36
シールドに当たったレーザービームが、閃光を放つと同時に船体を揺らす。
「ダズさん、いくらシールドが堅いからと言って少し当たり過ぎです」
「分かってますけど仕方ないでしょう。俺だって好きで当たってる訳じゃないんすよ」
残り四機にまで減らした敵の戦闘機だったが、数を減らされてからヒットアンドアウェイに切り替えた敵の攻撃に中々付いて行けず、ダークフォックスは少しずつシールドを削られていた。
「左舷来ます」
ミワの声に一瞬身を固くしたダズだったが、思っていた衝撃が来ない事を訝しく思って左舷を見ると、先程攻撃を仕掛けようとしていた戦闘機が爆散していた。
「待たせたな。半分削るたぁ上出来だ」
「親方」
通信機から聞こえる声にダズが歓声を上げた。
「残り三機だ、一気に片付けるぞ」
親方の言葉が終わるや否や、一機の戦闘機が爆散する。
「残り二機です」
ミワがパネルを操作しロックオンした戦闘機に光子誘導弾が着弾すると、同時に最後の戦闘機も爆散していた。
「殲滅完了、周囲に敵影はありません」
あっという間の出来事に、呆けるダズを無視したままミワの声が艦橋に響く。
「社長、格納庫のハッチ開放しました。何時でもどうぞ」
「了解、ご苦労だったな。今から着艦する」
ダズが正気に戻ったのは、小型貨物船が着艦した後だった。
親方は、逸る気持ちを抑えて丁寧に冷凍睡眠装置を確認する。
透明なカプセルの中には、相変わらず穏やかな表情で眠る皇女の姿があった。
敵の戦闘機を片付けた柿崎達は、予め用意しておいた隠れ家に無事帰還すると、皇女の眠る冷凍睡眠装置を降ろして覚醒の準備を始めた。
丹念に冷凍睡眠装置を確認していた親方が、周りを見渡して大きく頷く。
「よし、睡眠状態も生命維持装置も異常なしだ。これから冷凍睡眠を解除する」
パネルを操作する親方の指が僅かに震えた。
透明なカプセルの中に光が満ち始め、次第にその光が冷凍睡眠装置を覆い尽くしていく。
そしてその光が収まると、静かな排気音と共に透明なカプセルがゆっくりと開き始めた。
冷凍睡眠装置から冷気が溢れると、周囲にひやりとした空気が流れる。
神々しささえ漂うその光景に皆が目を奪われ、誰も言葉を発しなかった。
やがて冷凍睡眠装置がその稼働を完全に止めると“皇国の白い薔薇”は三百年の眠りから覚めた。
ゆっくりと瞼を開いた皇女は、一つ一つその動きを確かめるように体を起こす。
「姫、よくぞご無事で……」
皇女がその声に振り返ると、膝をつき臣下の礼を取る男の姿が見えた。
「フランタニア皇国軍、近衛隊特殊工兵部隊副隊長、グリオラ・ガッサーノ少佐であります」
頬を伝う涙を拭おうともしない親方は、永きに渡り夢見たこの瞬間に、只々頭を下げ続ける事しか出来なかった。




