神様の性で転換しちゃいました。
「そろそろ喋った方がいいと思うんだけど?」
ギルドに着いてから1時間ほどこの状態だ。
「じゃあミアちゃんお腹空いてない?」
俺の質問にミアはピクッと反応をして頷いた。
「ジャンナさん…」
俺はジャンナを見つめる。
「アヤカさんが言うなら仕方ない、誰か持ってきて」
先程、仲間がやられたと報告をしてくれた人が食べ物を持ってくる。
「どうぞ」
そう言ってミアの前に食べ物を置いてスタスタと早歩きで戻っていった。
「いただきます」
手を合わせて礼儀正しくフォークを握りお肉を刺そうとした時……。
スッ……。
「何のつもりだよ」
「僕的には食べる前に喋ってもらいたいんだけど?」
食べ物の乗ったお皿を手に取るレイチェル。
しばらく睨み合いが続いたが空腹には敵わなかったのか
「分かったよ……けどマスターとそこの淡い紫色の髪のPTの四人以外は出て行ってもらえない?」
ミアからの条件に
「なぜだい?人が少なくなった時を狙って逃げるかもしれないあんたの言う事なんか聞く必要が」
と聞く耳を持たないジャンナを静止する。
「分かった、じゃあ五人でお話をしよう」
「アヤカさん!!」
「大丈夫、敵のホームで馬鹿な事するような子には見えないから」
そう言うと少し不満そうにギルトメンバーを外に追いやった。
「それじゃあ話してもらおうか、あたしの仲間を狙っていた理由を」
ジャンナは今にでも手が出そうな勢いで問いかける。
「まず最初に一つ、確かにギルドを潰しに掛かっていた事には間違いはない……けど先に手を出してきたのはそっちのギルドじゃねーかよ」
ミアは静かにジャンナを睨みつけた。
「何を馬鹿な事を言っている、なんであたし達があんたのギルドを攻撃しなきゃいけないんだい!!」
「今更とぼけても無駄だよ、ちゃんと証拠も残ってる。だから潰される前に潰すしかなかったんだ」
ミアの表情を見る限り嘘はついていない様だ、かといってジャンナも身に覚えのない話をされて混乱している……もしかしてと思いもう少し話を聞くことにした。
「あたしは他のギルドに手を出すことを許さないとギルドに入る奴等にはちゃんと言っている、ましてやそんな命令を出した事など一度もないよ!!あんた人を侮辱してんのかい!?」
ジャンナは声を荒げて剣を抜き斬りかかった。
「レイチェル止めてr……流石レイチェル」
俺が言う前にナイフで剣を受け止めていた。
「邪魔をするんじゃないよ!!」
「ジャンナさん落ち着いて!!」
それでも怒りのままに暴れ続けるジャンナに呆れたメアリーが
「イモビラス」
と動けなくなる魔法を掛けた。
「話を聞く限りお互い嘘はついてない、って言う事はジャンナさんの知らないところで誰かが勝手に手を出したって事になる」
「実際私が副マスターをしてたギルドはマスターがお前らのギルドにやられて解散したんだよ」
沸々と怒りが湧いてきたミアもナイフに手を伸ばしていた。
「今争っても何の解決にもならないじゃないか!!」
レイチェルの言葉に二人共冷静になる。
「じゃあ話を整えていこう」
そう言って皆で話し合いをした結果
「ジャンナさんの知らない所で誰かがミアちゃんのギルドに手を出した、誰がやったかも理由も分からない……ミアちゃんはその人の顔を見たの?」
「顔は隠れていて分からなかったが右足首にそっちのギルドの紋章が入ってた」
「ジャンナさんその人分かる?」
俺が質問をしても耳に入っていないのか一切返事が無い。
「ジャンナさん……?」
「確かに右足首だったんだね?」
「間違いないよ」
「そうかい」
ジャンナは剣を置き座り込む。
「右足首にタトゥーならケイリーだね」
「何でそんなことが分かるんだよレイチェル」
「お風呂の時に見たんだ、ライリーが左足首ケイリーが右足首に紋章が入ってたんだ」
凄い洞察力だなと関心をしてしまったが今はそれどころではない。
「ジャンナさん、間違いないんですか?」
