ショートを二つ。
遠い未来、全ての事象が機械によって成り立った世界。
勿論そこではすべての仕事も機械、ロボットが代わりに行ってくれる。しかしたった一つだけ残った職業があった。
今日もその仕事の職人は自分の義務を果たすため街を歩く、途中きらびやかな宝石店が目に入ったので中に入った。今日の仕事先はそこにしたらしい。
堂々とした佇まいで店内に入るといきなり懐からハンマーを取り出しショーケースに向かって振り下ろした、ガラスの割れる大きな音と共に警備の異常を知らせるアラームが重なる、職人はショーケースから宝石を一つ持ち出すと店外に一目散に飛び出し街を行き交う人と人の間をすり抜けながら駆け抜けていった。
勿論警官ロボットがその蛮行を許すはずもなく職人を追いかけようと赤いランプを回しながら追いかける。流石に人間が機械の移動速度にかなうはずがなくすぐに捕まってしまった。
その後職人は逮捕されたがその表情は予想と反して明るく良い仕事をしたというような爽やかな顔をしていた。
彼の仕事は機械調査員。機械がいつでも動けるか調査するために散歩から身体検査、はては盗みや窃盗まで行う行動代理人だったのだ。
了。
とある宗教施設、そこでは一風変わった方法で悪魔の封印を行っているそうな。
中に入ってみると見るからに顔色の悪い気の弱そうな人たちが項垂れていた。彼らは皆一様に何かをぶつぶつとつぶやき何かしら迷っている様子だった。
なぜ彼らがその施設にいるのか、悪魔の封印に関係しているのか、疑問は尽きないので直接施設の人物にどういう仕組みなのか聞いてみた。
「悪魔というのは基本的に人の心に取り付いて犯罪などの非人道行為を誘発させるものでして、取り付いて暫くは本人の意志の強さによって抵抗できますがそのうちどうしても忍耐に限界が来てしまい行動に移いしてしまうのが関の山でした」
「なので今まで悪魔に打ち勝つのは意志の強い人間だと思われていました」
「しかし、それでもいずれ限界が来ます」
「そこで逆に意思の弱い方たちに任せてみました」
「効果はてきめんでしたよ、意志が弱いのでどんなに非人道行為を誘発させようが行動する意思そのものが弱いので実行する前に諦めること諦めること」
「今頃彼らの心に住んでいる悪魔は困っているでしょうね、いくら誘惑や脅迫をしようが暖簾に釘押しですから」
了。