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漆黒の魔女

初めて小説を書きます。今は乏しい表現しかできませんが(汗)勉強していきますので宜しくお願いします。



漆黒の魔女












全てが寝静まる闇のなか冷たい雨が降り始めた。



高層ビルの谷間で漆黒の黒髪を濡らした一人の女が呟く...。




「雨....か。」










「ヘックシュンっ!!!!!!ズルズビっ!!」


「ふぇ〜やんなっちゃうよ!昨日の雨っ!!!」


「ちょっとナナ...やめてよ喫茶店で大きな声出すの。」



暖かい午後の陽に照らされ喫茶店のテラスで女子二人が会話をしている。


「だってしょうがないじゃないっ?!昨日の雨で風邪引いたみたいだしっ!!あ〜もう今日はこんなに晴れているのに...ヘッ...ヘッヘックシュンっっっ!!!ズルっ。」



ナナと呼ばれた少女は髪は栗色のポニーテール、瞳はハニーブラウンの二重で背はあまり高くなく華奢な体つきの可愛らしい感じだ。


「ちょっとナナ今日は帰りなよ。映画は逃げたりしないからさぁ、ね?」


「嫌だっ!私はどれだけこの日を楽しみにしていたか!!俳優のジョナン・ケドウィッチが舞台挨拶なのよっ!!

