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「今じゃ実弾砲なんて使う奴は居ねぇがな、遠距離からレーザービームでちまちまシールド削っていくよりは、ドッグファイトで実弾叩き込む方が早ぇんだよ」
宇宙海賊の後始末をその後に呼び寄せた帝国軍に任せて事務所に戻った翌日、柿崎達は先の戦闘について親方に話を聞いていた。
「でも親方、今時ドッグファイトなんて無人戦闘機同士でしかやらないすよ。ましてや実弾砲なんて骨董品どこで売ってるんすか」
ダズは余程怖かったのか帰ってきた時は青い顔をしていたが、漸く落ち着いたようでいつも通りの呑気な声を上げた。
「うるせぇダズ、てめぇは黙ってろ」
親方はそんなダズをいつも通りに一喝する。
「だいたい敵味方の識別プログラム通りにしか動けない無人戦闘機なんざ、優秀なパイロットの研ぎ澄まされた“感覚”には叶わねぇんだよ」
「その“優秀なパイロット”ってのが居ないじゃないすか。実際帝国軍でも戦闘機は無人ですし、宇宙海賊ですらドッグファイトなんてやらないんすから。そんな状態で親方の言う感覚なんて、研ぎ澄ましようがないじゃないすか」
「まったく情けねぇ奴らだ、オートパイロットなんかに頼ってるから、今の奴らは感覚が身に付かねぇんだ」
めげないダズの反論に親方は嘆きの声を漏らす。
「だいたい昨日の戦闘だって思い出してみろ、宇宙海賊共も近寄られたら終わりじゃねぇか」
「そりゃ至近距離からの実弾砲が有効なのは分かりましたけど、近づくまでが問題なんじゃないすか。あの時は死ぬかと思ったんすよ」
昨日の戦闘を思い出してダズは身震いする。
「まぁ、ドッグファイトするにはちょっと宇宙船がデカかったな」
親方は苦笑いを浮かべると頭を掻いた。
「しかしカキザキ、お前はいい。俺も感覚持ちの操船は久しぶりに見たが、昨日の操船は見事だった」
武装を含めて全面改造されていたとはいえ、戦闘機ではなく商用船でのドッグファイトをこなした柿崎を親方は手放しで褒めた。
「戦闘機程の小回りも効かねぇ、更に的も大きい商用船でのドッグファイトは、正直に言って熟練のパイロットであっても難しい。まぁ相手が技量の足りねぇ宇宙海賊なのは幸運だったが、それでも見事だ」
「僕も死ぬかと思いましたけどね」
いきなり褒められた柿崎は苦笑いで答えた。
「“バイクレース”だったか、あの感覚はそれで身に付けたモノだろう」
柿崎から聞いていた話を思い出し、満足げに頷く親方に再びダズが口をはさむ。
「でも生身でマシンに跨っただけの状態でレースするなんざ自殺行為ですよ、正気の沙汰じゃないすよ」
「失礼な。地球じゃれっきとした人気の高いモータースポーツなんだよ」
半ば人生を掛けていたバイクレースを貶された柿崎は、不機嫌な顔を隠さずにダズに反論した。
「まぁまぁカキザキ、そうむくれるな。確かに俺達の常識じゃ考えられねぇ。だが、その生身で競い合うって事で感覚を鍛えられたんだろうよ。ありゃ教えられてどうにかなるもんじゃねぇからな」
親方は柿崎を宥めてお茶を飲むと、
「それに初陣であの度胸は大したもんだ。こいつなんか未だにビビってて使いモンにゃならねぇからな」
ダズを指差して笑い声を上げた。
「いやいや、普通はビビりますって。生身でレースなんてやってた奴と比べないで下さいよ」
親方に指を差されたダズは、比べられては堪らないと慌てて首を振った。




