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「親方、いい加減にオートパイロットシステム乗っけましょうよ」
操縦桿を握るダズが振り返る。
「うるせぇダズ、よそ見してるとルートから外れちまうぞ」
親方は面倒臭そうに顔を上げると、
「いくら辺境と言ったってワズローンは有人惑星だ、大気圏突入時に指定ルートから外れたらあっという間に軍に蜂の巣にされちまうぞ」
そう言って手元の画面に目を戻す。
「だからこそですよ、オートパイロットなら居眠りしてたってルートから外れるなんてこと無いじゃないすか。大体何で手動操作なんすか、宇宙船修理工場の宇宙船にオートパイロットが付いてないなんて可笑しいじゃないすか」
不満そうにダズは前を向く、
「まったく、近頃の若い奴らは根性のねぇ奴ばっかりだ。オートパイロットに頼ってちゃ良い宇宙船乗りにゃなれねぇぞ」
親方の言葉にダズは再び振り返ると、
「いやいや、今時手動機なんて骨董品に乗るような酔狂な奴は居ませんって」
そう言って笑った。
「親方、何処に居るんすか親方」
工場内にダズの声が響く。
「まったく、何処に行ったんだよ親方は。携帯端末も繋がんないし」
あちら此方と探し回り、いい加減に疲れたダズは頭を掻きながら呟く。
「うるせぇダズ、何騒いでんだ」
不意に聞こえた声にダズは驚いて振り返ると、
「親方、良かった。何処行ってたんすか、大変なんすよ」
突然現れた親方に安堵の声を漏らしつつ詰め寄りながら捲し立てると、怒鳴りつけたダズに逆に詰め寄られた親方は戸惑いながらも問い掛ける。
「落ち着けダズ。どうした、何があった」
親方の問いにも、これが落ち着いていられるかと興奮しながらダズが答える。
「行き倒れです親方、行き倒れを拾ってきました」
「行き倒れ? 拾ってきたってどういうことだ」
事情の呑み込めない親方を、早く早くと急かしながらダズが引っ張っていく。
「パイロットスーツにしちゃ気密性の欠片もないな、地上用ワークスーツにしても柔軟性が無さ過ぎる。このヘルメットなんざ見てみろ、中にゃスポンジが詰まってるだけだ。生命維持装置どころか通信装置すら付いてねえ。おいダズ、一体何処で拾ってきたんだこの兄ちゃん」
壁に掛かった不可解なボディスーツと手に持ったヘルメットを交互に見ながら呆れたように親方が言うと、
「格納庫の傍です、滑走路との間に転がってたんすけど、おかしな事に辺りには宇宙船はおろか航空機も地上車も見当たらなかったんすよねぇ」
ダズはそう言って首を傾げると、仮眠室のベットに横たわる男を見下ろした。
「本当に何処から来たんすかねぇ」




