キーの失敗作たる所以②
文量をいまからこのくらいにしようと思います!まだまだ増やそうと思っていますが少ないと思った方、申し訳ありませんm(__)m
俺の心が急速に冷えていく。
視界がクリアになっていき、相対する2人の些細な部分から全体像まで取りうる限りの情報を抜き出していく。
身長が高いほうを仮にAとしようか。
Aは髪の色は暗め茶色で短髪のがっしりとした体型で、身長が180行くか行かないかの高さだ。
身長に見合って手足がその分長いからリーチも割かし長いほうだろう。
また、装備品は刃渡り約30cmの剣を腰に帯びているようだ。
他方の相手をBとする。
Bは緑色の髪の毛が混じった黒髪で髪の毛はAより少し長めだが肩には当たらない程度。
Aと比べてかなり小さく、身体の肉つきはAには劣るが、身のこなしはAよりはありそうだ。多分俊敏さを売りにしているのだろう。
だが、俺は魔法『身体強化』を自身にかけているからとるに足らない。
また、Bの腰には二刀の小剣を帯びている。
他には、二人のズボンのポケットが膨らんでいるくらいか。
Bの方はなにやら尖っているものが入っているようだ。
以上の情報から先に撃破すべきなのはBの方で確定だな。
Bを先に撃破してAを尋問にかけるのがノルマだな。
俺がどういう戦い方をしようかと瞬時に判断し、行動を起こそうとしたところ、Aがからだを屈めて、俺に目線をあわせてきた。
「敵はこいつら二人だけか。なら余裕だな」
Aは後ろのキーを横目に見ながら笑った。
俺は目を細めてAを睨んだ。
「こんな|姿≪なり≫でも国の部隊なもんでね。ちょっと舐めてんじゃねえの?」
「まあやってみたらわかるさ。取りあえず俺とお前との一騎打ちで行こうぜ。ゲーム見たいでおもしれえだろ?」
「俺は遊びで戦いたくないんだがな…」
俺は間抜けにも相手の挑発に乗り、Aを先に撃破することにシフト。
…少し間をおいて、俺は剣を中段に構えて相手に|突進≪チャージ≫を仕掛けた。
俺は瞬きの間に相手との距離を詰め、相手の腹目掛けて横薙ぎに斬り放った。
相手は余裕の顔を崩すこともなく、ポケットから魔石を取り出し、『身体強化』と『武器強化』の魔法を使用し、俺の放った斬撃を叩き落し、俺にカウンターに回し蹴りを繰り出した。
「クッッッ!!!」
「ほらほらどうした〜?防戦一方じゃねえか!」
Aの立て続けに繰り出される斬撃を叩き落としては弾き、振り上げ、相手の隙をついて懐に入るが、Aは突進を仕掛けた俺の動きを見切り、両肩に足を引っ掛け、思いっ切り蹴飛ばした反作用で距離をとる。
蹴られた衝撃を勢いに任せ、バク転をして着地、俺は相手を睨みつける。
「まだまだ終わらないぜ?さあ続きやろうや」
Aは余裕な表情を隠すことも無く、魔力をAの周りに充満させた。
「おい…お前、その魔石、どこで手に入れた…」
Aはニヤニヤした表情を隠すことなく魔力を前方に収斂させる。
一種の槍のごとく鋭さを増して。
「答える馬鹿がいるか?俺に勝てたら、わかることだろうよ」
「じゃあ魔法を使わせてもらうか。
『炎熱飛槍』!」
魔法の行使もできるのかよ!
俺はAの魔力の動きを察知して『身体強化』の魔力鎧を前方に収斂、そしてポケットから冷媒を取り出してそこに付与。
ピシィィィ!!
俺の前方に集約的だが凍獄が完成する。
俺はそれだけに留まらず、『遠距離射撃』を炎槍の射線の周辺に射撃、時間差で闇媒を付与し、小さい重力場を作り、炎槍の威力を削ぐ。
「これだけじゃないぜ!『風刃鎌斬!」
Aが魔法を行使し、Aから線状に鋭くした風が炎槍を超える速度で飛来する。
炎槍に後ろから貫き、炎槍は威力を増大させ、かつ速度を爆発的に速める。
(やばい!これは防ぎきれないっ!!)
俺は咄嗟に風媒を『武器強化』に付与し、すぐに剣を上段に構え、前方に向けて思いっ切り振り抜いた。
重力場でも勢いを殺しきれない炎槍が凍獄を瞬時に溶かし、俺の方に迫ってきたが、俺が発生させた爆風に少し勢いを緩めた。
その隙に俺は爆風の反作用を利用して着弾地点から離脱、窮地を脱する。
と思ったが、俺を狙う殺意を捉え、瞬時に足に『身体強化』の魔力を凝縮して俺の着地点を無理矢理変更し、殺意を放つ方向から距離をとる。
やはり、殺意の方向からはAが『身体強化』で強化した脚力で急速に接近しているのが見えた。
Aが上段に剣を構えてるのを即座に見切り、俺はすぐに中段に剣を構え、迎え撃つ。
剣と剣がぶつかり合い、甲高い音が辺りに響き渡る。
俺の繰り出した斬撃は全て回避し、叩き落とし、致命傷を与えられない。
こちらも相手の斬撃を全て撃ち落とし、拮抗状態が続く。
俺は隙を見て少し後退し、足に力を溜め、Aに向けて突貫を敢行。
突貫の威力をそのまま上段に構えられた剣に伝え、思いっ切り振り抜く。
Aもその斬撃を少し溜めて上段で迎え撃つ。
鍔迫り合いの状態が続く。
俺の方が突貫の威力の分優勢だが、決定力に欠ける。
多分相手の方が魔石適性が高い分効率良く魔力を純粋な力に還元できているようだ。
クソッ!侮った!
