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 三台のマシンがバックストレートを駆け抜けていく。

 一つの生き物のように連なるそれは、周回遅れのマシンを次々と飲み込みサーキットを駆け巡る。

『残すところあと三周、四位以降を大きく引き離し優勝争いはこの三台に絞られた』

 デッドヒートを続ける三台を場内アナウンスがさらに煽り立てる。

 ヘアピンコーナーからS字コーナーを抜けると最終コーナー手前に周回遅れのマシンが一台。

 先頭を走るマシンが僅かの逡巡を見せた隙にニ番手のマシンがインに飛び込む。同時にその真後ろにつけてトップのマシンをブロックするが、自らもアウトに膨らみそうになり無理やりマシンを抑え込む。

“またか”

 マシンの調子が良過ぎる所為か、コーナーワークにいつもより神経を使う。膨らみそうになったのも最終コーナーだけでニ度目になる。

 ヘルメットの中で舌打ちをするが、これで順位はニ番手に上がった。

“あと一人”

 アクセルを全開にしながら先頭のマシンを睨みつける。



「表彰台は決まったな」

「残りニ周ですからね。あとは何位でチェッカーフラッグを受けるかですね」

 男の声に答えた若い男は、

「出来ればあと一つ、順位を上げて欲しいですけどね」

 嬉しそうに呟くと持っていた缶ビールを飲み干す。

「ワークスマシンのパワーを手に入れれば、柿崎はもっと速くなりますよ」

「元々コーナーワークはずば抜けていた奴だからな、これから面白くなりそうだ」

 満足げに男は頷く。



『先頭グループが最終コーナーを立ち上がり、いよいよファイナルラップに入った』

 益々熱を帯びる場内アナウンスが佳境を迎える中、依然として連なる三台のマシンがホームストレートを駆け抜けていく。

 中々隙を見せない先頭のマシンにピタリと張り付きプレッシャーを掛ける。同様に背後から三番手のマシンのプレッシャーを感じるが、無理やりに意識の外へと追い出して前を向く。ゴールまでもう残り少ない、余計なことを考えている時間はない。

 バックストレートでスリップストリームから抜け出すと先頭のマシンに並び、ヘアピンコーナーの入り口でブレーキ勝負を仕掛ける。

 先頭のマシンを横目に、ニ台並んでヘアピンコーナーへ向けてのチキンレースが始まると“根性試し”と気合を入れてアクセルを握る。

 爆音を響かせるエキゾーストノートの中でも激しく警鐘を鳴らす自分の鼓動が聞こえる。

“これ以上は無理だ”“まだまだいける”天使と悪魔がせめぎ合う。

 一歩間違えばタイヤバリケードが待っているギリギリの駆け引きの中、歯を食いしばって耐え続けていると隣で我慢比べをしていた先頭のマシンが視界の端から消えた。

 この瞬間を待っていた。

 フルブレーキングに近い挙動で減速すると同時に体を立てて空気抵抗を受け少しでも速度に抗うと、コントロールを外れようとするマシンを無理やり抑え込みヘアピンコーナーへ飛び込んだ。


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