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「カキザキ、お前にはもう一つ見せたい物がある」
一通りダークフォックスの船内を見せて回った親方が、とある扉の前で立ち止まる。
「何々、何すか親方」
先程から、船内のあちら此方で感嘆の声を上げ続けていたダズが親方に反応する。
「お前じゃねぇよ」
親方は笑いながら扉を開いた。
「おぉ」
驚くダズを無視して中に入った柿崎は、一機の戦闘機を目にする。
「ブラックホーネット。お前用に仕上げた機体だ」
「綺麗な戦闘機ですね」
親方の言葉に改めて戦闘機を見上げる柿崎。
ダークフォックス同様漆黒に染められたその機体は、全体を通して滑らかな曲線に覆われていたが、柿崎は鋭利な刃物の様な印象を受けていた。
「こいつにも新型の光子核融合炉が積んである。かなりピーキーな機体になっちまったが、お前なら扱えるだろう。まぁ、ダークフォックス含めてもう一度調整し直すがな」
「楽しみですね」
振り返った親方に柿崎が微笑んだ。
「ところで親方、特殊工兵部隊ってどんな部隊なんですか」
柿崎達は事務所に戻り、今後の予定を話し合っていた。
まずは新型機の調整を終わらせる。これは一からの調整ではなく、以前のシミュレーションデータを叩き台に出来る為そう時間は掛からない。
必要な物資の積み込みと情報収集に関しては、既に親方が準備して居た為多少の追加で済んだ。
そして宇宙船修理工場の方は、幸いな事に今受けている依頼は無く、取引先に挨拶状を回してそのまま閉める事にした。
「簡単に言やぁ何でも屋だな、宇宙船や設備の整備から敵陣に乗り込んでの拠点作りまで。近衛隊にやれと言われた事は何でもやってたな」
「なんすかそれ、殆ど特攻隊じゃないすか」
「うるせぇダズ、てめぇは黙ってろ」
昔を思い出して懐かしむ親方は、それは凄いと騒ぐダズに拳骨を落とした。
「取り敢えずカキザキ、明日から機体の調整に入るぞ。特にブラックホーネットはお前専用の機体だからな、全部お前の好みに合わせてやる」
頭を抱えて蹲るダズを無視して親方は話を進める。
「ミワは補充物資の確認と情報収集を頼む。宇宙船修理工場を出た後の隠れ家は何か所か用意してあるが、この先どうなるかは分からん。暫くは表に出られなくなる可能性もあるからな」
忙しくなるぞと気合を入れた親方は、表情を引き締めると三人に向き直る。
「分かっているとは思うが、これらは全て極秘事項だ。相手が誰であろうと一切漏らすな。特にダズ、お前はこれから外には出るな」
分かってますよと憤るダズに、親方は満足そうに微笑む。
「そう長い時間じゃない。あまり時間を掛けてもいられないからな」
親方の言葉に三人は力強く頷いた。




