表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/19

便利な神様。

「なあレイチェル……」


「なんだいアヤカ」


「これ食べられるのか?」


俺が指をさしながら言っているのは黒焦げになったお肉の様な炭……いや、炭の様なお肉だ。


「もちろん食べるよ?アヤカは食べないの?」


こんな物食べたら死ぬに決まっているじゃないか……。


「いや、私は大丈夫かなあ……」


「勿体ないなあ」


そう言いながらレイチェルは隅に手を伸ばした瞬間


「や、やめてください!!なんなんですかクソ蛆虫野郎共!!」


洞窟の奥の方から聞き覚えのある口調と口の悪さが聞こえた。


「この声ってメアリーちゃんだよね?」


「ちょっと待ってて僕が見てくるよ!!」


レイチェルが焦って飛び出そうとしたがそれを止める。


「相手がここに住み着いてる奴等なら一人で何とかなる相手じゃないんだろ!!俺も行くに決まってんだろ」


「君にはまだ早いよ!!ここで待っ」


「俺なら今までの経験で何とかできる自信がある!!連れていけ!!」


レイチェルは俺の強い意志が折れる事が無いと察したのか諦めて同行を許可してくれた。


「分かった、けど君が危なくなっても助けれる自信はないよ」


二人で声がした方へ急いだ。


しばらく入り組んだ炭鉱内を進むと扉の前に出た。


「この先にメアリーちゃんが居るんだな?」


俺はその扉を蹴り開け中に入る。


中には拘束されているメアリー、それを囲って酒を飲んでいる男達。


「メアリー!!」


「んだテメー!!勝手に入ってきやがって!!」


男達が一斉に声を荒げナイフや杖を構える。


「僕に任せて、アヤカはメアリーを助けてやってくれないかな」


レイチェルはその言葉を置き去りにしたと思えば一瞬にして敵との間合いを詰め一人の男の喉元にナイフを突き立てていた。


「僕は出来るだけ人を殺したくないんだ、この先は言わなくても分かってくれるね?」


流石にこのスピードに驚いた上に仲間が殺されかけている状況だ、ここは引いてくれると思ったが俗共は違った。


「何言ってんだ?こっちは大勢そちらはお二、人数差を考えろよ!!そんな奴一人くらい欲しけりゃくれてやるよ人殺しの盗賊さん!!」


こいつらは一斉に笑い出し、こちらに向かってきた。


「レイチェル!!」


「僕は……僕は人殺しなんかじゃない!!」


レイチェルはナイフを捨て体術だけで応戦しだした。


「何やってんだレイチェル!!武器無しで何とかなる人数じゃないくらい分るだろ!!」


俺はネトゲの対人戦で培ったものをすべて使い何とか遣り合えているがレイチェルは武器を捨てた挙句に囲まれている。


「アヤカ!!大丈夫かい!?」


「人の心配してる場合じゃねえだろうが!!」


レイチェルが俺の心配をしたその一瞬で取り押さえられ、拘束されてしまった。


「あとは一番可愛いお嬢ちゃんだけだぜ?さあどうするよ!!」


お約束のこの展開、俺が反抗的なアクションを起こさなければ全員殺される事はないだろう……。


二人が拘束され敵はまだ十人程残っている……さあ本当にどうするよ俺、考えるんだ。


「可愛いお嬢ちゃんどうするよ!?お前がこれから俺たちの仲間に入って毎晩相手してくれるならこの二人を助けてやってもいいんだぜ?考える時間を五分やるよ!!」


初めても済ましていない俺が男の相手?ふざけんじゃねえぞ!?俺に五分も与えた事を後悔させてやる。


「じゃあお言葉に甘えて五分だけお時間頂きます」


(おい神様、起きてるか?)


(なんですか?)


(なんですかじゃねえよ!!この状況見たら分かるだろ!!)


(危ない状況ですね。で、どうしましたか?)


こいつ絶対わざとだわ、生きて帰ったら泣かせてやる。


(この危ない状況を何とか出来ませんかね?)


機嫌を損ねて助けてもらえないなんてあってはならないので下手に出る。


(神様へのお願いを使えば何でもできますよ!!どうしますか!?使いますか??)


何でこのクソ神様はこんなに喜々としてるんですかねえ。


(じゃあ神様のお願いを一つ使って、俺にしかない特殊スキルをください)


こんなチートなんて使いたくなかったがこの状況だ、仕方ない。


(あー、それは無理ですねえ)


ん?聞き間違いかな?


(今無理って言った?)


(はい!!)


(なんでだよ!?何でもできるんじゃねえのかよクソ野郎!!)


詐欺じゃねえかこんなの!!


(あ、クソどころか神様すらつけていませんよ!?彩花さんはすでに特殊スキルを持っているので重複不可能なのです……)


え?俺特殊スキル持ってたの?


(カードの裏面をちゃんと確認してくださいよー、“パラレルスティング”って書いてるじゃないですか、CP消費の激しい技ですが使えばこんな奴等余裕ですよ?)


