で半年も我慢していやいや働くよりは、仙山を下りて別の仕事をした方がいいってことはないの?」
そういえば、将来仙皇帝宮で働ける可能性が、黒の宮だとゼロだからいやだって話をしてたっけ。仙山を下りたら可能性がゼロどころかマイナスになっちゃうからそれは嫌だったのかな。
苗子が首を横に振った。
ご覧いただきありがとうございます。
はー。と、ため息をつく。
ふぅーと、ため息をつく。
あ、きがつけば、12月もすでに21日ですね。
もうすぐクリスマスか。
さて、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
パンも美味しいパンって、それだけでご馳走ですよね。本日いただきものの
京都の「祇をんデニッシュ」を食べました。
ご、ち、そ、う。