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誰かが夢見るシロクロシティ  作者: 水島緑
ブラック・レッド
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 はじまりは唐突で、終わりはあっけなかった。

 現実世界へと戻ったマジメは、アヤからヤミコの消滅を聞いてすべてが終結したことを悟った。

 これでもう、二度と冒険をすることはないだろうし、凄惨な場面を見ることもなくなる。同時に、現実で再会していないヒイやシキ、セガワたちとはこれっきりになるかもしれないが、それでいいのかもしれない。

 泣いて喜ぶハギリに、マジメは一言呟いてしまった。

「鴨井さんと仲直りできそうだな」

 もちろん、マジメも一筋縄ではいかないであろうことは知っているつもりだ。しかし、二人はアヤの精神世界で仲違いをしたのだ。それがなくなったいま、もしかしたらもう一度友誼を結ぶことができるかもしれない。そうかんがえて、思わず呟いてしまったのだが、ハギリには少々衝撃的すぎたようだ。

「不用意なこと言ったな。ごめん」

「いや、本人も仲直りしたいと思っていただろうからね。むしろダメ押しになったさ」

 すっかり黙り込んでしまったハギリの代わりに、アヤが苦笑しながらそう言った。

「ああ、そうだ。ハジメくんたちにはずいぶんと迷惑をかけてしまったね。本当にごめんなさい」

 しおらしく頭を下げるアヤに、マジメは首を横に降った。

「いいさ。もう済んだことだからな」

「それだけ?」

「なにが?」

「本当にそれだけなのかい?」

「……俺はな」

 にやり、と笑ってみせたマジメに、背筋が震えた。

「はぁ……打ち上げがてらに挨拶回りにでもいかないとね」

「俺も付き合うよ」

「そうかい? ありがとう」




◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎



 みんなで集まって打ち上げ、とはいかなかったが、現実での所在を知ることが出来た。セガワが退院し次第、どこかで集まろう、ということになった。

 今日も今日とて変わらない。ここ数日に特異な体験をしたことはもちろん秘密であるし、世を騒がせた連続殺人鬼も、遺体で発見された。つまるところ、いつもの日常が戻ってきた、ということになる。

 自らの世界をコントロール出来るようになったアヤは、意識はあれど身体は眠っている状態を利用して、なにやら難しい論文のようなものを書いているようである。ずいぶんと使いこなせるようになっていて、もう迷惑をかけることはないと笑っていた。



 東地高校の七不思議の一つ、常に埋まっているものの姿を見たことがない副部長の話は、一時的に解消された。

「あっ、小田原くん!」

「こんにちは、郡山先輩」

「あ、あはは。やっぱりその呼ばれ方はまだ慣れませんね」

 謎部副部長、郡山秀が数日に一度、学校に通える程度には体も良くなったのである。

 以前、ヒイに会おうと病院まで行ったときには、その日の朝に退院していたらしい。マジメと同じ探し人だということを知ったササキたちは大層驚いていたが、熱心に謎部へ入らないかと勧誘してくるようになった。良縁は大切にするべきだ、とのことである。



 あんなことがあろうとも、マジメに変化らしい変化はなかった。おそらくはこれから先も変わることはないのだろうが、それならそれで構わない、と本人は思っている。

 変わる、といえば、ハギリとシキの二人は、まだまだぎこちないもののまた交流をはじめたようである。アヤからそれを聞かされたときは喜びのあまり感嘆の声を出してしまったくらいだ。

 なにかと二人の仲を気にしていたマジメにとって、なんとも感慨深いものを感じる知らせであった。

 


 今日も今日とてマジメは一人で、しかし以前よりも充実した毎日を過ごしている。


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