それは真ですか……。


ノアから説明を受けている時、どうせ自分なんかにそんな主人公スキルついてないだろうとカードをちゃんと見ていなかった。


(まさかこんなスキルが俺についてただなんて)


(あ、そのスキルは彩花さんが剣士を選んだ時にこの世界に来ていただいたお礼として勝手につけさせていただきました)


その時に言ってくれていたらこんな面倒な会話しなくて済んだだろうに、まあ有能神様が味方に付いていてくれた事に感謝だ。


(どうします?何かお願いしときませんか?何でもききますよ?早くお願いされたいんです!!未だに誰もお願いしてくれなくて……)


何故か泣きそうになっている神様。


(んー、どうしようかな)


俺はお願いしようかと悩んでいたのだが


「そろそろ五分経っちゃうぜー?」


ああ、神様との会話で敵に囲まれている事を忘れてしまっていた。


(ある程度のお願いは決まってるからまた後で頼むよ)


神様にそう伝えて俺は敵に向かって叫んでやった。


「お前らと毎晩S〇Xするくらいなら死んだ方がマシなんだよ!!バーカ!!!!」


「状況が読めていないらしいな……お前ら殺れ!!」


リーダーの号令と共に一斉に向かってくる。


「君は何やってんのさ!!早く逃げて!!」


「そうですよアヤカさん、私たちの事は良いので自分だけでも」


レイチェルとメアリーの声は勿論聞こえていたがここで引くのは剣士として……何より男として格好が悪すぎる、俺は仲間とプライドの為に突っ込んできている敵に向かって剣を構え叫ぶ。


「パラレルスティング!!」


技名を叫び剣を突き立てると自分を合わせ五体に分身して一斉に強力な一撃をお見舞いした。


「私一人に五人倒されて情けないな、どうするよ、まだやるか?それとも二人を開放するかどちらかだ」


恐らく今のステータスでは二回目は無理だろうがここは一か八かの駆け引きだ、頼む引いてくれ……


「分かった、俺達が引こう。お前ら早く縄を解いてやれ!!」


本当に助かった、CPの消費が本当に激しいなこれ……歩くだけで精一杯だ。


「ほら、言う通り解いてやったんだ!!もう帰ってくれ!!」


「は?誰が解いたら許すなんて言ったんだよバーカ、レイチェル!!メアリーちゃん!!」


「僕を怒らせたら怖いんだからね」


「私を縛るだなんて本当に良い度胸してますね、カオスゲイト!!死んで詫びてくださいこのクソ蛆虫共が」


メアリーが魔法を唱えた瞬間重力が一気に重くなり敵が動けないどころか潰れそうになっている。


「もっと重くできるのですがどうしてほしいですか?」


「あ˝……あ˝あ˝……」


「はっきり喋りやがれですよ豚共が、もう少しだけ重くしましょうか」


容赦ねえなこいつ……。


メアリーはこんな感じだしレイチェルはレイチェルで数名の敵を殴打してるし……本当に味方でよかったと思う。


「クソアマさん、この可燃物どうしますか?」


「僕の名前はレイチェルだよ、とりあえずじっくりと遊ぼうじゃないか」


気が付くと敵は一掃され残りのリーダーを縛って三人で囲っていた。


「俺達がここの炭鉱を独占してたのは悪かった!!何でもしますから命だけは助けてください!!」


「まあ命までは取るつもりなんてないんだけど、君今までのお宝は持ってるかい?」


「はい!!倉庫の中に!!」


やっぱりお宝が全てか。


「貴方今まで売ってきたお宝でお金は貯まっているんですよね?」


「もちろんあります!!」


こいつも金が全てか。


まあお金に関してはあって困るものではないし俺も巻き上げとくか。


レイチェルとメアリーは各自奪った代物を確認している。


「お前も相手を見て喧嘩売らなきゃこんな目に合うんだから気をつけろよ」


さて、お金もかなり貰えた事だし引き上げようと二人に声を掛けたのだが


「アヤカちょっと待って、僕が探してたここの湧きアイテムが剣士用の剣だったからあげるよ」


受け取った剣を見てみると上級者でも喉から手が出るほど欲しがる剣だ、何で始まりの町にあるダンジョンでそんなレア物がドロップするんだよ!!


「こんな売れば数百万の値がする物受け取れる訳ないだろ!!」


「僕ら二人を助けてくれたお礼だよ、何より剣士用なんて僕が持っていても宝の持ち腐れだしね」


俺は今すぐにでも剣に飛びつきたいが一応ここは謙虚にいく


「それでも……」


メアリーの様子を窺ったが目の前の大金以外目には入っていないようだ。


「メアリーもこっちの宝よりお金の方が嬉しいみたいだし大人しく貰っておいてくれないかな?」


「じゃあありがたく頂くよ」


こんなのチートだ、卑怯だと言われても仕方ないが貰えるものは貰うのが普通だろ?


「あの……そろそろ縄を解いてもらえないでしょうか?」


俺達はすっかりこいつの存在を忘れていた。


「はい?誰が縄を解くなんて言ったんですか?脳内に蛆虫湧いてませんか?」


「メアリーの言う通り誰も解いてあげるなんて言ってないんじゃないかな?」


「外に出たら助けを呼んでおいてやるよ」


そう言いながらリーダーの髪をツルツルに剃ってやった。


「じゃあ今日はもう疲れたし帰ってご飯にしようか」


俺は終わらないレイチェルのメアリーの争いを見ながら酒場へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