あ〜ジョナン様どれほどこの時を待ち望んだか...。てか、マキはなんで風邪引いてないのよ!!一緒にあんだけ濡れてたのにっ!!世の中ってホンっとに不公平っ!!」



マキと呼ばれた少女はナナより若干背が高く、黒髪の黒い瞳で肌色はほのかに褐色のオリエンタルな感じの美人だ。




「不公平って...。しょうがないじゃん。引かないものは引かないんだし。」



ナナの言葉に少々呆れた感じで言い放つ。



「あーっ!!もうこんな時間っ!!!マキ行こうっ!!私のジョナンまっててねっ!!」



「ナナそんなに急がなくてもっ!あっ!ちょっお会計っ!!」



バタバタと店を出ていくナナ、会計を素早く済ませて後を追い掛けるマキ。その様子をサングラスをかけスーツを着た、いかにも怪しい男が二人を店の中から見ていた。



「マリア聞こえるか、漆黒の魔女を見つけた。魔力計のデータからして間違いない」



「フフっ。そうね。送られてきたデータに間違いなさそうね。引き続き目標を追ってちょうだい。」



「了解。」



男はサングラスの真ん中を指でもちあげるとクールに店の外に出た。



「漆黒の魔女か...。生きた伝説だな。」


男がクールさを出して歩き始めると後ろから店員に呼び止められた。



「お客様、お会計が未だなんですが...。」



「んっ?あぁ、すまない。これで足りるだろう。釣りはいらない。」



男が歩き出そうとするとまた店員に呼び止められた。



「いえ、あのぅ、まことに申し訳ありませんが後50ディータ足りのですが...。」



「あっ、そ、そうなのか...。これで足りるだろう。すまなかった」



男の顔はサングラスで多少隠れているとはいえ狼狽し、赤くなっているのはよくわかる。



「確かに頂きました。ありがとうございます」



男は店員に見送られ歩き出した。



「おのれ漆黒の魔女めっ!」



やり場のない恥ずかしさを男は目標へと向ける。


「フフフっ!ちょっとダイ。コントはその辺にしてちゃんと追ってちょうだい。」



笑いながらマリアは男に話し掛ける。



「くっ、了解。」



通信が全てマリアに筒抜けということで恥ずかしさが余計にこみあげる。







「うっわーっ凄い人だかりっ!!やっぱりジョナン様の人気は絶対的だわっ!!」



目を輝かせナナは胸をワクワクさせている。



「ハァハァ...。ちょっとナナいくらなんでも飛ばしすぎ。付いてくのがやっとだよ。ホントにジョナン好きなんだねぇ。」


後ろから追いかけてきたマキは今にも息切れで倒れそうだ。


「やっぱり映画っていったらポップコーンっ!おっちゃん二つ頂戴!!それとメロンソーダ二つねっ!!」



「あいよっ!」



映画館の売店に似合わない風貌をしている髭の濃い中年は元気に答え注文の品を渡す。



「はいっ!マキっ!」



「サンキュー。ナナ。」


マキはナナからメロンソーダを手渡されグイッと飲み干した。



「あ〜生き返った!もう一つ買ってくるね。」



マキが飲みものを買ってくると、二人は鑑賞ホールへと入って行った。






「ヒッ!グスっ!やっぱりテレビシリーズもよかったけど映画でも泣かせるねぇジョナン様は...。」



「うん...。グス...。かなり泣けるね。」



ナナもマキもラブロマンス映画に見入って感動の涙を流していた。



「これより主演のジョナン・ケドウィッチさんより舞台挨拶があります。」



明るくなった鑑賞ホールにアナウンサーが幕の前に立ちアナウンスをした。

一人長身の男が舞台上手から昇ってきた。



「キャーっ!ジョナン様!!」



女性客から口々に黄色い声援が沸き上がる。負けじとナナも声を張る。



「私のジョナン様ぁ!こっちみてーっ!!いや〜ん!どうしようっ!!目が合っちゃったぁ〜!もう私っ!!この世の中に思い残すことはないわぁ〜」

そんな熱狂しているナナの様子にマキはいつものことかと呆れて溜息をついた。



「皆さん今日はありがとうございます!僕の映画を気に入ってもらえたみたいで嬉しいです!」



ジョナンが挨拶をしていると外が騒がしくなってきた。



「なんなの?!なんか爆発音が聞こえなかったマキ?」



さすがに熱狂していてもその音だけはナナにも他の客にも聞こえたようだ。



「ナナここにいてっ。

まっずいなぁこんな時に来るなんて。協定も何もあったもんじゃない。」



マキが席を離れようとすると、ドアが勢いよく開いた。



「漆黒の魔女よ出てこいっ!!外は完全に包囲したっ!!おとなしく我々と来てもらおう!!」



兵士と思われる格好をした者達はみな手に楕円計をした銃らしきものを着けている。


「ちょっ...ちょっとなんなのあいつらっ?!」



「ナナ落ち着いてっ!」


訳もわからず騒いでるナナに対してマキは冷静だ。



「私は外にでるけど、ナナは此処で動かないで大人しくしててね良いっ?!」



「ちょっと!ちょーっとっ!なんなのマキどこいくのよ!!」



一方的にナナに言い放つとマキは後ろの客席を跳び越え、あっという間にドア付近へと着地した。


「私の力が欲しいんでしょっ!!ならついてきなっ!!」


目の前の兵士に告げるとマキは密集に近い兵士達の間を物凄い速さでくぐり抜け、映画館の外へと走り出た。



「漆黒の魔女だっ!!追えっ!!」



沢山の兵士達が映画館の所々から出てくる。まるで蟻の巣のようだ。



「何これっ?!」



マキが外にでると、あちらこちらに煙りが立ち込め沢山の兵士が倒れていた。まるで地獄絵図のごとく血の海だ。どこかの部隊が今いる兵隊達と先にやりあったようだ。どうやら爆発音はそれだったらしい。



