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てれる

「まぁいいわ。とにかく、次、行くわよ!」

 スカーレット様が踵を返して金の宮の控えの間を出て行く。

「つ、次って、どこへ行くんですか!」

 慌てて後を追う。

「どこって、あと一つ、犯人の候補がいるところよ」

 スカーレット様が金の宮の廊下を黒の宮のあるのとは逆の方向へと進んでいく。

 そして、あっという間に藤国の姫がいる、紫の宮の控えの間に到着した。

「わ、わ、わ、ここが紫の宮!」

 控えの間の壁は白。藤の花が壁一面……いや、壁という壁、天井にも描かれている。

 満開の、藤の花!窓には薄手の白い布が垂らされていて、その布にも藤の花が描かれている。柔らかな風にふわりと揺れる布がまるで本当に藤の花が風に揺れているようにも見え、藤の花の香りすら感じられる……ような……って、あれ?

 呂国にも藤棚はあって、花を楽しむことがあったけれど、藤の香りってこんなんだったかな?

 鼻をひくひくとさせる。

 藤の種類によって香りは変わると言えど、香ってくるのはまるでフルーツのような……。甘い中にも少し酸味のあるような美味しそうな匂い……。

「あら珍しい、お客様だなんて、お通しして」

 侍女同士のやり取りを待つ前に、陽気な声が聞こえてきた。

 声は明るいし、すぐに会ってくれるってことは、歓迎されてる?

 友達になれる予感がひしひしと!ふ、ふふふ。これで、藤国の姫が仙皇帝妃になったときに友達になって連れて行ってもらう計画の第一歩は歩めそう。

 って、だめだめ。

 スカーレット様のときに反省したばかりじゃないの。下心ありで、自分の利益のために友達になろうなんて、そんなの本当の友達じゃないし、そもそも……失礼だよね。相手に。

 よし。純粋に、後宮での生活を楽しむためには仲がいい人がいたほうがよいって方向で。

 もちろん、本があれば後宮生活はエンジョイできるんですけど。でも……。

 スカーレット様を見る。

 私の知らないこと……本には書いてないことを教えてくれる。

「なんですの?顔がにやけていますわよ?」

 うふふ。

「楽しいですね」

「はぁ?犯人探しが楽しい?」

 違う、私は一言も犯人探しが楽しいなんて言ってないよ、誤解だよ、スカーレット様ぁっ。

「……っていうことではないでしょうね。鈴華様は、何かにつけて予想もできないことを考えているんですもの」

「よ、予想もできないようなことばかりじゃないですよ。今は、普通のことしか考えてないです」

 スカーレット様の眉が寄る。疑わしいって顔をされた。

「ほ、本当ですよ。スカーレット様と仲良くできてうれしいなぁ、一緒に何かできて楽しいなぁって、思っただけですからっ」

 と、主張する。普通だよね。普通の思考だよね?

 スカーレット様がふいっと顔をそらした。

「ほら、予想もできないようなことを……」

 と、ぼそりとつぶやいている。

 え?

 苗子、別に予想できるよね?予想できるよね?

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