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「このようなことで仙皇帝妃になって、本当に良かったのですか?」

 苗子の質問に、用意された柚子茶を一口飲んでから答える。

「仙皇帝妃じゃないわ。仙皇帝の婚約者よ。後悔があるなら婚約を解消すればすむでしょ? レンジュだってそれがわかってるから、私のわがままを受け入れてくれたんだと思うわ」

 苗子が微妙な顔つきをする。

 それからすぐに黒の宮の使用人を集めて、仙皇帝宮に一緒に行ってくれる人を募った。準備もあるだろうから急ぐに越したことはない。

 黒の宮で働いている者たちだけでは足りないということで、苗子は他の宮で働いている者たちの採用に関して動いたりと動き回っている。私の荷造りは、楓が手伝ってくれることになった。

「私が仙皇帝宮で働けるなんて、夢見たいです! 本当に私なんかがいいのですか?」

 楓の言葉にびっくりして息をのむ。

「私なんかって言った? 楓はすごいよ?専属司書としてついてきてくれるのに感謝してもしきれないよ!」

 楓が首を横に振った。

「私はまだまだです。記憶できても文字が読めないことも多くて役に立てないし……でも、頑張り……鈴華様? どうかしたんですか?」

 楓の言葉に、頭を強く打たれた。

 千年後に、おかえりを言うために仙皇帝宮に行く? そんなの、何も解決してないじゃない。

 千年もマオが苦しむことに何も変わりはないじゃないっ。

 立ち上がって楓の手をつかむ。

「行きましょう! こんなことしてられない。殺人事件じゃない、あれは悲しい偶然が引き起こした事故だと……そう証明できればマオを助けることができる!」

「え? 鈴華様?」

 そのまま紫の宮へと足を進める。

 建物の中に勝手に入ってはだめだとは思うけれど、今の私の立場は仙皇帝の婚約者だし、マオを救うためだし後でレンジュに何とかしてもらおう。

「鈴華様っ! あの、おめでとうございます」

 建物の中に入ると、驚きながらも紫の宮の使用人が口を開いた。

 グイっと、その使用人の肩をつかむ。

「何がめでたいの? 藤国の姫が亡くなったというのにっ!」

 それをめでたいと言うなど……と強い口調で問えば、こちらを見た使用人の顔はひどいものだった。

 泣いたんだろう。目は真っ赤だし、涙の後が赤くはれてるし、髪も乱れている。

「あ、いえ、その仙皇帝とのご婚約の……」

 そっちか! もう話が回っているのか。

「ありがとう、ごめんね、辛いときに。悲しいよね。……でも、話を聞かせてほしいの。犀衣様が亡くなった原因をはっきりさせたいから。話を聞かせてくれない?」

 使用人がうなづいて人を集めてくれた。

「あの日、何を口にしたのか教えてくれる?」

「いつも通り、朝は味噌のスープと魚とごはんです」

 料理人がエプロンのポケットからメモ帳を取り出し読み上げた。

「味噌は豆味噌。具はワカメとネギ。出しには鰹節をつかったいつもと同じものです。魚はマグロのトロをあぶった物。日替わりですが、大きな魚ですから同じ魚を使用人も皆口にしております。それからごはんも一度に炊いて同じものを皆が食べました」

 その後を侍女が続ける。

「昼食は食べずに、お昼近くからお酒をお召し上がりになっておりました。いつもと同じようにワインを。お酒の専門家が休みでしたので、私が蔵から出しました。全部で十三本です」

 お酒の専門家? 


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