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射程に入るや否やありったけのレーザービームを撃ち込んでくる敵艦に、まるで気にしていないかのように距離を詰めていく柿崎は、絶え間なく撃ち込まれるレーザービームを全て躱しながら、一つ一つ宇宙船の挙動を確かめていく。
「調子は良さそうだなカキザキ。だが展開次第ではこの後どうなるか分かんねぇんだ。安全マージンはしっかり取っとけよ」
思い通りの反応を見せる宇宙船に思わず笑みを浮かべていた柿崎は、親方の声に表情を引き締めると返事を返す。
「分かってます。ちゃんと余裕は見てますから大丈夫ですよ」
頼りがいのある柿崎の言葉に満足げに親方が頷く。
「社長、七番艦から通信“もう少し速度を抑えてくれ、付いていけない”以上です。実際に大分距離が開いています。こちらに付いて来ていません」
敵の攻撃を掻い潜りながら速度を上げて進む柿崎に対し、躱しきれない攻撃をシールドに受けながら慎重に進む七番艦。
「仕方ねぇな。だがまぁ普通はそんなもんだろ、無理しねぇ様に言っとけ。カキザキ、七番艦の射線に入らない様に回り込め、挟み込めれば上出来だ」
「了解」
柿崎は親方の声に頷くと速度を上げた。
敵艦の注意を引き付けつつ背後に回り込もうとする柿崎達の宇宙船に、絶え間なく撃ち込まれるレーザービーム。
危なげなくそれらの全てを躱していく柿崎は、予想以上の仕上がりを見せている宇宙船に満足していた。
「二番艦に直撃弾、シールドブレイクです」
順調に敵艦との距離を詰めていた宇宙船の艦橋に突然の悲報が入った。
冷静に悲報を伝えたミワの声にダズが悲鳴を上げる。
「ちょいとやべぇな」
親方が前線の戦況に顔を顰める。
このままではダンドーラ辺境伯軍の三隻の戦闘艦で支えていた前線が間違いなく崩壊する。
「ミワ、前線で変化があったらすぐに知らせろ。カキザキちょいと急げよ、嫌な予感がする」
「敵武装商用船に直撃弾、シールドブレイクです」
ミワの立て続けの報告に、ダズが今度は歓声を上げる。
「うるせぇダズ、てめぇは黙ってろ」
親方の怒鳴り声に、再びダズは両足を抱えてシートに丸くなる。
「二番艦撃沈、同時に敵武装商用船撃沈」
味方艦の撃沈報告に思わず舌打ちをする親方。敵艦を撃沈したのは良いが、今のままでは此方が不利な事には変わりがない。
「義勇軍五番艦、六番艦に前進命令が出ました。二番艦の穴を埋めるようにとの事」
「やっとまともな指示を出しやがったか」
現時点で戦力比は四対三、武装商用船が入るとはいえ数の上では此方が有利になる。更に旗艦を含めれば五対三、そうそう負ける事は無いだろう。
そう考えた親方の耳に、俄かには信じ難い報告が入る。
「義勇軍五番艦反転、旗艦を攻撃しています」
「何、どう言う事だ」
「五番艦が裏切りました、宇宙海賊に内通していた物と思われます」




