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「申し上げます」

 オペレーターの声にダンドーラ辺境伯は手にしたカップをソーサーに戻した。

「どうした」

「はっ、七時方向にレーダー反応有、少々古い物ですが商用コードが確認出来ました」

「何、商用船が何故此処に」

「何処の所属だ」

「商用コードは間違いないのか」

 参謀たちが俄かに騒ぎ始めると、

「静まれ」

 騒がしい艦橋にダンドーラ辺境伯の声が響く。

「何故商用船がこの様な所に居るのだ、この星域は立ち入り禁止にしたはずだろう」

 苛立ち始めたダンドーラ辺境伯が大声を張り上げるが、それを宥めるように副官が答える。

「閣下、この星域の立ち入り禁止はご領地全域に通達しております。ですが、隣接する他領地では徹底されていない可能性もございます」

 ダンドーラ辺境伯は舌打ちをすると苛立ちを抑えようともせずに立ち上がり、オペレーターに向かって怒鳴りつけた。

「早急に退去勧告を出せ、従わねば命の保証はないと申し伝えよ」

 自領の商人ならばともかく、他領の商人であれば、戦闘に巻き込む前に一言通達しておかなければ後々面倒な事になりかねない。

「まったく、崇高なるこの作戦をなんと心得る」

 ダンドーラ辺境伯は、益々苛立ちを募らせるとそう吐き捨てた。

「何の為にこの私がこんな僻地まで来たと思っているのだ」

「御意にござります」

「そもそも何故私がこのような辺境の地に引き篭もらねばならんのだ。私のような優秀な者は、中央でこそ力を発揮すべきなのに。宇宙海賊如きをのさばらせる今の中央政府など、無能の集まりではないか。まったく、漸く家督を継いだというのにそのまま辺境に留め置くとは、中央政府(やつら)は何も分かっておらぬ」

 ダンドーラ辺境伯の苛立ちは、我が身の不遇から果ては中央政府批判へと発展する。

「まぁ、帝国軍が手を焼く宇宙海賊を討伐すれば、いかに無能な中央政府といえど私の力を思い知る事だろう」

「閣下のお力を持ってすれば、宇宙海賊など物の数ではございませぬ」

 副官は恭しく頭を下げると、小さく笑みを浮かべる。

「討伐の暁には新政府の要職も見えて参りましょう」

 副官の言葉に不機嫌な表情を一変させたダンドーラ辺境伯は、一瞬頬を緩ませるとすぐに表情を引き締めて副官を叱責する。

「滅多な事を言うものではない、天帝陛下はご存命であらせられるのだぞ」

「申し訳ございません」

 頭を下げた副官に大仰に頷いたダンドーラ辺境伯は、艦橋を見渡して口を開く。

「皇太子をお決めになられていない事が民衆を不安にさせてはいるが、このような時こそ帝国の藩屏たる我ら貴族が王家を支えねばならんのだ、無暗に騒ぐものではない」

 神妙に控える副官がさもありなんと頷く。

「心配せずとも皇太子には、それに相応しいお方がなられるであろう」

 そこまで言って指揮官席に腰を下ろしたダンドーラ辺境伯は、副官を振り返り笑みを浮かべた。

「そして新しい皇太子の傍には有能な人材が必要だな」


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