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 無線機から聞こえる柿崎の声に答えた親方は、これからが本番だと気合を入れた。

 元々は軍事施設であったらしいこの場所は、秘匿されている皇女の元に辿りつくまでに、多くの隔壁を抜けなければならなかった。

 だが、その多重の隔壁に慢心したのか警備兵は殆どおらず、柿崎達はその隔壁を親方が次々と解除していき、程なく皇女の元へと辿りついた。

 飾り気なく無機質な機材に囲まれたその部屋は、まるで何かの実験室のようでもあり、中央に設置された淡く光るカプセルがその異様さを際立たせていた。

「……姫」

 親方がカプセルに歩み寄る。

 ゆっくりと、しかし一歩一歩その足取りを確かめるように歩を進める親方の目は、透明なカプセルの中に横たわる、一人の人物に吸い込まれるようにただ一点を見つめていた。

 穏やかな表情で眠るその人物は、かつての“皇国の白い薔薇”と呼ばれた美貌もそのままに、静かにその身を横たえていた。

「姫、姫……。あぁ、漸く……、漸く姫を……」

 透明なカプセルにそっと手を置き、崩れ落ちるように跪いた親方の頬を涙が伝う。

 無機質で飾り気のなかったその部屋には、ただ親方の嗚咽の声だけが響いていた。

「社長、緊急事態です。警備隊と思われる戦闘機がそちらに接近中、総数九機。ダークフォックスはこれより援護に降ります」

 まるで時が止まってしまったかのようだった部屋が、突然無線機から聞こえたミワの声で現実に引き戻された。

「なんだと。ミワ、なるべく此処に近寄らせるな。無理はしなくて良い、落とせる分はそっちで落としといてくれ」

 瞬時に切り替えた親方が次々に指示を飛ばす。

「畜生め、此処で姫を覚醒させてる暇はねぇな。カキザキ、冷凍睡眠(コールドスリープ)装置ごと小型貨物船(ミニカーゴ)に積み込むぞ」

 手際よく冷凍睡眠(コールドスリープ)装置を取り外していく親方を残して、柿崎は小型貨物船(ミニカーゴ)へと走った。

 


 柿崎達が皇女を運び出している頃、ダズとミワは衛星軌道上から一気に降下して、迫り来る戦闘機に襲いかかっていた。

「ダズさん、右に五機、左に四機です」

「無人戦闘機とドッグファイトなんて聞いてないすよ。俺はカキザキじゃないんすから、無茶言わないでください」

 ミワの指示に、悪戦苦闘しながらもダークフォックスを操っていたダズが泣き声を上げると、ダズを無視して対空速射ビームで弾幕を張りながら光子誘導弾を操っていたミワが声を上げる。

「一機撃墜」

 ミワは続けてパネルを操作して標的をロックオンすると、光子誘導弾を放つ。

「続けて一機撃墜、残り七機です」

 立て続けの撃墜報告にダズが歓声を上げながらミワを振り返る。

「ミワさんすげぇ。俺なんかよりミワさんがダークフォックス(この船)操縦した方がいいんじゃないすか」

「ダズさん、今は戦闘中です。よそ見しないでください」

 冷静なミワの声にダズが慌てて前を向く。

 そんなダズにミワの冷たい声が届く。

「私はただの事務員ですから」


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