変わり者の烙印
「宦官って言いました?宦官って、あれですよね、私、初めて見ました。本では読んだことがあるんです。元は男だけれど、今は男ではないんですよね?女性であり男性であり……とても神秘的な存在」
本を読んでいたときから気になっていたんです。
男性のシンボルを切り落とすとありますが、そうなると、いったいどうなるのか。女性とも違うんでしょうし、どうなっているんでしょう。
「あの、その、ちょっとだけ、その、男性じゃないわけですし、女性ともいえるわけですよね?ちょっとだけ、どうなっているのか、本にはその、細かく書いてありませんでしたので、ほんの一瞬でいいので……見せていただくことは……」
にじりにじりと、忍者さんに近づく。
「ちょ、苗子、なんだ、こいつ、本当に一国の姫か?適当に顔のいい庶民を養女にして送り込んだんじゃないのか?」
さーっと青ざめた忍者が、苗子の後ろに身を隠した。
顔のいい庶民を選んだなら私みたいな年増の醜女を選ぶわけないじゃない?適当にもほどがある。あ、そういえば……他の国の人は、呂国の人間はみな同じに見えるとか、年齢不詳で若く見えるとか本に書いてあった気がします。
まさか、美醜の判断すらつかないくらい見分けがつかない?年齢もそんなに分からない?
レンジュは苗子の後ろで、身を縮めている。いや、全然大きな体は隠れてないですねど。
それにしても、忍者って、女性の背に隠れるような弱い存在じゃなかったですよね?
「いいえ、鈴華様は、呂国の第一王女でございます。正真正銘のまごうことなく姫でございます」
「ちょっと変わり者すぎやしないか?初日で使用人辞めさせた時には度肝を抜かれたが……不穏分子は早々に排除しようとしたのかと思えば、実は辞めさせるという脅しをかけるということで逆らえなくするという知恵の回る人物なのかと思ったら……ただの変わり者か?」
ちょっと待ってください。
何か聞き捨てならないことをレンジュが口にしました。
「脅しをかけて逆らえなくするってどういうことですか?」
私の言葉に、苗子がうろたえた。
「もしかして、ご存知ありませんか?」
え?ご存知って何だろうか。まぁ確かに、調理係には、わざとまずいもの作られても困るので多少脅しはかけましたが。他の人に関しては、脅したつもりなんてない。寧ろ、半年我慢しなくてもいいように、別のところで働けるように辞めさせてあげたんだから、親切にしてるよね?
あ!
もしかして、すんごく悪い目つきになってた?
なるべく目を細めないように気を付けていたんだけど……。無意識に、睨んでるみたいになってた?
ち、違う、違うんだよ。視力が悪いからで……!
「鈴華様、侍女たちがs――」
苗子が説明しようと口を開けかけたのを、レンジュが静止する。
「まー、おいおい説明してやればいいだろ。それより、初日は、調理場の準備も整ってないからな、夕飯は出るだろうが、昼飯はない。何が食べたい?俺が王宮から運んでくる」
昼ごはん?
そういえば、そろそろそんな時間ですか。
あちゃ。
鈴華、暴走。
いや、どうなってるか気になるって……おい!
いろいろ事情が……察