20
「まぁ、オートパイロットシステム全盛の今じゃ、感覚を身に付ける事は難しいだろう。いずれにしても貴重な存在なのは間違いねぇな」
しんみりとした空気を振り払うように親方が明るい声を上げると、
「それって今はもう居ないって事じゃないすか」
親方の寂しげな様子に鳴りを潜めていたダズが大声を上げる。
「うるせぇダズ、ここに一人いるから良いんだよ」
勢いよく背中を叩かれた柿崎が小さなうめき声を上げると、
「感覚持ち用に宇宙船を改造するなんざ久しぶりだからな。腕が鳴るぜ」
嬉しそうな親方が大きく肩を振り回した。
「加速時の反応は悪くないんですけど、もっとパワーが欲しいですね。あと旋回性能をもっと高く、出来ればもっと小回りが利く方が良いですね」
シミュレーターから降りてきた柿崎が次々と改善点を上げていくと、柿崎の要望を聞いた親方がパネルを操作していく。
宇宙船自体を直接改造する前に、シミュレーターで事前に改善点とその調整方法を洗い出す。
シミュレーターに乗っては調整し、またそれを繰り返す作業に柿崎は、予選から決勝に向けてマシンを調整して仕上げていく“バイクレース”を思い出し“あの時にこれが有れば良かったのに”などと考えながらも作業に没頭していった。
実際に宇宙船の改造を始めるまでやる事のないダズは既に此処にはおらず、親方と柿崎は工場に籠りきって作業を続けていた。
そして午前中から始めた作業は休憩を挟みながらも深夜におよび、更に辺りが白み始めた頃に漸く納得出来る形に仕上がり作業を終えた。
「この齢で徹夜は流石にきついな」
大きく息を吐いて親方が背伸びをすると、
「没頭しすぎましたね」
柿崎も苦笑いを浮かべて大きく背伸びをする。
「取り敢えず今日は休みだな、後はミワに任せときゃ大丈夫だろ。カキザキ、今日はお前も帰って寝ろ。残りは明日だ」
親方はそう言うとふらつきながら工場を後にした。
そして翌日から実際に宇宙船の改造に掛かり、満足いく仕上がりを得たのはそれから一週間後の事だった。
「召集命令ってなんすか」
ダズが驚きの声を上げる。
「招集命令ではありません。参加依頼です」
「でも断る事は出来ないんすよね、だったら命令と一緒じゃないすか」
冷静に間違いを正すミワに尚もダズが噛みつく。
「でも、帝国軍に泣き付けないからといって戦闘艦じゃない民間船まで徴集するなんて、ダンドーラ辺境伯も相当追い詰められているんですね」
「今まで宇宙海賊の件で中央に散々偉そうに言ってたらしいからな、この前の失態でここぞとばかりに責め立てられてるらしい。下手すりゃダンドール辺境伯家の取り潰しも有り得るからな」




