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「エネルギーシールド残量10%を切りました。危険水域に入ります」

 悲鳴にも似たオペレーターの声が艦橋に響く。

「総員、退艦準備」

「閣下を退避させるのだ、後の指揮は私が取る。」

 参謀長がダンドーラ辺境伯の退避を副官に命じる。

「閣下、此方でございます。お急ぎください」

 指揮官席に蹲り、怯えた表情でメインモニターを見遣るダンドーラ辺境伯を副官が急き立てる。

「わ、分かった。後は任せる。必ず奴らを殲滅するのだ」

 怯えながら立ち上がったダンドーラ辺境伯は、

「私は中央に行くのだ、新しい皇太子をお支えするのだ。私は……」

 うわ言のように繰り返すと、副官に支えられながら艦橋を後にした。

 その後ろ姿を見送った参謀長が声を張り上げる。

「良いか、なんとしても閣下が退避されるまで持たせるのだ」

「一番艦を閣下の救出にまわして、無人戦闘機に脱出艇の護衛をさせよ。二番艦と三番艦を後方の敵に回せ、四番艦はそのまま前方の敵を抑えよ」

 矢継ぎ早に出された指示で、弾けるように艦橋が動き出す。

「脱出路の確保を急げ」

「非戦闘員は早く脱出しろ」

「弾幕を張れ、敵を近寄らせるな」

 指示が飛び交い、将兵は走り回る。

「エネルギーシールド切れました、シールドブレイクです。直撃弾来ます」

 オペレーターの悲鳴を最後に艦橋から声が途絶えた。



「それでダンドーラ辺境伯は命辛々逃げ出したってよ」

 親方が呆れたように肩を竦める。

「商用コードの偽装なんて可能なんですね」

 半ば関心したように柿崎が頷く。

「通常は不可能なんだがな。まぁ腐っても宇宙海賊だ、蛇の道は蛇って奴だな」

 ダンドーラ辺境伯から依頼された戦闘艦の修理を終え、街の酒場で杯を酌み交わす三人は、先日行われた宇宙海賊討伐の話で盛り上がっていた。

「で、結局戦果は武装商用船一隻に戦闘艦がニ隻。逆に被害は戦闘母艦が一隻に九機の無人戦闘機が全滅。これってどうなんすか」

「まぁ失敗だな、ダンドーラ辺境伯は“宇宙海賊の卑劣な罠の所為だ”とか騒いでるらしいが、俺に言わせりゃあんな稚拙な罠に嵌る方が悪い」

「でも親方、商用コードが確認出来れば普通は安心しますよ」

 ダズが飲み干したジョッキを掲げてお代わりを頼む。

「うるせぇダズ、だからてめぇは駄目なんだ。大体が認識コードの確認とレーダー解析はワンセットだ。そんな事は軍艦だろうが商用船だろうが関係ねぇ、常識だ常識」

 親方は言い捨ててジョッキを煽ると、

「だが、それが出来てねぇのが諸侯軍の現実だな」

 まったく情けねぇ事だと首を振った。


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