8. 協力関係
アニメの内容を信じて、異世界転移魔法を手にするために3万光年を旅してきたヴィーは、アニメが創作《嘘》だと聞かされ落ち込んでしまった。
「いやあ、ヴィーが落ち込む気持ちもわかるよ」
「嘘! わかるはずない」
「実は、俺も異世界から来たんだ。まあ、ヴィーの異世界転移と違って、俺の場合は異世界転生、つまり、生まれ変わったけれど、前世である、異世界の記憶があるといったかんじだけど」
「本当?」
「ほんとほんと」
「元の世界では、なんて星に住んでたの?」
「地球だけど」
「……知らない」
「ヴィーの世界とは違うと思うな」
「残念」
彼女は、元いた世界の仲間であってほしかったようだ。
「元いた世界は違っても、異世界人同士、これからは一緒に魔法を探そうぜ」
「魔法は嘘なんでしょ」
「アニメは創作だけど、この世界に魔法がないとは限らないだろ。俺は魔法を手にすることを諦めてないぜ」
「なんで?」
「俺が異世界転生してるからさ。そんなの科学じゃできないだろ」
「そうかもね」
「それに、アニメに出てくるエルフだけど、この世界では本当にはいないと思われているんだ」
「嘘だもんね」
「でも実際にはいた」
俺はヴィーを指差しそう宣言した。
「え? 私?」
「ヴィーは、どう見てもエルフだよ」
エルフにしては、巨乳だけど。幸い、アニメに出てきたエルフも巨乳だ。
「確かに、エルフの特徴はバルクァン星人に似ているけど。私、エルフなのかな?」
「いないと思われていたエルフがいた。なら、ないと思われている魔法があってもおかしくないだろう」
「ふふふ。まあ、そういうことにしておくわ」
落ち込んでいた彼女から、わずかだが笑みがみられた。
「魔法を一緒に探そうってことだけど、これからどうするの?」
「とりあえず、遺跡の探索かな」
「今までどおりということね」
「いや、今までは一人だったが、これからは二人だ」
「アッシュは、元から二人だったじゃない」
「あー! ルルを置き去りにしたままだ。ヴィー、元いた場所に転送できないか?」
「今ならまだ、転送用のドローンが元の場所に待機させてあるからできるわよ」
「転送用ドローン? どこでも転送できるわけじゃないんだ」
「そりゃそうよ。転送元と転送先、どちらにも装置が必要よ」
まあ、魔法だって、一度行ったことがある場所とか、制限があることが多いし、当然か。
「だけど、あの時、そんな装置見なかったけど?」
「それは、ステルス機能があるもの。普通は見つからないわよ」
ステルス機能? もしかして、どこかに侵入することが前提なのか?
「それより、突然消えて心配しているだろうから、早く転送室に行きましょう」
ちょっとした疑念が湧いたが、ルルのことが心配だ。俺はそれを確認することなく、急いでブリッジを出て彼女と転送室に向かった。
「そうだ、ヴィー、次はどうやって連絡したらいいんだ?」
彼女に会いたくても、ここが宇宙船の中なら、歩いてくることはできない。転送される前に確認しておかないと。
「そうね。これを貸してあげるわ」
彼女は、自分が付けている腕輪を外すと俺に差し出した。
「これは? もしかして連絡を取るための魔道具!」
「通信機よ」
「魔道具では?」
「ただの通信機よ」
まあ、魔道具ではないことはわかっていたさ。でも、万が一ということがあるかもしれないじゃないか。
俺は落胆しながらも、それを受け取ると自分の腕にはめた。
「使い方は?」
「タッチすると、アマデウスと繋がるから、私を呼び出してもらって」
「タッチすればいいんだな」
タッチしろと言われ、一瞬、腕輪を渡すため屈んだことにより、俺の目の前でその存在感を強調している、彼女の巨乳にタッチしたくなったが、紳士的な俺は、なんとか理性でそれを抑え込み、腕輪にタッチした。
『ゴ用件ハ?』
機械的な声が耳元で聞こえてきた。これがアマデウスの音声か。
「アマデウス、ヴィーのスリーサイズを教えてくれ」
『コマンダーのスリーサイズは上から……』
「アマデウス! ストップ!! アッシュ! そんなことに使うなら返してもらうわよ」
怒った彼女に思いっきり睨まれてしまった。
「ごめん、ごめん。ほんの出来心だから。許してください。もうしません」
俺は平身低頭謝った。宇宙船の人工知能と繋がっているんだぞ。こんな便利なもの取り上げられてなるものか。
しかし、危なかった。あそこで彼女の胸にタッチしていたら、謝っただけでは済まされなかっただろう。
その後も彼女は怒ったままだったが、腕輪は取り上げられることはなく、俺は転送室から元いた遺跡に転送されたのだった。




