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お元気ですか? 私は変わらず元気です。
編入試験、本当にお疲れ様でした。
涼のことだから、きっと大丈夫だと信じて待っています。
先日、中等部の卒業式を終えました。
卒業生の答辞は高時くんでした。高時くんは涼の話はあまりしてこないです。
でも、私が困っていないかどうかよく聞いてくれます。
如月さんは、涼がいなくなって寂しそうです。あんなに声をあげて怒ったりする姿をみなくなりました。
クラスのみんな、寮のみんな、食堂のおばさんたちも、涼に会いたいと言っています。人気者の涼を誇りに思います。
中等部女子寮のお部屋は昨日引き払いました。涼との思い出がたくさんある場所なので、名残惜しかったです。
荷物を整理して、お部屋を掃除しながら、涼に出会ってからの色々なことを思い出しました。
今は高等部の女子寮への転居準備中で、実家に戻って手紙を書いています。
高校の女子寮の同室が男の子でないかは、最初にちゃんと確認しますね。
そうそう。高等部の制服が出来上がりました。中等部の制服とは全然違うのでびっくりしました。
深い紺地に赤いラインのラインの入ったセーラー服で、涼のくれた髪飾りと一緒に早速着てみました。
高時くんから、男子は学ランだと聞きました。きっとよく似合う思うので、涼の新しい制服姿が早く見たいです。
涼は今、どんなところにいるのかな。
知りたい気持ちがおさえられなくて、地図とか、ネットとかで、つい北海道のところを見てしまいます。
……書きたいことはいっぱいあるはずなのに、なんだかうまく出てきません。
早く会いたいです。
そちらは寒さが厳しいと思うので、お体に気をつけてお過ごし下さい。
杉浦 麻穂
手紙ありがとう。返事書くの遅くてごめん。
紙に書くとなると途端に筆が進まなくなります。
杉浦学園で女子生徒の片岡涼として持っていた携帯電話は、実家に帰ってすぐに解約した。
それから今までずっと試験勉強漬けで、まだ新しいのを買いにいけてない。
親にいろいろ負担をかけてる分、なかなか言い出しづらいのもあるし……
メールやら電話やらできなくて、不便で悪いな。
試験が終わって少しはぼーっとしていられるかと思ったら、最近は朝から晩まで実家の仕事を手伝わされてる。
昔より体がでかくなったからか、手伝いというよりも、完全に労働力としてカウントされている気がする。
小学校の頃の同級生たちはすっかり大人びていて、時が経ったことに驚かされる。
離れていたからこそ良く分かるんだと思う。俺も皆に「すっかり変わった」と言われたから。
母さんや、里帰りした園山があれこれ話すものだから、皆に麻穂のことを訊かれる。
なんていえばいいか分からないから困るし、気恥ずかしいけど……
そばにいない麻穂の話が出来るから、なんとなく嬉しいと思ってしまっている自分もいる。
……って、何を言ってるんだろうな、俺は。
とにかくまあ、高時とあんまり話すなよ。
片岡 涼