「漆黒の魔女よっ!大人しく我々と来ていただこう!!」



兵隊の隊長らしき男がマキに言い放つ。



「もし大人しくできなかったら?」



人通りを確認しマキが軽く左目でウインクしながら答える。

どうやらひと暴れするつもりだ。



「生け捕りが目的だが貴様がそのつもりならこちらとて力ずくだっ!!」


刹那。マキが左手から魔弾をうちこんだ。



「パキューッ!!」



一人の兵士が直撃を受けて吹っ飛ぶ。



「撃てっ!!」

「ダラララッ!!」



それが皮切りに隊長の合図とともに戦闘が開始された。マキにむけて敵兵の腕に装着された銃の様なものから一斉に魔弾が打ち出された。



「がっはははっ!どうだっ!新型の魔ガンの威力はっ!!漆黒の魔女でもちとやりすぎたかなっ?!」



敵兵の放った魔弾はマキに全て直撃し、隊長は勝ち誇っていた。しかし、立ち込める煙りと焼けた臭いを風がさらうと、無傷のマキが姿を表した。


「ずいぶんご満悦のようね?けど残念。私はそんなヤワじゃないわよ。」


魔法障壁を張り攻撃を全て無効可し、マキは氷のような微笑を浮かべ隊長をみた。蔑んだ目で。



「なっ!なにっー!!うっ!撃てーっ!!」



慌てた攻撃命令により再び魔弾が一斉に打ち出される。



「ヒュインっ!!」


マキはとてつもなく速いスピードで空へと上がり攻撃をかわす。



「私の番ねっ!!フレイムマシンガンっ!!」



空中で魔法を唱えたマキの両手からいくつもの炎の弾丸が地上の敵兵へとくりだされる。



「バラララララッ!!」


「グワッ!」


「グハっ!!」



口々に地上の敵兵から断末魔が聞こえる。だが、マキは攻撃を辞めない。


「ライトニングバズーカっ!!ハイフレイムグレネードっ!!」



激しい爆発音と共に地上から煙りが上がる。



「どう?私の魔法。武装した沢山の兵隊でもこれは少しやり過ぎたかしら?」



隊長が発した言葉をそのまま言い返した形で、マキはニヤリと笑みをうかべた。






その頃ナナは、煙りが立つ映画館のエントラスから隠れてその様子をみていた。



「マキ、変な力使えたんだ!てか兵隊が全滅っ?!あんな力があるなんて知らなかったし。とかく凄いっ!!」


マキが絶大なる力を持っていることを知りナナはただただ感心していた。




「これで終わりの様ね。さ〜てとぉ、ナナを連れてさっさっと帰りますかぁ。けどナナになんて説明しようかな...」



空中に浮かぶマキが腕を組み言い訳を考えてると、前方から声がした。



「おじょうちゃんいや、もとい漆黒の魔女さん、もうお帰りかな?これから楽しい残酷ショーの始まりなんだが。ケケケっ!」


両手両足から太く長い爪を出し、胸、腹、腕以外は紅い毛で覆われており、身長は約三メートル、猿のような顔付きの男がマキの五メートルほど前に立っていた、もとい浮いていた。



「あら。もう一人、いやもう一匹いたんだ。その胸の刻印はシュタル帝国の刻印、てことはそこのキメラかしら。」



口調は余裕の様だがマキは嫌な感じを全身で感じとっていた。



「ヒャッヒャッヒャっ!その辺のキメラ(合成生物)と一緒にするなよっ!!生け捕りが目的だが俺様が出て来た以上、死っ有るのみっ!!だが、生かさず殺さず可愛がってやるぜっ!!」



「ギュインっ!」



そのキメラはマキの顔前へと一瞬にして迫る。



「クッ!」



すかさずマキは距離を取る。だがキメラはマキにすぐ追い付く。



「やはりこいつかなり速いっ!」



マキが思った刹那。うしろから打撃が繰り出された。



「くぅっ!!」


マキが苦悶の表情を浮かべ地上へと落とされる。


「バスンっ!!!」



マキは地面へと叩きつけられたが、魔法障壁を咄嗟に張ったため直撃は免れた。しかし背中のダメージは思ったより大きく、爪のあとが深々とのこっている。マキはユラユラと立ち上がる。



