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 もう、これ以上、何を調べればいいのかわからない……。こんなに本があるのに、何の本を読んでいいのかわからないなんて……。マオを……助けられないの?

「怖いですねぇ。食べ物って……美味しいからって食べすぎちゃだめだと言うことがよくわかりました。お菓子を食べすぎるとだめっていうのは愛のある言葉だったんですねぇ。今度からはちゃんと守ろうと思います」

 楓の言葉に返事を返せないでいると、楓は続けた。もしかしたら私が気落ちしているのを励まそうとして話をしてくれているのかもしれない。

「そういえばお酒のおつまみの味をだんだん薄くするって、味が分からなくなるなら逆にわかるように濃くすればいいんじゃないと思って聞いてましたけど、あれも塩分を取りすぎないようにって犀衣様の身を案じてのことだったんですねぇ」

 楓の言葉に、新しい事実に気が付く。犀衣様は、紫の宮の使用人に大事にされていたんだと。

 お酒ばかり飲んでだらしのないと思われそうな姫だったけれど。陽気に私を手招きして笑顔で迎えてくれた。

 使用人を困らせるようなこともなく、笑顔を向けていたのだろう。

 侍女もひどい顔をしていた。泣いたのだろう、たくさん。他の使用人の顔は……遠くてよく見えなかったけれど。きっと同じように悲しみに暮れる顔をしていたに違いない。

 だとすれば、紫の宮の使用人が毒を混入させるなんてことは考えにくい。使用人に聞き取り調査をすれば、犀衣様が慕われ恨まれるようなことがなかったことはすぐに分かるだろう。

 ならば、本当に、一体誰が、なぜ犀衣様を手にかけたの? 

 犀衣様への恨みでなければ、本当に仙皇帝を……マオを仙牢へ入れるため? 

 ふと、黒髪が不吉だと言われていることが頭によぎる。……そんなことで? 

 ぶるぶると頭を横に振った。

 マオが……仙皇帝が黒髪だということは後宮の使用人は知らないはず。

 落ち着いて初めから考え直してみよう。

 犀衣様は、いつものように朝食を食べ、いつものように酒を飲み、いつもの……。

 いつもと違ったのは、私? 

 何か思い出しそうで……あの時のことを……。

「そうだ!」

 ジュジュさんの元へと走り寄る。

「ジュジュさん、ワインのことを教えてください!」

「あいにくとお酒には興味がなくて読んだことはないのぉ。ワインに関する本じゃったら、藤国の百五十年ほど前が一番たくさんあるぞ、このあたりじゃ」

 ジュジュさんが、図書館の地図……本の配置図を指でトントンとたたきながら教えてくれた。

「楓、行こう!」

 言われた場所に確かにワインに関する本がずらりと並んでいた。

 楓が本の背表紙を見て、泣きそうな顔をする。

「鈴華様、私には藤国の文字が読めません……お役に立つことができそうに……」

 ああ、そうか。

 メモ用紙に「毒、死、病」という言葉を藤国の文字で書く。

「この三つが出ていれば教えて。内容を読む必要はないから」

 ワインに関する本を手にまずは目次。そして関係がありそうなものと、全く関係がなさそうなもの、どちらか判断つきかねるものに簡単に分けて、関係がありそうなものを楓の手に渡す。

 楓は指で文字をなぞりながら「毒、死、病」の文字を探し始めた。

 私も同じように、本の内容を読まずに、必要な単語を探すために流し読みを始める。

 どれくらい時間が経ったのだろう。ジュジュさんが来てポンを私の肩を叩いた。

「熱心じゃのぅ。じゃがもう日が暮れる時間じゃぞ。ここにいると窓もなく時間の感覚がなくなるからのぉ。じゃからこそ、時間を気にして生活をせにゃならん」

 窓がない場所……マオもそんなところに……。明かりもない場所。時間を教えてくれる人はいるのだろうか? 誰からも話しかけられることなくずっと一人なのだろうか……。

「もう少し……」

 せめて借りる本を選んでここを出たいと、ぎゅっとこぶしを握る。

「鈴華様、ありました!」


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