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『皆さんご覧ください。ダンドーラ辺境伯軍が宇宙海賊討伐に出発します。戦闘空母を中心に四隻の戦闘艦を加えて、総勢五隻の艦隊をダンドーラ辺境伯ご自身が率いられます。私は領民の為に立ち上がられた辺境伯の勇姿に感動し、この出陣式に立ち会えた喜びに身体が打ち震えております』

 テレビカメラに向かってリポーターが興奮気味に叫ぶと、勇壮な音楽と共に宇宙港を出港する艦隊が映し出された。

「いよいよご出陣だな」

「でもこのリポーターってやけに大げさだよね」

「そりゃ領主の出陣なんだから盛り上げない訳にはいかないだろ。それも領民を苦しめる宇宙海賊の討伐とくれば、領主の威光を知らしめる絶好の機会だからな」

「領民の為って言う割にはあまりに遅すぎる対応だけど、そんな報道はしないんだ」

「地方局なんてどこもこんなもんさ。領主に逆らったって良い事なんか無いからな」

「メディアが体制にすり寄るのは何処も変わらないんだね」

 溜息と共に呟いた柿崎は、相変わらずテレビカメラに向かって、ダンドーラ辺境伯軍を熱心に持ち上げ続けているリポーターに冷めた視線を送る。

「しかし、ダンドーラ辺境伯自ら出陣するとは思わなかったな」

「大方派閥に取り込まれる前にここで武勲を挙げて、少しでも自分の価値を上げようって腹だろ。この前ウチが商用船で二隻の戦闘艦を沈めたもんだから、この宇宙海賊なら簡単に勝てるって思ったんじゃねぇか。いかにも貴族様の考えそうな事だ」

 それまで黙ってテレビを見ていた親方が鼻で笑う。

「でも親方、この前は二隻でしたけど、これだけ盛大に出陣式なんてやったら戦力かき集めた上で手ぐすね引いて待ってるんじゃないすか」

「まぁ、虎の子の戦闘空母まで出してきたんだ、ダンドーラ辺境伯が余程の阿呆でもない限り負けはしねぇだろ」

 もっとも、と親方は言葉を続ける。

「宇宙海賊だって馬鹿じゃねぇ、わざわざ討伐に来るのを大人しく待ってるなんて事はねぇだろう。尻尾巻いて余所の領地にでも逃げてくれりゃ良いが、ダンドーラ辺境伯もたかが宇宙海賊と舐めてかかれば、下手すりゃ大火傷するかもな」



「閣下、間もなく惑星ザイラークでございます」

 脇に控えた副官が恭しく頭を下げた。

宇宙海賊(やつら)(ねぐら)か」

 ダンドーラ辺境伯は大仰に頷くと、徐に立ち上がり両手を広げる。

「皆聞け、アズバイル帝国に仇為す愚かな宇宙海賊も年貢の納め時ぞ。畏れ多くも天帝陛下に成り代わり、このダンドーラ辺境伯自らが、正義の鉄槌を下してくれようぞ」

 艦橋に響き渡る声に全員が頭を下げる。

 ダンドーラ辺境伯はその光景を見渡すと満足気な笑みを浮かべた。

 しかし、指揮官席に腰を下ろすと、一転して不機嫌な顔になり小声で副官に愚痴を零す。

「帝国軍も不甲斐ない、宇宙海賊如きの討伐に何故この私が出ねばならんのだ」

「閣下、今暫くのご辛抱を。此度は閣下のお力を知らしめる良い機会でございますので」

「分かっておる。このような下賤な者の相手をしなければならないとは、まったく面倒な事だ。だが、私の栄達の糧と考えれば悪くは無い。精々役に立ってもらおうか」

 ダンドーラ辺境伯はメインモニターに映る惑星ザイラークを見据えると、小さく笑った。


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