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「よく知ってるねそんな裏話」
柿崎が感心したように頷くと、
「まぁ、俺も昔タブロイドニュースで読んだんだけどな」
そう言ってダズは笑った。
「話の真偽は別としてだな。フランタニア皇国を落としてこの銀河最大の勢力になったアズバイル帝国は、銀河統一を宣言して残りの星間国家に臣従を命じた。そんで従わなかった国に銀河統一戦争を仕掛けた」
「真偽も何もタブロイドニュースでしょ。この前はドラゴンを捕まえたって言ってたけど、よく見たら大きいトカゲだったし」
呆れ顔で首を振る柿崎にダズは肩を竦める。
「そう言うなって。ともかくその銀河統一戦争で滅んだ国から逃げ出した王族やらの関係者がたまに帝国各地で反乱を起こすんだ」
「それが“亡国の亡霊”なんだね」
「そう言う事だ。まぁ、いずれにしてもこんな辺境じゃ内乱も反乱も関係ないけどな。そんな事より宇宙海賊の方が余程大きな問題だよ」
背伸びをしたダズが大きく欠伸をしたところに、
「ダズ、カキザキ、仕事だ出かけるぞ」
親方の声が響いた。
「ダンドーラ辺境伯も漸く重い腰を上げたんすねぇ」
「そりゃ自分トコの宇宙船が襲われたんだ、これ以上見て見ぬふりはできねぇだろ」
「でも自分達に被害が出るまで動かないなんて貴族としてどうなんすか」
「帝国の貴族なんてそんなもんだ。特にダンドーラ辺境伯は、先年に先代と跡継ぎだった兄を不慮の事故で同時に亡くしたからな。まともな後継者教育なんて受けてないんだろ。まぁ、予備だった貴族の次男が突然当主になったんだ、浮かれる気持ちは分からんではないがな」
そう言って親方は鼻で笑う。
「大体、宇宙海賊がここまでのさばったのは帝国軍の責任でもある、今頃“帝国軍が不甲斐ない所為で余計な出費を強いられた”って国に文句言ってる事だろうよ」
ダンドーラ辺境伯家の依頼で旧型戦闘艦の武装強化を施した帰り道、艦橋にダズと親方の嘆き声が響く。
「自分の領地の事なのに」
自分達の事しか考えていない貴族の話に柿崎が溜息をつく。
「宇宙海賊が出たって自分達に被害がなけりゃ知らん顔してるような奴らだ、今時まともに領地の発展に尽力してる貴族なんて居やしねぇよ」
「そうなんですか」
呆れる柿崎に親方が言う。
「帝国の貴族に矜恃なんて求めちゃいけねぇ、あいつらテメェの懐温める事しか考えてねぇからな。だいたいがこの期に及んで後継者争いで内乱起こそうかって連中だ、自分達の主君ですら権力争いの道具としか考えてねぇ。ましてや国民なんて、放っときゃ勝手に税を納める働きアリぐらいにしか思っちゃいねぇだろうよ」
辛辣な親方の言葉に柿崎が肩を竦める。
「酷い話ですね、帝国は本当に大丈夫なんですか」
「それこそ知った事じゃねぇな。帝国は貴族に、貴族は国民に、それぞれ裏切られて終わるんじゃねぇか」
自業自得だと笑う親方にお茶でも入れますとダズが腰を上げた時、突然警告音が艦橋に鳴り響いた。




