見分け
「それは、本当にあなたへの嫌がらせだったのかしら……?本当は私への……何かの手違いでそちらへ渡ってしまっただけで、本当は私への……」
「ああっ、エカテリーナ様っ!」
真っ青な顔をしてガタガタ震えだしたかと思うと、金国の姫……エカテリーナ様はふっと意識を失い崩れ落ちた。
そばについていた金国の侍女たちがとっさにエカテリーナ様を支える。
「申し訳ございませんが……」
侍女頭と思われる女性が、苗子に頭を下げ、侍女たちに指示を出した。
「お医者様を、エカテリーナ様は寝室に運んで、冷たい水とタオルを」
苗子が私の顔を見る。
「大丈夫かしら……」
スカーレット様が首を傾げた。
「あの様子だと、嫌がらせをしたのではなくて、嫌がらせされることにおびえているように見えるわね……」
スカーレット様の言葉に頷く。
「私にもそう見えました。キビタキ……あの愛らしく見える小鳥があのように人を恐怖に陥れるなんて、思ってもみなくて……いいえ、あんなに愛らしい鳥を嫌がらせの手段として殺すなんて……一体誰が……」
スカーレット様が難しい顔をしている。いや、私も同じように難しい顔をしているのだろう。
「問題が増えましたわね……。キビタキ……と言いましたか、あの小鳥の死体は、嫌がらせだったのか、単にあの場所で命を落としただけなのか。嫌がらせだったとしたら、私を狙ったものなのか、エカテリーナ様を狙ったはずが何かの手違いであの場所に来てしまっただけなのか……。そして、嫌がらせだとしたら、犯人は誰なのか」
スカーレット様の言葉に小さく頷く。
謎だらけだ。というか、そもそも嫌がらせなのか嫌がらせではないのかをはっきりさせるにはどうすればいいのか。犯人が見つかれば嫌がらせだと分かる。けれど、犯人が見つからないからといって嫌がらせではなかったという証明にはならない。
「鳥が死んだ理由……が分かれば何かヒントが見つかるかもしれない……」
強い力が加えられたのだとしたら骨が折れているかもしれない。どこかに刺し傷でもあれば分かりやすいんだけれど……。
前に小鳥の飼育という本を読んだときには、小鳥は歳をとると飛べなくなったり、止まり木に上手く泊まれなくなる、目が見えにくくなるのが理由だろうと言うようなことが書いてあったけれど……。すでに死んでいるから死ぬ前の様子から老化していたのかどうかは分からない。いや、もう少し本を探して読めば、羽の色や艶かなにか、何か見分けるヒントがあるかもしれない……。人だって年を取れば肌の様子も髪の様子も変わるのだから。
本……じゃなくて、もしかすると……食事に出される鳥と同じように見分けられるかもしれない。若鳥と年を取った鳥じゃ肉質が違うんだよね。どう見分けているんだろう。買う時に鳥を見て判断してるんだよね?……あとで料理人に尋ねてみよう。
もしくは美味しい鳥の見分け方みたいな本があれば書いてあるのかな?