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「そうですか、あれから三百年が……」

 目覚めた皇女は自身が囚われた時の顛末を聞くと目を瞑り、皇国の為にそして自分の為にその身を挺した英霊たちに黙祷を捧げた。

 三百年という時は決して短くは無く、親方が“ドワルフ種族”という今や稀有な長命種族であった事から当時の状況を知る事ができ、尚且つ自分を知る者が三百年の時を経て目の前に居るという幸運に恵まれたのだと皇女は理解した。

「ガッサーノ少佐、苦労を掛けました」

「勿体ないお言葉。ですが姫の御身を奪還できた今、皇国再興こそ我らが悲願」

「分かっています。近衛の者達の尊い犠牲を無駄にはしません。その身を捧げ臣民を救おうとした父、そして皇国と命運を共にした者達。皆の想いは私と共にあります」

 ソファに座る皇女は、親方に頷くと柿崎達を見渡した。

「ミワ様、ダズ様、そしてカキザキ様。今の私には貴方達の功績に報いる術はありません。ですから、このような事しか出来ません」

 皇女はゆっくりと、そして丁寧に頭を下げた。

「フランタニア皇国皇女クラウディアの名において、貴方達に最大限の感謝を捧げます」

 突然の出来事に困惑する柿崎達を余所に、皇女は話を続ける。

「フランタニア皇国は既になく、なんの力も持たない女が何を偉そうにとお思いかも知れません。ですが、私は必ずや皇国を再興いたします。その為に、皆様の力をお貸しくださいませ」

「俺からも頼む。お前達の力を貸してくれ」

 皇女に続き、親方も頭を下げる。

「止めてください親方、そして皇女殿下も。俺は親方に付いて行くって言ったじゃないすか」

 その様子に慌てたダズが声を上げる。

「そうですよ親方、今更後戻りなんて出来ません。どうせやるならとことん最後まで付き合いますよ」

「皇国再興は父の悲願でもありました。非力ながら、私も……」

 皆の言葉を聞いて親方は大きく頷き、立ち上がると皇女に向き直り臣下の礼を取る。

「皆様、有難うございます。そしてガッサーノ少佐、頼りにしています」

 顔を上げた皇女の目は大いなる決意に燃えていた。

 三百年という時は経ったが、永き眠りから覚めた皇女にとっては昨夜の出来事に過ぎない。

 この間に銀河の支配者となったアズバイル帝国も、今やその屋台骨が揺らぎつつある。天帝が他界すればその後継者をめぐり、更に混乱は大きくなるだろう。

 そう遠くない時期にその機会は訪れる。ここまでくれば焦りは禁物、今は力を蓄えなければならない。

「お任せください」

 力強く頷いた親方は、柿崎達に振り返る。

「これから忙しくなる、頼むぞ皆」

 これから迎える雌伏の時に、やらなければならない事は沢山ある。

 それぞれが自分の出来る事を考え、自ら動かなければならない。

「はい」

 親方に大きく返事を返した三人は、決意を新たに頷いた。

 他国を侵略し、その権勢を振るった帝国にかつての面影はない。

 そして三百年前に失われた皇国は、今蘇ろうとしている。

 まだまだ小さな想いに過ぎない。しかし想いは力となり、力は希望を抱かせる。

 希望を胸に、皆が歩き出す。新しい一歩が今始まった。


 拙作にお付き合い頂き有難うございました。

 これにて第一部完結とさせて頂きます。

 読みづらい点も多々あったかと思いますが、平にご容赦くださいませ。

 なにぶん、本当に久しぶりに物語を描いたものですから、内容はともかく完結を目標にここまで参りました。

 この話を書き終えた後、中途半端な部分に自分でも思う所があり、このまますぐに第二部を続けようか少々迷ったのですが、取り敢えず当初の予定通り此処で一旦筆を置かせて頂きます。

 尚、第二部につきまして予定は未定でございます。忘れられた頃にひっそりと再開する事になると思いますので宜しくお願い致します。


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