こいつらただの亡命者じゃねえ!戦闘経験を積んだ元兵士だ!
ポケットの膨らみをあの時推測しておけばよかった!
俺はフッと力を緩め、均衡を崩す。
相手の剣線を誘導し、地面に叩きつける。
地面に剣身がぶつかり、衝撃が地面に伝わり、地面が陥没する。
俺は衝撃が伝わる前にAに飛び膝蹴りを繰り出し、Aの腹を捉える。
Aは腹と膝の間に両手を滑り込ませ、少し体を浮かせ、後ろに吹っ飛ぶ。
衝撃を後ろに逃がしてそれほどダメージは食らっていないようだ。
Aは吹っ飛んで後方5mまで吹っ飛び、着地する。
Aは余裕な表情を戦闘前から全く崩す様子はない。
「へえ…。なかなかやるじゃねえか!今回のゲームは引き分けか…。なかなか楽しめたわ!じゃあ次は普通に戦うとしますか!おい、チェルド!一気に畳み掛けるぞ!サクッと殺って目的地にゴーだ!」
「おうよ!さっさと終わらせようぜ!さっきからこっちは退屈なんだよ!じゃあ行くぞギャレット!」
やっとゲームは終わったか…!
てかなんで俺は律儀に1対1に応じてんだよ!
独り身だった頃の感が中々抜けてねえな…早く矯正しねえと。
「おいキー!こっちも行くぞ!絶対相手を殺れ!逃がしたら国の大損失だ!」
「わかった」
また俺とA改めギャレットは接近し、剣の撃ち合いを再開させた。
俺とギャレットは一進一退の攻防を繰り広げ、均衡状態が続く。
やはりギャレットの『身体強化』は俺の上を行く。
ジワジワであるが、俺は押され気味になって、ギリギリ均衡を保てている状態だ。
このままじゃ勝てないな。
俺は一度相手の剣に思いっ切り自分の剣を当て、その衝撃で後退、すかさずポーチから発光材と水袋を取り出す。
俺はすぐさま発光材を『身体強化』に付与し、辺り一面を光で満たす。
「こんな小細工俺に効くと思うか!甘えよ!」
「甘いのはお前だよ!」
俺は相手が少しの間強制停止している時に『遠距離射撃』を水袋を装填しギャレットの足元へ射撃。
地面にぶつかる衝撃で水袋が割れ、魔力が全て水に置換され、辺りに散布される。
俺は後続に4発『遠距離射撃』をAの周りに射撃、その内最後の魔力弾は時間差で発火する触媒を装填しておく。
その後射撃した後のもう一回り外側に『遠距離射撃』を計8発射撃。
ここまで消費時間約2秒。
後は最外殻の魔力の濃度を調整し、魔力の壁を作る。
そしてその直後触媒が発火。
火が停滞している魔力弾に写る。
その後ノータイムで他の近くにある3発に火が写り、ギャレットを中心として1回目の爆発が起こる。
水浸しになっていた地面が急激に蒸発し、上手く外側の魔力壁が機能して水蒸気爆発が起こる。
これで2回目の爆発。
その直後に魔力壁にも火が周り、3回目の爆発が起こる。
俺は魔力調整をしつつ後退していたため、1回目の爆風に上手く乗り、ふっとばされるが、10数m離れた地点で着地した。
前方には煙が舞う。
煙が濃いせいで視界が悪い。
3度のゼロ距離爆破には流石に耐えられないだろうと思うが、戦闘態勢は崩さない。
ゾワッッッッ!!!!
俺は濃厚な死の香りを嗅ぎとり、その場を離脱。
俺が離脱した直後にはギャレットが俺がいた地点目掛けて剣を叩きつけていた。
ギャレットの服には煤が多少こびりついているが、本人にまたしてもダメージはない。
「お前、しぶといな…。あれで殺さないのか」
「今のは結構キツかったけどまあ援護も入ったしな、
なんとかなったわ。ハッハッハッ!」
よく見るとギャレットの来たところには人が十分動ける穴があった。
咄嗟に地面に潜って回避しやがったか!
