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アリサ

作者: ameri

 ある日のことだった。オレは突然思い出した。何をって前世の記憶を。電波かって?電波じゃない、いたって正気だ。そもそも魔法が当たり前のファンタジーなこの世界には電波なんかないし。


 オレは今、宿屋の子供で年は10歳だ。いつものように宿の掃除に精を出してたんだけど、小さなオレは高い所に手が届かず、椅子の上に乗って掃除してたんだけど、足を滑らし落ちて頭を打ってしまったんだ。その時の頭の打ちどころが悪かったのか良かったのか、こうして思い出してしまったってわけさ。


 思い出したという表現はよくないかもしれない。まるで昨日の出来事のように前世の事がわかるからだ。オレは前世では、日本の男子高校生で17歳だった。それがなぜか今は、モンスターがうろつき、魔法が当たり前のファンタジーな世界の10歳の子供さ。

前世のオレも現世のオレもオレはオレだ。生まれ変わりというより17歳のオレが記憶を無くしてこっちの世界に転生?そして、10年間育った?わからない。オレは前世では17歳の高校生の時の記憶までしかないから、そん時に死ぬか何かでこっちの世界に来たかなって思うんだけど。ファンタジー小説とかよく読んでたから、そういうこともあるのかなと、なんとか受け入れた。だけど、一番の衝撃の事実は、そっちじゃなかったんだ。座り込んで呆けていると


「アリサ。大丈夫?どこも痛くない?」


 オレが落ちた音を聞いた、宿の女将でもあるアメリ母さんが心配してやって来て、やさしく声をかけてくれた。


「はーい。何とか大丈夫。」


「気を付けてよ。女の子なんだから、体に傷付けちゃだめよ。」


 そう。オレはよりによって女の子に転生してしまっていたんだ。彼女いない歴=年齢のキモオタブサイクのオレがだよ。


「ブツブツ言ってたけど、本当に大丈夫なの、大事をとって、今日はもうお部屋で休んでなさい。」


「え?でも・・・・・・・・・・・・。」


「いいから。いいから。あとは私がやっとくから。気にしないで。」


「やった。ありがとう。お母さん。」


 お母さんに礼を言って部屋に戻ったけど、休むどころじゃなかった。今まで女の子だと思っていた自分が男?道理で男の子に興味が湧かなかったわけだ。体は女、心は男?性同一性障害?異世界転移者?


 動転した心のまま母さんの鏡台の前に座ってみた。


 そこには、彫の深い黒髪の美少女がいた。


 オレ、めちゃめちゃ美少女じゃんか。日本人の記憶が戻る今の今まで自分では気づかんかった。この顔なら男に不自由しないだろうな。男には一ミリも興味がないんだけど。大きなたんこぶがおでこにできてたけど大丈夫そうだ。きれいな顔に傷つかんかってマジ良かった。こんな美少女なら女でもいいかもしれないとも思う。なんせ、前世は自分で言うのもなんだけどブ男だったからな。自分に自分で惚れてしまうよ。性同一性障害者で自己性愛者か。マジ終わってるなオレ。軽くへこんでしまった。


 そうだ。転生者と言えば、チート能力だ。ギフトだよ。魔法とか異能力とかの。自分の顔を改めてよく見ると頭の上に何か文字が浮かんできた。


 アリサ レベル1

 年齢 10

 職業 町娘

 ギフト <鑑定> <異次元収納> <波動砲> 


 うわっ。ビックリした。これが異能力か?


 ギフトに鑑定てあるけど、文字が見えるのがこれが鑑定か?自分の事だけ鑑定できるのか?他の人も見てみるか、後で。


 それよりも異次元収納って何?ファンタジー小説なら、何でも詰め込めて持ち運べてっていう四次元ポケッ〇みたいな勇者様限定のチートだよな。


 早速実験だ。異次元収納と心の中で念じると、目の前に大きな空間が現れた。空間は何も見えなかったが感じることはできた。入れようと思った物が思っただけでそこに消えていった。出すときは思っただけで、何もない空間から現れた。


 すげー。いくら魔法が当たり前の現世でもこれは聞いたことがない。チートだ。これで商人になればジャンジャン荷物を運んで稼げるじゃん。


 鑑定も試してみた。鑑定と念じなくても対象物を凝視するでけでいいようだ。早速、椅子を鑑定(凝視)してみる。


 椅子

 人が腰かける物。


 名前と簡単な説明がでるようだ。


 それよりもやっぱり、人間だ。宿のカウンターにいる母さんとお客さんをこっそり鑑定してみた。


 アメリ レベル3


 トニービン レベル10


 どうやら、名前とレベルしかわからないみたいだ。レベルは戦闘レベルか?ならばと、食堂で食事中の冒険者らしき男を鑑定してみた。


 ロンセル レベル20


 冒険者風の男が20で、商人風の男が10で、母さんが3、オレが1か、戦闘レベルで間違いなさそうだな。戦闘レベルがわかるってことは戦闘で有利なチートスキル?町の外にはモンスターがうろつくこの世界では、役立ちそうなスキルだけど、家事手伝いの小娘には要らないか。いや、家事手伝いで終わってはいけない。せっかくの転生、チートスキルだ、生かさなければ男が廃る。いや、女の子だけど。ややこしい。