「ヒャッヒャッヒャっ!まさかこれで終わりじゃないだろ?漆黒の魔女さんよっ!ケケケっ!」



キメラも地上へと降りマキと対峙している。



「コイツっ!強いっ!」


荒い息をしながらマキが呟く。



「いくぜっ!!」



キメラが攻撃をしかけた。マキもまた魔弾で攻撃をしかける。



「チュドッ!」



魔弾が命中したがそのままキメラは突進してくる。



「無駄だっ!」



マキがいる場所へ右の爪を振るう。



「何っ?!どこへ行きやがった!!」



マキはそこから姿を消しキメラの後ろに立っていた。



「炎を司りし精霊のみなよ、いま汝に求は力の根源、我と汝の力をもち総てを焼き尽くす波となれっ!!プロミネンスウエーブキャノンっ!!!」



「ゴオォォォっ!!!!!」



けたたましい炎の波がキメラを飲み込んだ。



「これで決まってっ!!」



マキが願ったが、それも虚しく。キメラはガードした腕の一部を多少焼きその場に立っていた。



「今のはちょい効いたぜっ!しかし、この程度じゃあ俺様はやれねぇなぁ!ヒャッハーっ!」



そういい放つとキメラはマキに突進した。



「グハッ!」



キメラの一撃を喰らい飛ばされるマキ。飛ばしたマキを追い、さらにもう一撃加える。地面にたたき付けられるマキ。



「グフっ!」



マキは苦悶の表情を浮かべながらキメラに髪を掴まれ持ち上げられる。



「クソッタレっ...。!」



マキが振り絞るように悪態をつく。


「どーした?漆黒の魔女さんよぉ?本当にこの程度かぁ?もっと楽しませてくれよ!ケケケっ!!」



「ザクっ!ズバっ!」



マキがキメラの爪で切り刻まれ、殴られ、服が破け体には青やら赤の痣、切り傷が次々に出来上がっていった。



「ヒャッハー!痛みで言葉も出ないかっ?!あ〜ん?俺様は最高に気持ちが良いけどなぁっ!!」


その様子を見ていたナナがマキの元へと走り始めていた。



「マキを放せよっ!!クソヤロウっっっ!!」



キメラの後ろに立ち、キレたナナが大声で怒鳴る。ナナの頬にはオオツブの涙が零れていた。



「なぁ〜んだぁ?これの知り合いかぁ?今楽しみの最中だぁ、此処から消えなぁ」


キメラの目は快感によりイッていた。



「ナナ...。」



意識を取り戻したマキがナナを見た。



「おいっ!!ゲス野郎っ!!マキを放せっつってんのがわかんねぇのかっ!!!!」



「ドンっ!」



ナナから強力な魔力の波動が発せられる。



「はぁ?てめぇヤル気かよぅ?ケヘっケヘっ!」


マキを地面に放るとキメラはナナに向き直った。


「ナナ...。もう一人のナナがバレちゃうよ...。」



「バヒュッ!シュバッ!」



空気を裂く音と共にナナの体からは漆黒の波動が放たれ、ナナの周りを囲みながら波の様にゆれて上昇しながら円を描いている。



「あんたを地獄のそこに落としてやるっ!!!」


たちまちナナの髪の色が黒に代わり、瞳の色も黒く変わった。そして頬に伝う涙が消えた。



「ドンッ!!」



今までより強い漆黒の波動を放つと、髪、瞳、服までもが漆黒に染まり、肌の色は病的な白さをもち、どこと無く不気味さを宿した。ナナがキメラを見据えていた。総てを凍てつかせる瞳で。



「まだ、昼ではないか。わらわが起きるのはまだまだ早い時間だな。」



「おまえが本物の漆黒の魔女かっ!!ケケケっ!!それだけの魔力!俺の力を最大限発揮できるぜっ!!ヒャッハー!!」


キメラはそういうと、とてつもない早さで漆黒の魔女に突進した。顔前までせまると爪を振り上げた刹那。



「バギィッ!!」



鈍い音と共にキメラが吹っ飛ばされた。漆黒の魔女の腕の一降りで。



「ん〜?何か五月蝿いと思ったら、魔獸ではないか。オマエか?わらわをこんな時間に起こしたのは?」



一撃を喰らい倒れたキメラは顔半分を吹っ飛ばされ血だらけになりながらユラユラと立ち上がった。恐怖心を抱きながら。



「ケヘ...ケヘへへェ〜。」



「ほうぅ。オマエ怯えておるのかぇ?」



完全なる漆黒の魔力にキメラは怯えている。

体は酷く震え今にも腰を抜かしてヘタレこみそうだが、その場に立ち尽くすことしか許されない。


「マキ...。」



漆黒の魔女は八つ裂きにされて倒れているマキに視線を送り呟いた。

そしてキメラに視線を戻し、話しかけた。



「のう、魔獸よ。わらわの提案なのだが、賭をしようではないか。」



キメラは怯えている中、耳をたて聞いていた。



「もしオマエがわらわに爪の先でも当てることが出来たらその女を喰らうことこの場から逃げ出すことを許そう。どうじゃ?魔獸の体の回復には若い女の血肉がさいてきじゃろうて。」



