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 通常時であれば貴族や中央政府は民間人など気にも掛けない。しかし、政情不安が囁かれるこの時期に不穏な動きを見せていたダンドーラ辺境伯家を潰せる材料になるならば、中央政府が喜んで飛びつくであろう事は想像に難くない。

 ダンドーラ辺境伯が中央政府を気にするあまり、自軍の戦力のみに拘り続けた結果が現状の劣勢を招いていた事は火を見るより明らかであった。

「しかし、宇宙海賊もよく正面から迎え撃ちましたね。あれだけ大っぴらに徴集掛けてれば、こっちの戦力より自分達が劣るのは分かっていたでしょうに」

「まさか、こうなる事が分かってたんかな」

「まさか。でも何か考えてるんじゃないかな」

 前回は商用船を偽装するという搦め手を使ってきた宇宙海賊が、今回は正面から力比べをしている事に違和感を感じる柿崎。

「いずれにしても、このままじゃ不味い事に変わりはねぇ。最悪ウチの宇宙船(ふね)だけで宇宙海賊共(やつら)と戦わなきゃならないかも知れなねぇな」

 冗談めかして笑う親方にダズが悲鳴を上げる。

「止めてくださいよ親方、冗談じゃないすよ」

 両足を抱えてシートに丸まるダズを見て親方の笑い声が大きくなった。

「八時方向にレーダー反応有、識別コード確認出来ません」

 艦橋に鳴り響く警告音にミワの鋭い声が重なる。

「ミワ、旗艦に緊急通信だ。それと帝国の共通帯域で警告を出せ。カキザキ、出番だ。ダズ、てめぇは黙って静かにしてろ」

「了解、何時でもどうぞ」

「レーダー解析完了。艦影一、戦闘艦です」

「戦闘艦だと」

 前回の戦闘からそう時間が経っていないにも関わらず、二隻目の戦闘艦を増強させていた宇宙海賊に親方が唸る。

「旗艦より返信“現在確認中、勝手な行動を取るな。指示あるまで待機せよ”以上です。……社長、もう帰っていいですか」

 一刻を争う筈の事態が、あまりにも稚拙な旗艦司令部の反応で先程までの緊張感が一気に霧散する。

 シートに凭れて脱力するミワに苦笑いの親方と柿崎。

 ダズまでもが苦笑いを浮かべ、弛緩した空気が艦橋に漂う。

「親方、どうしましょう」

「さっきの冗談が冗談に思えなくなってきたな」

「所属不明艦急速接近中、未だ警告に対する返信はありません」

 今しがた脱力していた筈のミワの冷静な声で、緩んでいた艦橋の空気が再び緊張する。

「旗艦司令部は何してやがんだ、寝てんじゃねぇだろうな」

 親方の怒鳴り声が艦橋に響く。

「旗艦より通信“義勇軍七番艦及び八番艦(本艦)は後方の敵艦迎撃に向かえ。これ以上敵の接近を許すな、即刻撃破せよ”……以上です」

 ミワの声色が呆れを通り越してその表情を失くすと、親方の怒鳴り声が更に大きくなった。

「まったく、どの口が言いやがる。カキザキ、反転全速だ。ミワ、七番艦に連絡“本艦が先行する、援護を頼む”以上だ」

 了解と返事を返した柿崎は宇宙船(ふね)を反転させるとブースターを全開にした。


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