 ついでに厨房にいるロン父さんも鑑定してみた。


 ロン レベル30


 な、レベル30?何かの間違いか?ゴリラみたいな大男が20しかないのに。いや、30という数字に間違いない。なぜ?父さんは何者?これは本人に確かめるしかない。


「ねぇ。お父さん。お父さんは昔、冒険者か何かだったの?」


「誰に聞いたんだい?アリサ。そうだよ。」


「ええ、ちょっと。」


「別に隠しているわけじゃないから、まぁ、いいか。父さんは冒険者だったときに母さんと知り合って、冒険者時代に稼いだお金でこの宿を始めたんだよ。」


「やっぱり、そうなんだ。すごいな。魔法とか使えるの?」


「ああ。ちょっとな。」


「すごい。すごい。今度、わたしに教えて。」


「ああ。いいぞ。明日にでもな。」


「約束ね。」


 ビンゴ。思わぬ身近に。先生がいた。というのは、今までまったく使えないから、魔法の先生を探したかったから。でも、いわれんでも教えておけよ。ロンさんよ。魔法って絶対に将来に役立つだろ。町娘には魔法なんかいらんと思ってたんかよ。まあ、いいや。今から覚えれば。

 それから、今、決めたけど、オレは冒険者になる。町娘の将来なんて母さんみたいにどっかの店の女将さんになるのがせいぜいだから、せっかくのチートを生かせる職業につかんともったいないからね。冒険者になってたくさん金を稼いで、その金で遊んで暮らすんだ。あと、その金で美少女をはべらかして、ぐふふふふふふ。オレが将来の夢(妄想)について考えてると、


「アリサ。どうした?なんかよからぬ事でも考えてた?顔がちょっといやらしいぞ。」


「え?何にも。」


 以外に鋭いな父さんは。





 **********************




 翌朝、お客さんが出払い、家族で遅い朝食をとったあと、オレと父さんは庭にいた。魔法を習うためである。昨日いろいろと試してみたけれど、いくら転生者のオレでも魔法は簡単には発動できなかった。


「魔法は、おおまかに分けて、火、水、風、土、後は特別なところでや光や闇がある。そして、呪文を唱えて、発動させる。

 実際にやってみせるぞ。

 火の精霊よ。丸く集いて敵を打て。ファイアーボール。」


 小さな火の玉が父さんの手のひらから出て前にある岩にぶつかった。まるで、か〇はめ波?


「今のは初級の火魔法でファイアーボールだ。紙に呪文を書いといてやったから、呪文を唱えてやってみろ。」


 紙を見ながら呪文を唱えた。ついでにあのポーズもした。


「火の精霊よ。丸く集いて敵を打て。ファイアーボール。」


 気合とともに、手のひらからは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何も出なかった。


「あれ、出ないよ。父さん。もう一回やらして。

 火の精霊よ。丸く集いて敵を打て。ファイアーボール。」


 やはり、何も出なかった。


「はっはっはっはっは。そんな簡単にできるもんじゃないぞ。

 お父さんでさえ、毎日朝から晩まで唱えて、何か月もかかったんだからな。

 呪文を唱えながら、心の中で火の精霊さんにお願いして炎を作ってもらうんだ。

 もう一回やってみろ。」


 なるほど、炎をイメージすることが大事なのね。オレはこんどは燃え盛る炎をイメージして呪文を唱えてみた。


「火の精霊よ。丸く集いて敵を打て。ファイアーボール。」


 手のひらからは今度は火の玉?が出た。それも特大の火の玉?がだ。火の玉?が当たった岩は轟音とともに砕けた。


「なっ!なんだとー!」


 父さんの驚きの声と同時に、オレの頭の中に謎の声が響き渡る。


『最後のギフトが発動しました。ギフトは鑑定、異次元収納、波動砲の三つです。魔法の使えないあなたには三つのギフトが与えられてます。三つのギフトで異世界でサバイバルしてください。』


 なんだ、今の声は?神の声?そういえば、波動砲もギフトのひとつだったよな。で、今のが波動砲か?あと、魔法が使えないと言ってたけど、鑑定、異次元収納、波動砲は魔法じゃないんだ。いわゆる異能力というやつか?魔法の世界で魔法が使えんて、けっこうやばいじゃん。まあ、難しい事は置いといて、とりあえず、もう一発撃っとくか。オレが調子に乗ってもう一発撃とうと身構えると、


「待て、待て。こんなところではだめだ。だめだ。何が吹っ飛ぶかわからん。

 それよりも、今のはなんだ?

