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9/19

pessimistic。

散歩かと思い長らく待ったが帰ってこないので俺は宿舎の受付に向かった。


「すみません、水色の髪で杖を持った女の子通らなかったですか?」


すると受付のお姉さんが


「その子なら急用で自分の町に帰るって言ってたよ」


その言葉を俺は信じれなかった。


「その子の部屋の片づけをしてたら手紙が机の上にあったんだけど多分あなた宛てじゃない?」


その手紙を受け取り部屋に戻って急いで見た。


(アヤカさんへ、いきなり消えて約束を果たせなかった事を許してください。

お家の事情で一刻も早く戻らなければいけない状況でしたので、男性から助けていただきその上お友達になってくれたアヤカさんに挨拶すらない別れで罪悪感でいっぱいです。もしこの先アヤカさんがその町を出て冒険を続けるのであればいつかは私もお誘いください、また会える日を待ち望んでいます。)


納得は勿論していないが怒れる訳もない、何故か俺は嫌われていない事を知れてほっと安堵していた。


「またひとりぼっちか……」


たった二日共にしただけの顔見知り程度の筈なのだがヒキニートで友達が居なかった俺からすると初めての友達だったのだ。


唖然としてベットに横たわっていると


コンコン


ノックの音が聞こえた。


ドアを開けると


何故かレイチェルが立っていた。


「レイチェル……」


「アヤカはどうしてそんな辛そうな顔をしてるんだい?」


「ちょっと色々あって、それよりどうしたの?」


「今度行く狩りのミーティングをと思ったんだけど今日はやめておこうか」


そう言いながらレイチェルはベッドの上に座る。


「僕で良いなら話くらい聞かせてほしいな」


レイチェルの初めて見る真剣な表情に頼らずにはいられなかった俺は状況を説明した。


「別れの挨拶すら出来ないくらい急いでたんだから仕方ないと僕は思うよ」


「でももう会えないって思うと死にたくなってきた……」


「誰がもう会えないって言ったんだい?この手紙に書いてるじゃないか、この子はアヤカとまた会うのを待ってるのに君はずっとこの町に居続けるのかい?」


「でもゴブリンすらまともに倒せない俺が町を出たって死ぬだけじゃないか!!」


「君は馬鹿なんじゃないかと思えてきたよ」


俺はレイチェルの言葉に震えながら反論しようとしたが続いた言葉で喉元まで出かかっていたものを飲み込む。


「僕がいるじゃないか!!一緒に強くなってこの町を出てその子を迎えに行こうとかは思いつかないのかい?」


「この町を出たところでノアに会える確信なんてある訳ないのにレイチェルを俺のわがままに付き合わせれないよ」


「僕自身この町を出るつもりで居たんだ、どうせなら一人より君と冒険した方が楽しいに決まってるじゃないか!!だからこれは君のわがままじゃないんだ……僕のわがままなんだよ!!」