「ああ、ケイリーだね。すまないが二人を呼んできてくれないかい?」
俺はジャンナさんの頼みを了承し二人を呼びに外に出た。
「二人ともジャンナさんが来てくれって言ってたよ」
「分かりました」
ライリーは直ぐに返事をしたがケイリーは動こうとしない。
「ケイリーさん」
俺はケイリーを見つめて呼びかけたが無視をされる。
「バレてしまったのですか……こんな事をしたくはなかったのですが」
そう言って俺の腹部を蹴り上げる。
「ウッ!!」
「ケイリー!!何をしているのですか!!」
ライリーはいきなりの事に困惑している。
「こんな事になるとは思ってませんでした、こんな事に首を突っ込まなければ良かったんですよ」
そう言いながら全力の蹴りを続ける。
骨は折れている、こんな蹴りを食らい続けてたら間違いなく死ぬ……。
「やめてくださいケイリー!!」
「ライリーは下がってて」
「下がるのは君だよ!!」
意識が飛びかけていたが声と共にレイチェルがケイリーに飛び蹴りをかます。
「アヤカ!!大丈夫!?」
「骨が折れて意識が飛びかけてた以外は大丈夫」
「ライリーは回復魔法でアヤカを治療してて」
ライリーは頷くと直ぐに魔法の詠唱を唱える。
「アヤカを傷つけた君は許さないよ」
勢いよくナイフで襲い掛かり近接戦が始まろうとしたが二人の間にジャンナさんが飛び出た。
「凄い音がしたと思い出てきたら……レイチェルさん落ち着いて、あたしはこの子に話を聞かなきゃいけないから」
「そこをどいてくれないかい、僕はこいつを許さないよ」
「頭を冷やしてくださいクソアマさん」
メアリーもケイリーを庇うように前に出てきた。
俺もレイチェルを落ち着かせようと立ち上がると激痛が走る。
「痛ッ」
「まだ完璧に治ってないんですから動かないでください!!」
「これくらい大丈夫だよ」
とキメ顔で言ったものの死ぬほどいてえ、むしろ死にたい……。
「レイチェル、私はこの通り大丈夫だから一回落ち着いて」
ここまで言ってやっと落ち着いたレイチェルがナイフをしまい
「分かったよ、けど話し合いの後はどうなるか知らないよ」
ケイリーを睨みつけスタスタとギルドに戻って行ったレイチェルを追いかけ皆もギルドに入る。
「ライリーちゃんありがとう、おかげで回復したよ」
「当然の事をしただけです、それより何があったのですか?」
ライリーだけは状況を把握していない、これはケイリー単独の犯行だろう。
「すぐ分るよ」
そう言ってレイチェルの横に座る、もしまた蹴られると思うとレイチェルから離れられないダサい俺だ。
「ケイリー……本当にあんたがやったのかい?」
ジャンナは悲しそうな顔で静かに問いかける。
「……。」
「ギルドを作る時に一番最初に決めた掟じゃないかい、何であんたが……」
「……。」
「お前が手を出してこなけりゃこんな事にはならなかったんだよ!!!!」
下を向き一言も喋らないケイリーを見て怒りを爆発させるミア。
「なんか言ってみろよ!!!!」
「落ち着いてミアちゃん、ここはジャンナさんに任せよう」
感情をセーブ出来ないミアは椅子を蹴り上げ外に出る。
「ミアちゃんを連れ戻してくるからジャンナさんここはお願いします」
ジャンナさんはケイリーから一度も目を外さずに頷いた。
「レイチェル、メアリーちゃん何かあった時はよろしくね」
「任せて」
「分かりました」
俺はギルドを出て直ぐ近くにあるベンチで膝を抱え座っているミアの側まで行く。
「隣座るね……ミアちゃんは煙草の匂い大丈夫?」
「私にも一本くれよ」
俺はミアに一本渡し自分も一本手に取った。
何でこんな少女が煙草なんて吸ってんだよと思いながら前のショーウィンドウを見た。
「人の事言えないな」
「一人で何言ってんの」
「何でもないよ、これ吸い終わったらみんなの所に戻ろう」
「子供じゃないんだから分かってる」
「良かった」
それ以降言葉を交わさず静かに煙交じりの空気で深呼吸をし、二人でギルドに戻った。