 S級魔法並みの破壊力のファイアーボールなんてありえん。絶対にありえんぞ。」


「うーん。名付けて波動砲ってやつかな?」


「波動砲?ファイアーボールの凄いやつか?」


「ちょっと。違うみたい。魔法でなくてエネルギーの塊をぶっつけてるみたい。」


「エネルギーってなんだ?」


「あっ。そうか。わからないか。んー。気かな?体の中の活力かな?」


「よくわからんけど、すっごい魔法だな。波動砲ってやつは。」


「魔法じゃないけど。まあ、いいか。」


 そうこうしてると、オレの波動砲にビックリして、アメリ母さんとナイル姉さんが慌てて宿から飛び出てきた。


「なに、なに?何の音?雷でも落ちたの?」


「ビックリしたー。」


 幸いにも、お客さんが出払ってたので、二人以外は驚くことがなく、大騒ぎにはならなかった。


「二人とも落ち着け。アリサが魔法で岩を砕いたんだよ。」


「「魔法?」」


「ああ。波動砲って言うすんごい魔法さ。」


「「アリサ。本当なの?」」


「うん。できちゃったみたい。」


「アリサ。凄ーい。」


「アリサ。おめでとう。偉いわね。」


「さすが、オレの娘だ。」


「私達にも見せてよ。アリサ。」


「うん。でも。」


 困って、父さんのほうをみると、


「ここでは、無理だ。大惨事になる。町がぶっ飛ぶぞ。

 そうだ。今、宿にお客さんもいないし、町の外でアリサの魔法のお披露目会を開こうぜ。

 母さん。弁当と酒の用意だ。」


「あなたは飲みたいだけでしょ。でも。アリサの魔法記念日でめでたいから、いいわ。

 天気もいいし、外でごはん食べながら、見せてもらおうかしら。

 ごちそうを作るから、ナイル手伝って。」


「「やったー。」」




 ********************************************************************************




 オレたちは町の外の野原にいた。オレと父さんが向かい合い、そばに母さんと姉さんが座って見学していた。


「アリサ。早速だけど、撃ってみろ。ここなら何の遠慮もいらんぞ。

 あの岩めがけて撃ってみろ。」


「わかった。お父さん。

 あ、ファイアーボールの呪文を忘れちゃった。

 えーい。ファイアーボールじゃなかった、波動砲。」


 轟音とともにオレの前方10メートルぐらいにあった大岩の上半分が消し飛んだ。


「「ぎゃー!」」


 驚き悲鳴をあげる母さんと姉さん。


 父さんは二回目なので、さすがに悲鳴はあげなかったが、


「無詠唱だとー?どこまで凄いんじゃ。」


 別の所に驚いていた。


「他の魔法もやって見せろ。

 父さんが見本を見せるから。」


「うーん。ほかのこと?魔法はたぶんできないと思うよ。」


「なんで、そんなことがわかる?

 今からやるのが、火の初級魔法のファイアーだ。

 火の精霊よ。集いて燃やし尽くせ。ファイアー。」


 父さんの目の前に炎があがる。


「うわ。すごーい。やってみる。

 火の精霊よ。集いて燃やし尽くせ。ファイアー。」


 案の定何も起きなかった。


「あんな凄い魔法の波動砲ができるのに、こんな簡単な魔法ができないのか?

 お前はどうなってるんだ?」


 だから魔法じゃないんだけど、もう、めんどくさいから魔法でもいいか。


「火の精霊よ。集いて燃やし尽くせ。ファイアー。ファイアー。ファイアー。

 やっぱり、他の魔法はできないみたい。」


「まあ。波動砲があるからいいか。」


 ちょっとだけ、父さんのテンションが下がった。


「わたし、冒険者になりたい。父さんみたいなかっこいい冒険者に。」


 オレが昨日から考えていた考えを言ったら、再び父さんのテンションが上がる。


「そうか。冒険者は命がけの大変な仕事だけど、アリサなら大丈夫だろう。

 あと、お客さんから聞いたけど、冒険者アカデミーって学校があるらしいぞ。

 そこを出たらCランク冒険者になれるらしい。

 明日、冒険者ギルドに行って冒険者登録とアカデミーの申し込みをしよう。」


「ちょっと。お父さん。何を勝手に決めてるの?

 お父さんみたいに大けがしたり、死んだりしたら、どうするの?取り返しがつかないじゃない。」


 娘の安全を考えて反対するお母さん。


「お母さん。わたし、頑張るから。冒険者にならして。」


「わたしからも頼むわ。宿を継ぐのはわたしなんだし、アリサだけでも好きな事をやらしてあげて。

 それにアリサは一回言い出したら聞かない子じゃない。」


 ナイル姉さんが援護してくれた。


「うーん。わたしは反対だけど。みんなが賛成ならしかたないか。

 でも、いい。アリサ。絶対に死んだらだめよ。危ない時は何があっても逃げるのよ。」


「わかった。お母さん。命大事にするよ。」



 オレの冒険者宣言が家族に受け入られ、この後みんなでオレの冒険者としての門出を祝って乾杯をした。













































































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