キメラは賭にもならない賭にうってでた。漆黒の魔女に己が出せる最大限の魔力で魔法を放つ。



「ケケケっ!消し飛べっ!サンダーキャノンボール!!」



とてつもなく巨大な稲妻の塊がキメラの両手から漆黒の魔女へと放たれる。



「ビギィッ!!!」



稲妻の塊が直撃し、辺り一面に衝撃が走る。キメラはニヤッと笑った。



「ヒャッハー!いくら漆黒の魔女とはいえども直撃すればただではすまないだろっ!!俺様の爪を当てにいくこともないぜっ!消しちまえばいいんだからよっ!!」



「残念だったな。」



煙りの中から冷たい笑みを浮かべながら漆黒の魔女は立っていた。



「さぁ、どうした?それで終りか?」



「へ...へへへ。」



力無くキメラは笑い、そのばに膝を着く。ガタガタと震えながら。



「よしよし。そろそろ楽にしてやろう。だがその前にわらわの余興に付き合ってもらおう。」



「ドンッ!」



「ヒギャーッ!」



衝撃音と悲鳴と共にキメラの右腕が吹き飛ぶ。そして次々にキメラの四肢が飛ばされる。



「ア.ア.アガっ。アガ...。」



キメラは白目を剥きながらヨダレを垂らしている。吹き飛ばされた腰から下は内臓が垂れ下がり血が滴っていた。



「どうじゃ?最高の快感じゃろ?」



ビクッ!ビクッ!と痙攣するキメラを漆黒の魔女は髪を掴み持ち上げながら恍惚の表情を浮かべる。



「フッ!散れっ!」



一瞬にしてキメラが跡形もなく吹き飛ぶ。



「マキ。」



漆黒の魔女はマキへと歩み寄り、膝をつき抱き抱えると体を優しい光で満たした。するとマキは目をうっすらと開けた。



「リュシュフィア...。」



「気がついたかぇマキ。あまり喋るでない。本部へ戻るぞえ。」


「ポァ」


そう言って漆黒の魔女、リュシュフィアはマキを魔法で眠らせて抱き抱え立ち上がった。しかし、それと同時に先程から気がついていた気配へと声をかけた。



「おぬし、先程から、わらわの余興を見物しておったが何者じゃ?攻撃をしかけてこないところをみると敵ではなさそうだが。」



「気がついていたか漆黒の魔女よ。素晴らしい魔力だ。」



リュシュフィアのほぼ10メートル先にサングラスにスーツの男、ダイが立っていた。リュシュフィアは振り向き視線をダイへと向ける。



「私はダイ、とある組織からおまえの監視を任された。もしその力を暴走させたその時は私の全魔力と力をもっておまえを潰すように依頼されている。」



「ほう。このわらわを潰すとな。面白い試してやろう...と言いたい所だが、こちらとて今は怪我人を抱えておる。次に会う時はその力とやらを見せていただこうではないか。」