穴に直ぐに入って土を生成して上を塞ぎ、鋼鉄並みの土の硬度で爆発を耐えきったってわけか。
つまりチェルドは土の適性持ちってことか。
相性のいい部隊のようだな。
「じゃあ次はこっちの番だな!一気に決めるぞ!」
「おう!」
ギャレットはまたこちらに突進を仕掛け、俺と近接戦へと持って行き、チェルドは俺を中心にして射線がギャレットと被らないようにして移動を開始する。
さっき手を出さなかったのは何かしらの準備を施していたのだろう、チェルドの周りには異常な濃度の魔力が満ちていた。
俺とギャレットがまたまた斬り合っている間、チェルドは銃を取り出して俺に標準を合わせて来た。
そして計3発の発砲。
魔力でできた弾よりやはり威力は実弾の方が分がある。
俺は咄嗟に飛来した計3発の銃弾を瞬時に軌道を見切り、弾き返す。
「ほら!背中がガラ空きだぞ!」
「しまっっっ!!!」
銃弾を弾き返した隙にギャレットは俺の背中に回し蹴りをかまし、俺は衝撃をもろに受け吹っ飛ばされる。
肺に溜まっていた空気が体外に無理やり吐き出され、息が止まる。
俺は5mほど空中に浮き、地面に背中からぶつけ、二転三転してようやく止まる。
「ガハッ!ゴホッ!…おい、その銃、どこで手に入れた…」
「結構いいだろ?俺たちには貴重な代物だぜ!まあ俺たちがなぜ持ってるかってのは教えないがな」
俺はすぐさま起き上がり、戦闘態勢を整える。
相手は両国の武器を兼帯しているのは何故だ?
まだ科学の武器は結構古い武器を使っているようだが。
魔石はそれなりの純度を持っている、だれか技術者が裏切ったのか?
ギャレットはこちらを余裕そうな面持ちで眺め、またせせら笑う。
「お前1人だけじゃ勝てねえよ!さっさと仲間を頼ったらどうだ!女の子の手前カッコ悪いだろうけどよ!」
そういえば何故かひとつも援護が入ってこない。
さっきの攻防にしても、牽制の1つさえ入れてさえ入れば俺が吹っ飛ばされることもなかったはずだ。
そもそもキーの能力を考慮すればこいつらなど瞬殺できるはずではないのか?
こいつらの魔石適性は俺よりは遥かに高いが、人の域での話だ。
俺は後ろに振り向いて、キーを睨みつけた。
「おい!何故援護をしないんだ!結構やべえってさっき言ってただろう!」
キーはこっちの声には反応こそはするが、動く気配は全くない。
「命令がない。命令がないと私は動かない」
「はあ?自分で考えて動けねえのか!?さっきの戦闘だって牽制の1つや2つくらい出来ただろう!?」
「私は人間ではない。私は機械。命令を忠実にこなすだけ。機械は自分で行動はしない」
機械…、そういえばこれまでの任務は俺が先に指導をして、命令を俺が出していた。
だからこいつは動いた。
だが今は戦闘をするっていったが抽象的すぎたから行動に移せないってことなのか!?
感情を殺す人間兵器を作る弊害が正にこれなのか。
躊躇や恐怖などの戦闘に不必要な感情を削ぎ落とすあまり、自分で判断する意思さえも放棄してしまう。
また、戦闘において瞬時に的確な判断を連続で下さなければ死んでしまうからこいつはそれが出来ないから戦闘ができない。
だから失敗作!感情を完全に殺すことができたから「過去最高」って訳か。
分が悪すぎる!
直接命令を下さなければならないってことは相手に作戦が筒抜けってことになる!
まして 連携プレーも未熟も良いところなのに俺が他人の行動を随時指示をしながら自分も戦闘をするなんてあまりにも無茶だ!
しかもぶっつけ本番なんて無謀に過ぎる!
ここは退かなければ必ず負ける!
いくらキーの異常な能力でもこの状況じゃ役に立たない!
「キー後でその話をゆっくり聞かせろ!今は撤退が最優先だ!『閃光線』をギャレットとチェルドの中間地点へ!あと広範囲に『怪物号令を今すぐやれ!」
「わかった」
キーはすぐさま『閃光線』と『怪物号令』を発動。
「なんだの威力は!?さっきとは比べものにならねえ!」
「すまねえギャレット!数分間見えそうもない!その間そいつらを絶対に逃すなよ!」
ギャレットとチェルドは俺の声を聞き、すぐさま目を塞いで光を遮ろうとしたが、無駄だった。
キーの『閃光線は敵と認識した相手のみ両目に追尾機能が備わり、たとえ目を塞ごうとその間を縫ってまた到達する。
さらに、敵と認識していないものには影響がない優れものだ。
「よし!キー死体を回収して撤収!全速力で離脱を試みる!」
「わかった」
「ハッ!逃げられると思うなよ!」
ギャレットは既に目が回復しているようだ。
明らかに早過ぎる!耐性があるのかあいつは!?
そうして俺とキーの逃亡戦が始まるのであった。
次で初任務、終わるかな…?
まだ続きそうです。
まだまだ拙い戦闘シーンですが徐々に成長させていきますのでよろしくお願いします!