始まり
女神様との会話も一通り終わらせ流れ的に今から転移するらしいが一体どうやって異世界へ飛ばされるんだろうと考えていた矢先、謎の光に包まれまるで閃光弾を食らったかの様だ
(いや、食らったことねーけど)、あまりの眩しさに瞼を閉じる……体感時間でどれくらいだろうか即席ラーメンが出来上がる位は経っただろう、やがて光が消えていき何だか周りが賑やかになった。
まさかと思い恐る恐る瞼を開くとかっこいい武器や防具を売っている道具屋、果物を売っているお姉さん、上手そうな肉をがっついている冒険者たち。
目の前に広がっている光景は俺みたいなネトゲ廃人にとって胸躍る夢のような場所だった。
おいおいマジかよ……なんてありきたりな言葉は言わない、
「最っ高じゃねええええかああああああ!サンキュー女神様!!」
と叫び、これから始まる俺の異世界人生に胸を躍らせていると、周りの視線が俺に向けられヒソヒソと会話をしていた。
なんだなんだと聞き耳を立てる
「見てあの人超美形じゃない?」
「めっちゃ良いんだけど」
などと聞こえてきた。
そこで俺は大事なことを思い出した、
(そうか、魔王討伐の代わりにって世界一のイケメンになったんだっけ、ここまで注目されるとは……)
流石世界一だなあとニヤニヤしながら鏡が置いてある場所を探しに歩き始めた。
道なんて分かるはずもなく道行く人に聞くことにしたがせっかくだ、きゃわいい女の子やケモミミ少女に聞こう!と鏡探しが知らぬ間に女の子探しに。
現実世界では女の子に声を掛ける事すら出来なかったが今は違う、なんたってイケメンだぜ?声を掛けられる側からしたら嬉しくない筈が無い。
こんなに可愛い子達が居るんだから選び放題だなwなんて迷っている矢先に後ろから声をかけられ、やっぱりイケメンはこうでなくっちゃと満面の笑顔で振り返ると、長身マッチョの極悪人面が立っていた。
「道に迷ってそうだったから、良かったら僕が案内してあげるよ」
と外見からは想像もつかない優しい口調で話しかけてきた。
もちろん感謝の言葉を述べ美少女探しを再開しようとするとマッチョに便乗してか大勢の男が押し掛けてきた、
「なんだよ!!異世界はボーイズラブが当たり前なのか!?」
とにかくこの場所から逃げるために
「あ!!!!」
と指をさし皆の視線が外れた一瞬を逃さず猛ダッシュ、周りを見て追ってきてないのを確認し一息つく。
人があまり居ないのと道の狭さから察するにどうやらここは路地裏らしい。
なんなんだよあの恋する乙女の様なオス共は……と呟きながら座り込もうとすると割れたガラスが落ちている事に気が付く、
「ったく誰だよこんな所に、気づかず座り……。ん??」
ガラスに反射していたのは淡い紫色の髪、綺麗な二重、モデルの様な鼻、小さくかわいい形をした唇。
一言では表せれないほどの美少女が映っていた。
急いで振り返るが誰も居ない。
もう一度ガラスを覗き込み確信した……これは俺だ。
こんな容姿なら男たちが声を掛けてくるのも納得できるなっっってちがーーう!!
「何んだ!?何で!?え??分かんねーよ!!とにかく女神様に聞かねーと!!」
俺は心の中で神様を何度も呼んだ。
すると
「すみません用事を終わらせていました」
とあからさまな寝起きボイスで返事をしてきた。
「……寝てただろ?」
「寝てません、神に誓います」
「いや今はそんな事どうでもいい!なんだこの顔!何で絶世の美女になっちゃってんの俺!!」
「あれ?優馬さん願い事で美形にしてくれと言ってましたよね?」
「違うだろ!?美形とは言ったが誰も性転換させろとは言ってねーだろ!?」
俺は叫び散らした……
「ごめんなさいゲームのキャラの彩花ちゃんになりたいのかと勘違いをしてしまいました、ニホンゴッテムズカシイデスネ」
「今更片言喋っても無駄だからな?とりあえずイケメンの男の子にしてくれ」
すると神様は難しい顔をしながら
「規則で一度願いを叶えたら二回目は無理なんですよ、ですがその姿の方がアイテムくれたりして楽なんですよね?オールおっけいですね」
このクソ神女神開き直るどころか自分を正当化しやがった。
「冗談じゃねえ!」
と怒ったところでどうしようもないらしい、諦めが早いんじゃないか?と思う読者様も居ると思うがこのクソ神様の言う事にも一理ある上に自分自身ちょっとまんざらでもないらしい。
「仕方ないがこの世界での俺は愛花ちゃんとして魔王討伐をすることにしよう」
腹をくくった俺は
「ここからは自分で何とかしてみるがどうしようもなくなったらまた話しかけるよ、おやすみクソ女神」罵り交じりで別れを告げると
「寝てませんでしたけどおやすみなさい」
と罵られた事すらスルーして眠りについた。