「その時はお手柔らかにな漆黒の魔女よ。」



言ってダイは瞬時にその場から姿を消した。



リュシュフィアが右目でウィンクすると、そこらじゅうの死体と残骸が消えた。そしてリュシュフィアも姿をあっという間に消した。







「お疲れ様!リュシュフィア!!って...マキっ!どうしたのっ?!」



「ナギサそんな心配しなくても安心せい。マキは疲れているだけじゃ。」


ナギサと呼ばれた少女は金髪のロングヘアーに碧い瞳の絵に描いたような美少女だ。この組織のオペレーターをしている。


「仮眠室にマキを寝かしてくる。ブライトにはそこの三号室に来るように伝えてほしい。」



「解ったわ!リュシュフィアも少し休んだほうが良いわ。まだ早い時刻だし。」



柔らかな笑顔でリュシュフィアに伝える



「あぁ。そうさせてもらうかのう。」



リュシュフィアとマキが所属している組織は

「七色の翼」という組織である。当然のことながらナナは知らない。




リュシュフィアは仮眠室へとマキを運びベットに寝かせた。



「良い寝顔じゃ。後はゆっくり休み疲労をとるのじゃぞ。」



「マキの容態はどうだ?リュシュフィアよ。」



「ぉお。ブライトかぇ。マキはシュタル帝国のキメラに少しばかし痛い目に遭わされたが、わらわが処置を施したから心配は要らぬぞぇ。」



リュシュフィアは漆黒の魔女と呼ばれるには似合わない優しい笑顔を見せる。


ブライトと呼ばれた彼は七色の翼の所長であり、この世界では五本の指に入る高位魔導士である。また白兵戦にも優れている。



「ブライトとよ。協定が破られたようじゃの。」


「あぁ。世界の全ての国が協定を破りおまえの力を欲している。」


「わらわを力ずくで押さえ込むことなど笑止千万じゃ。わらわは己が好きなようにするだけじゃ、人間ごときがわらわを左右することなどできん。愚か者どもめが。」



リュシュフィアは妖しく笑いながら言った。



「己が好き勝手やるか...。怖いものだな。」


ブライトは口元に笑みを浮かべながら言ったが世界のことを考えるといつ状況がひっくり返るかと心底心配だ。



「わらわはもう寝るぞ、わらわの中のもう一人にそろそろ置かれている状況を説明してはどうじゃ?」



リュシュフィアは悪戯っぽく笑う。



「あぁ。こうなってしまった以上伝えない訳にはいかないだろう。」



「がんばって伝えるんじゃぞ。ブライト。フフフ。」



ふっ...とリュシュフィアが眼を閉と栗色の髪の毛、健康的な肌の白さをもつ少女に入れ代わった。意識を取り戻していないナナは、その場に崩れ落ちそうになるところをブライトに支えられる。


「この世界の明暗がこの一人の少女とリュシュフィアに委ねられているとは...。」



ブライトはナナを抱き抱えると部屋から出ようとしたが後ろから呼び止められた。



「所長...。」



意識を取り戻したマキはブライトを呼び止めた。


「マキ、眼が覚めたか。」



マキは力無く上体を起こしている。明らかに疲労を感じさせる。



「所長。ナナをこちらに...。」



「マキ、無理はするな。いくらリュシュフィアの魔力で傷が癒えたとて体に負担が掛かっているのは誰が見てもわかる。」


ベットを空けようとするマキをブライトは止めた。



「しかし、所長っ!私はナナに伝えなくてはならない事がありますっ!そして何より、友人として側にいたいんですっ!!」



マキの体は相変わらず力の無い様子だが、瞳には力強さを感じさせられる。



「まだ当分の間はナナは目覚めないだろう。ナナをここに置いてはおまえは寝ずに付き添うことになる。今は二人ともゆっくり休むのだ。いいな?」



「しかし、所長っ...。」



ブライトの眼とマキの眼が合うとマキはそのままゆっくりと瞳を閉じた。


「今はゆっくり休むのだ。マキよ、おまえはナナとリュシュフィアの間にて掛け替えのない存在なのだ。そして私達、七色の翼と全世界にとってもな。」



ブライトは優しい笑みを浮かべるとナナを別の仮眠室に運んだ。






「わらわの声が聞こえるかナナよ。」



「誰....なの?」



ナナは辺り一面真っ暗な場所にいた。まさに漆黒の空間というべきところであろう。リュシュフィアの声だけが独り佇むナナの心に響く。



「わらわはリュシュフィアじゃ。お前とこの体を共有するものじゃ。」



「体を共有?!えっ?どういうことっ?!」



ナナはリュシュフィアの言葉に困惑を隠せない。リュシュフィアは続ける。



「今からそう、200億年前にもさかのぼるが。全世界と漆黒の魔女との大きな戦争があった。全世界の八割は漆黒の魔女の手によって滅び、誰もが世界の滅亡を覚悟していた。その時じゃ、異界の女神、黄昏の女神が漆黒の魔女と対峙した。二人の戦いは休みなく、ひとつき以上続いた。その地を揺るがし空を割るような戦いの最後は漆黒の魔女を黄昏の女神が何者かの体に封印することにより終止符をうった。」



