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漆黒の宇宙を音も無く進む宇宙船は、闇に紛れて視認する事は難しい。
光の無い世界は誰の味方をする事も無いが、少なくとも彼らの敵ではなかった。
「間もなく惑星ダドリアがレーダー圏内に入ります」
落ち着いたミワの声が艦橋に響く。
惑星ダドリア。ダンドーラ星系の辺境外縁にあり、大気は無く恒星の恩恵も殆どない無人惑星。元々は数種の鉱石を採掘できた資源惑星であったが、資源が枯渇して以後は放置され他領との境界線と化していた。
「元々惑星ダドリアは無人惑星だから帝国軍は常駐してない上に、今ならダンドーラ辺境伯家の警備兵も殆ど居ない、最低限の人員を残して惑星ダンドーラに召集が掛かってるからな。だが、この時を逃せば警備は帝国軍に引き継がれる。そうなればもう下手な手出しが出来なくなるどころか、姫の身が危ねぇ。やるなら今だ、必ず姫を救い出す」
漆黒の宇宙を映し出すメインモニターを睨みつけながら、親方が拳を握りしめる。
「作戦通りにいくぞ。ミワとダズはダークフォックスで衛星軌道上に待機、何時でも動けるようにしておいてくれ」
親方の言葉にしっかりと頷くミワとダズ。
「カキザキは俺と惑星ダドリアに降りて姫の救出だ。ブラックホーネットが使えりゃ良いんだが、最悪冷凍睡眠装置ごと回収しなけりゃならん。小型貨物船にも武装は取り付けてあるが、万が一の時はカキザキ、お前の腕が頼りだ」
任せてくださいと柿崎が笑顔を見せる。
一人一人の顔を見渡した親方はゆっくり頷くと決意を固めた。
「よし、行くぞ」
滑るように地表を進む小型貨物船は迷いなく目的地を目指す。
「カキザキ、間もなくだ。正面に山が見えてくる、その中腹に目標施設がある」
緊張感を帯びた親方の言葉は柿崎にもその緊張を伝えた。
事前の親方の言葉通り、ここまでは何の問題も無く進めたが、いよいよ敵陣に突入する事になる。
「見えました。目標到達まで凡そ五分」
「警備兵は殆ど居ない筈だが、まずは入口周辺を制圧するぞ」
「了解」
柿崎の言葉を最後に二人の間に沈黙が流れる。
静かに進む小型貨物船が確実に目的地に近づいていく。
「目標左右に対空砲が二門ずつ、右手奥に監視塔あり」
「一気に潰すぞ」
沈黙を破った柿崎の声に、親方が即座に反応した。
地表ギリギリを飛ぶ小型貨物船が目標施設に迫ると、親方謹製の小型光子ミサイルが対空砲に吸い込まれていく。
一発の反撃も許さず四門の対空砲を沈黙させた親方は、続けて監視塔に小型光子ミサイルを叩き込む。
一瞬で周囲を制圧した小型貨物船を入口ゲートに着陸させると、親方がゲート横の制御盤に取り付きあっという間にゲートを開く。
「流石ですね親方」
親方の鮮やかな手腕に柿崎が感嘆の声を漏らす。
「昔取ったなんとやらだな」




