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『間もなく惑星ザイラークが見えてくる、陣形を整えよ。獅子は兎を狩るにも全力を尽くすという、くれぐれも油断するでないぞ』
勇ましいダントーラ辺境伯の姿をメインモニターが映し出す。
「なんでしょう、この胸に大きく広がる無力感は……」
「まぁそう言うなミワ。ダンドーラ辺境伯だって本当は怖くて仕方ない所を無理やり虚勢を張ってんだ。可愛いもんじゃねぇか」
無表情で脱力しているミワに、親方が笑い掛ける。
「何でそんなに余裕なんすか、これから戦闘なんすよ」
ミワと親方の遣り取りにダズが噛みついた。
「ダズ、せっかく親方が残ってろって言ってくれたのに何で一緒に来たの」
「一人だけ取り残されんのは嫌なんだよ。てか何でカキザキまで落ち着いてんだよ、むしろ楽しそうにしてんのは何でだよ」
「何でと言われても……。折角改造したんだし、やっばり“実戦での走り”を見てみたいじゃない」
柿崎はダズに笑顔を見せる。
今回が微調整を終えた宇宙船の初航海となるのだが、誰よりも楽しみにしていたのは柿崎だった。
戦闘が行われる事については柿崎にも色々と思う所も有ったのだが、それ以上に宇宙船の仕上がりが気になった。
シミュレーションでの調整段階から、柿崎の思い通りの調整をしてくれた親方の腕は流石に確かだった。
打てば響くとはこの事で、自分の理想を実現してくれる親方が居るのだ。自分としては期待に応えなければならない。
柿崎は、満足いく仕上がりをみせたマシンで臨むレース前のように気分を高揚させていた。
「十二時方向にレーダー反応有、識別コード確認出来ません」
突如艦橋に鳴り響く警告音にすぐさまミワが反応した。
「来やがったな、戦闘準備だ。カキザキ、戦闘体制に移行だ、武器管制システムはこっちにまわせ」
「戦闘体制に移行します」
「レーダー解析完了。艦影四、戦闘艦三隻、武装商用船一隻」
「奴ら戦力補充してんじゃねぇか」
「武器管制システム起動、管制権限委譲します」
「エネルギーシールド展開完了」
「戦闘体制移行完了、システム準備完了」
警告音によって弾けたように動き始めた艦橋が一通り落ち着くと、親方がミワに周囲の確認をする。
「ミワ、周囲に艦影は」
「周囲にレーダー反応はありません」
「ニ隻補充とは大したもんだな、しかも戦闘艦まで増やしてやがる」
「ダンドーラ辺境伯軍の情報収集能力はどうなっているのでしょう」
事前情報では敵戦力は戦闘艦二隻のみであり、敵の戦力補充は考慮に入れなくて良いとの話であったが大きく違う話にミワが溜息をつく。
「旗艦より緊急通信“十二時方向に敵発見、総員戦闘配備に付け、周囲の警戒を怠るな”以上です。……いくら何でも反応が遅すぎませんか、仮にも軍隊ですよね」
立て続けに溜息をついたミワが大きく肩を落とした。




