41、ナメクジの力
「カンラカンラ!純野さんが行くなら、飲んだくれ仲間たちも行くはず!我が発明品、ナメクルーン錠剤を飲めば、空も飛べよう!」
是害院博士が、素晴らしい笑顔で近付いて来た。
「カンラカンラ!三輪さん、飲みたまえ」
「いや、アルコールの入ってないものは、飲まないんですよ」
明らかに怪しい薬、……おそらく巨大ナメクジの成分を使っているであろう『ナメクルーン錠剤』とやらを飲みたくなかったので、そんな言い訳をした。
「カンラカラカラ!そう言うと思ったよ。だから、ナメクルーン錠剤は、水ではなく酒で飲む薬なのだよ!」
是害院博士は、どこからか取り出した酒のビンを、ちゃぽちゃぽと振った。
……!……あれは……純米大吟醸『ねこまた侍』!
「さあ、この酒で飲みたまえ!」
「ぐう……後で残った酒を、もらっていいですか?」
「カンラカンラ!三輪さん、もちろんだとも。(……ナメクルーン錠剤の、貴重な実験台になってくれるのだからね)」
是害院博士が、小声で何か言っていた気もするが、今は酒を優先すべき時だ。
「じゃ、いただきます」
「酒だけでなく、ナメクルーン錠剤も飲むのだ、三輪さん」
「……了解。……うん、いくらでも飲みたくなるような、そんな酒だ」
「酒の味について話さなくてよいから、飛んでみたまえ。飛ぼうと念じれば、飛べるはずだ」
……飛ぼう。
体が、ふよふよと浮かんだ。
「おお!飛んだ!……しかし、なんでナメクジ由来と思われる薬で、飛べるんだろう?」
「カンラカンラ!ナメクジは、空ぐらい飛ぶのだ」
「……それは、博士のナメクルン達だけでしょう」
「ふむ。よい酒ですな、三輪殿」
「……うまい」
「あ、ガイラルアッヴァーンさんも飛べるようになったんですね。……純野さんは、もとから飛べるのに何故飲む?」
「うん。そこに、酒があるから……かな」
僕らの準備は、こうして整った。
「では、三輪さん達には東南をお願いしやす」
「了解。……それと、相手がどんなのか、判ります?」
「完全には探り切れなかったでやすが……黒のデンキパイロットが多数いることは、判明しておりやす」
「黒……は、最強のデンキパイロット!」
「……でやす。ただ、それ以上に恐ろしい何か……の気配も感じたでやす」
「それは、多分あいつ」
「ん?純野さん、心当たりがあるの?」
「司道鉄車だと思う。神の御子、らしい。……わたしを、よく虐めた」
「……それは、ラ・メーンが何人も消された相手でもありやすね」
チャシューさんのブタ顔が、青ざめている。
「三輪よ、いい機会だな」
「何がですか?吉田さん」
「神の御子ってことは、そいつをぶちのめせば、キャピターの力はかなり失われる。のんびり酒を飲める余裕が出来るぜ」
「おお!それは素晴らしいですね」
「わたしも、復讐する。そして、のんびり酒を、飲む」
「……三輪さん達は、すでにのんびり酒を飲んでいやす。さっさと動いて欲しいでやす」
チャシューさんに、じとりと見られたので、もう行くことにした。