「何で俺の為にそこまでしてくれるんだよ……」


「僕は友達と一緒に冒険をしたいだけなんだよ?」


気を使って言ってくれたのか本心でそう言っているのかはレイチェルにしか分からない事だ、この魔法を掛けたかの様な言葉に俺は助けられた。


「ありがとう、本当にありがとう」


俺は感謝の言葉を言うしかできなかった。


「僕はしんみりしているのは嫌いなんだ!!そうと決まれば今からレベル上げに行くよ!!」


「いや、流石に今すぐなんて気持ちの切り替えできるほど人間出来てないんだよ」


我ながら恥ずかしい程ダメな奴だ、レイチェルがここまで言ってくれているのに。


「んー、じゃあ明日から頑張るとして今日はデートしよう!!」


「え?狩りじゃなければ良いって訳じゃ……」


「反論は認めないよ、どこか行きたい所はあるかい?」


「しいて行きたいと言えばこの町の一番高い所かな」


これはレイチェルなりの励ましなんじゃないかと思えた俺は複雑な気持ちを抱えながらも行き先を決めた。


「高い所かー、じゃあ鐘の塔だね!!」


「鐘の塔?」


「うん!!僕らが昨日の朝話している時に鳴っていた鐘を置いてある塔だよ!!多分この町では一番高いんじゃないかな?」


「ああ、あの教会みたいな所か」


「そうそう、じゃあ決まり!!行こうじゃないか!!」


レイチェルに連れられ鐘の塔を目的地に町中を歩いて行った。


「いやー、君と歩いていると周りの視線がすっごいねえ」


笑いながらレイチェルが茶化してくる。


「注目されるのが苦手な私からすれば迷惑なだけなんだけどね、レイチェルと居ると言い寄って来ないから助かるよ」


視線が苦手なのも家から出なかった理由の一つだ。


昔は馬鹿にされる視線、今は真逆の視線を向けられているがどちらにせよ視線が苦手なのは変わらない。


「何で僕と居ると言い寄って来ないんだよ!!みんな僕じゃ不満なのかい?」


レイチェルがプンスカ怒っている。


「多分違うよ、レイチェルが中性的な顔立ちしてるのと口調でカップルだと思われてるんじゃないかな?」


「ハハッ、カップルか!!それなら納得だね、けど僕だって一応女の子なんだよ!?」


「私が男ならレイチェルみたいな女の子彼女にしたいと思うしちゃんと女の子だよ」


半分冗談、もう半分は本当に日本でレイチェルみたいな子と知り合えてたら惚れてたと思う。


「慰めはいらないんだぞー!!よくそんな気恥ずかしい言葉言えるもんだね」


レイチェルはムッとしているがどことなく嬉しそう見えた。


「ほら、着いたよ!!」


気が付くと塔の真下に到着していた。


「じゃあ入ろうか!!」


レイチェルはノリノリで階段を飛ばし飛ばし上がっていく。


「ちょっと……まって……。」


こいつどんな体力してんだよ、レイチェルのペースに合わせていけば五分も持たないぞこれ。


「君は体力がないなー、仕方ないから君に合わせて上ってあげよう」


ニコニコしているレイチェルを見ていると何故かこっちまで笑ってしまいそうだ。


二十分程で頂上にたどり着いた。


「まだお昼だから感動はしないなあ、夕方になるとすっごく綺麗なんだよ!!」


「今度それも見に来なきゃいけないな、それでも昼間でも高い所から見る景色は綺麗だよ」


「そうかなー?」


そんな事言いながらも凄く楽しそうだ。


「上から下を見ればさ、町中で働いている人や遊んでいる子供、楽しそうだとか辛そうだとか今にでもあそこの人泣きそうだなとか一度に見れるじゃん?それを見ていると……」


「分かった!!自分より下の人を見て嘲笑ってるんだね?その趣味は些か共感できないものだね」


「違うわ!!!!自分より辛そうな人があんなに耐えてるのに自分が頑張らなくてどうする!!って事だよ」


レイチェルは納得した表情を見せた。


「じゃあ下に降りよっか」


「お?もう満足したのかい?」


「良いんだよ全く無いんじなくて、ペシミスティックになるのは少しの時間だけで」


「ぺ、ぺスミ……?君は頭がいいのか悪いのか本当に分からないよ」


レイチェルは階段を下りている間ずっと難しい顔をしては答えを提示してきたが正解する事はなかった。


「これからどうする?私のしたい事は特にないしレイチェルのしたいことはないの?」


「僕のしたい事は君との冒険だよ、まあしいて言うならご飯を食べに行きたいな!!」


「奢ってあげる、何が食べたい?」


「良いの?じゃあお言葉に甘えて、とりあえずお肉食べてその後に酒場でパーッとお酒飲もうじゃないか!!」


「いいよ……ってレイチェル何歳だよ、未成年がお酒を飲んじゃダメなんだよ」


「僕の年齢は機密情報だから教えてあげる事は出来ないんだ……」


「ただの年齢隠してお酒飲もうとしてる子供にしか見えないんだけど、まあ異世界だしなんでもいいか」


「ん?異世界とは何だい?」


またやっちゃったよ。


「ただの独り言だよ、早くお肉食べに行こ?」


「うむ!!では行こうじゃないか!!君のお金で!!」


すまん優しいお兄さん……あなたから騙し貰ったお金は大切に使わさせてもらっている。


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