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「で、この兄ちゃんの具合はどうなんだミワ」

 親方は手にしたヘルメットを置くと手近な椅子に腰掛けた。

「私はただの事務員なんですけど」

 ミワはゴーグル型の端末を外して眼鏡を掛け直すと、

応急処置用医療装置(FAMD)で診た限りでは、打撲程度の外傷はありましたが他に異常はみられません。生命に別状は無さそうですね」

 そう言って寝ている男に付けていたコードを外していく。

「社長、これって残業付けていいんですよね」

 片付け終わったミワは、一つ背伸びをすると手元の携帯端末(MT)で時間を確認する。

「あぁ、ご苦労さん。流石ミワだ、助かったぜ」

 ミワは親方の言葉に満足げに頷くと、

「その内目覚めると思いますよ。お疲れ様でした、お先に失礼します」

 そう言って仮眠室を出て行った。



 目覚めた時は真っ暗だった。

 どうやらベットに寝かされているらしいことは分かったが何も見えない。

 暫くはぼんやりと虚空を眺めていたが、突如弾かれたように起き上がる。

「レースは、そうだ怪我は」

 そう言って何処も痛くない事に気付くと体のあちら此方を触り始める。

 一頻り触って怪我が無さそうな事が分かると安堵のため息を漏らすが、

「せっかくトップに立ったのに、アレは無いよな」

 そう言いながら自身の転倒事故を思い出して肩を落とす。

 ただの転倒事故にしては不可解な点があるが、終わってしまった事は仕方がない。我が身の不運を恨めしく思いながらも、大きな怪我がなかった事を不幸中の幸いとしなければいけない。

 レースの結果も気になるが、後で店長にでも聞けば分かると布団をかぶり直した時に突然部屋が明るくなった。



「よう、起きてるかい」

 陽気なダズの声が仮眠室に響くと、ベットに寝かされていた男は吃驚して起き上がる。

「あぁ、いいよいいよ、そのまま寝てな」

 そう言いながら部屋に入ったダズは、

「何処か痛い所は無いかい、と言っても怪我は打撲程度だったらしいし治療も済んでるけどな」

 と笑いかけて手近な椅子に腰掛ける。

「しかしお前さん、どうしてあんな所に転がってたんだ? それにどうやって此処まで来たんだよ」

 ダズの問いかけに、少し間を置いてそれまで大人しく話を聞いていた男が、

「――」

 聞いた事のない言語で話し始めた。

 ダズは理解不能な言葉を捲し立てる男に少々驚きながらも、

「お前さん帝国公用語が話せないのか」

 そう言うと、携帯端末(MT)を取出した。

「あぁ親方、例の兄ちゃん目を覚ましたんすけど、帝国公用語を話せないみたいです」


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