9. ルル
あたし、ルルは、遺跡から村への道を走っている。
なぜ? それは未来の旦那様が遺跡で消えてしまったから。結婚する前から未亡人なんてとんでもない。早く村に帰って助けを呼ばなくちゃ。待っててね。あたしの未来の旦那様!
未来の旦那様とは、もちろんアッシュくんのこと。
アッシュ・ヒルフィールド、銀髪で一つ歳上の隣に住むあたしの幼馴染。
生まれた時から、家族ぐるみのお付き合いをしている。アッシュくんもそうだけど、アッシュくんのお父さんとお母さんも優しい人で、お嫁に行くにはもってこいなの。そのうえ、アッシュくんの家は猟師のうちと違って、畑をたくさん持っているから、食べるのに困ることはないと思うの。アッシュくんは長男だから、畑はみんなアッシュくんが継ぐことになるから、アッシュくんと結婚するあたしは安泰ね。
それに、アッシュくんは見た目は人並みでちょっと冴えないけど、すごく勉強はできるの。今日も教会の日曜学校でシスターから花丸をもらっていたんだから。
そうだ、あの時アッシュくんが魔法を教えてと言ったから今こうなっているんだわ。
イザベラちゃんが魔法なんて本当はないと言ってアッシュくんを傷つけたから。
イザベラちゃんがアッシュくんに対抗意識を燃やすのは、恋のライバルが減っていいことなんだけど、泣かすまでやるのはやりすぎよね。それに、アッシュくんが信じていたとおりに魔法はあったし。
あの耳の長い美人なお姉さんは、間違いなく絵本に出てくるエルフだった。それに、突然光出して消えてしまったのは魔法だったわ。どこかに隠れていないか部屋中探したけどどこにもいなかったもの。
ああ、このままアッシュくんが戻らなかったらどうしよう。
村にアッシュくんに代わる旦那様候補はいないもの。住み慣れた村を離れて他の土地に行きたくはないわ。
あれ、でもアッシュくんが戻らなかったら、誰が隣の家を継ぐんだろう。きっと弟のグレイくんよね。
それなら旦那様はグレイくんで良くない?
歳下でまだ頼りないけど、歳上の私が教え込めばいいのよ。
「なーんだ。急いで走ることないや」
あたしは走るのをやめ、一旦止まって息を整えることにした。
もちろん、あたしはアッシュくんが戻ってくることを望んでいるし、そうなれば、今までの予定どおりアッシュくんを旦那様にするつもりでいる。
でも、もし、捜索が遅くなってアッシュくんが見つからなかったとしても、旦那様は弟のグレイくんがいればまったく問題ない。
「グレイくんをあたし好みに育てるのも悪くないかも」
あたしはグレイくん育成計画を練りながら、村に向けてのんびり歩き出した。