何がなんだか解らぬままナナは聞いていた。

しかし、話の内容から確信したことを聞いてみた。



「あ〜、よくわからないけど、私の体を共有ってことは、その漆黒の魔女ってリュシュフィア、あなたってことね。そして封印した何物かの血が私に流れているのね。」



「いかにも、魔界の王リュシュフェルの娘、人間が挿す漆黒の魔女とはわらわのこと。そしてわらわが封印されたのはおぬしの血族じゃ。」



大人しく落ち着いた言い回しでナナに話す。そしてリュシュフィアは続けた。


「しかしながら、その封印の力は200億年経ち弱まった。そしてわらわがおぬしの体と一体となり表面に出ることが可能になったのじゃ。」



話を聞きながらナナは不安に満ちた表情を浮かべ、リュシュフィアに質問をした。



「リュシュフィア。もう一度この世界を滅亡に導くつもりなの...?そんなの...絶対に嫌だよっ!嫌だ...!マキや友達...この世界が無くなるのは絶対にイヤっ!!」



ナナの瞳から大粒の涙がボロボロと流れ始めた。


「ハハハっ!心配することは無い。わらわは今のところそのつもりは無い。」



リュシュフィアはナナに告げた。温かい声で。



「本当に?!絶対っ?約束してくれるの?」



ナナは泣き止み笑顔の中に不安を隠しきれないがどことなく安心の表情を浮かべ、リュシュフィアに問いた。



「絶対じゃ。今のところだがな。今のわらわは世界を滅亡に導くのは飽きておる。」



「ぶーっ!飽きたとかじゃないでしょっ!もうダメだよっ!!絶対にダメだからねっ!!」



ナナは膨れっ面をして姿の見えぬリュシュフィアに言った。



「わかったわかった。ハハハっ!おまえは面白い奴じゃのう。わらわはおまえの幼き日より見ておるが、その様な所はかわりないのう。」



「うっ。子供の頃から変わってないってちょっとショック...。って子供の頃から私を知ってるの?」



ナナは驚きながらリュシュフィアに質問した。



「だから先程から申しておるではないか。わらわとおまえは同じ体だと。心底人の話を聞かない奴じゃ。」



リュシュフィアは呆れた口調で言う。



「ん?どうした?少し落ち込んだかぇ?」



へこんでいるナナをみてリュシュフィアが言葉をかける。



「マキにも同じことよく言われてる...。」



日常を思い出し、へこむナナ。リュシュフィアは笑いながら話し出した。


「こりゃ愉快じゃな、腹がいたい。こんなにわろうたのはどのくらいぶりじゃろうて。」



「そんなに笑わなくても良いじゃない!バカっ!!」



「まぁ落ち着け。ところでナナ、おまえ魔力が欲しくないか?」



「えっ?」



リュシュフィアの唐突な問いにナナは一瞬話しが理解できなかったが、リュシュフィアは続ける。


「今回たまたま、おまえの怒りがわらわを表面化させたが、普段ならばわらわは夜おまえが寝付いた時間から、夜が開ける前の時間までしか表面化することはできぬ。今後もし、魔獸やわらわの力を欲しがる者が出た時、このままでは昼間は対応が難しいであろう。」



リュシュフィアの話しを聞いた時、ナナはマキの事を思い出した。



「昼間、マキはっ!マキは無事なのっ?!」



「もちろんじゃ。わらわが傷を癒した。そろそろ眼を覚ます頃じゃとて。ナナよ、マキを守れるくらい強くなれ。その為には魔力は欠かせぬっ!」



リュシュフィアは力強くナナに告げる。



「そうよねっ!絶対にマキを守るっ!!力を貸してリュシュフィアっ!!」



ナナもまた力強く答える。



「うむ。ナナよ眼を覚ましたらマキが今までの事を話すじゃろう。今後生きていく上で全て受け止めなければならないのは解るな?」



「うん。きっと平気。」


「ではナナよ、これからもよろしくな。わらわはもう寝る。」



リュシュフィアの気配が消えると同時にナナの意識も遠くなる。



「リュシュフィア、よろしくね...。」





ここまで読んでくださりありがとうございます。よかったら感想やアドバイスを宜しくお願いします。続きを頑張って早めに書き上げますので何とぞよろしくお願いします(^-^;

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