12. 軍
「ところで、ヴィーは軍人なのか?」
宇宙船の船内で、本棚の分析結果を聞いた後、俺は彼女に尋ねてみた。
「急にどうしたの?」
「いや、さっき『私の任務は』と言っていたから、そうなのかと思って」
それに、アマデウスはヴィーのことを「コマンダー」と呼んでいる。それもあって、前から気になっていたのだ。
「そんなの、成人しているのだから、軍人に決まってるじゃない。それとも、まだ学生に見えた?」
まあ、エルフ……じゃなかった、バルクァン星人が何歳で成人するか知らないが、ヴィーの見た目は、巨乳だし、未成年には見えない。成人した美人のお姉さんだ。
「成人しているから軍人とは限らないだろ。他の職業に就いているかもしれないじゃないか」
「ああ、こっちの世界では軍事以外の仕事もあるのよね。私がいた世界では軍事以外の仕事はなかったから、職に就いている人はみんな軍人だったわよ」
それって、彼女がいた世界はどこも軍事国家ということか! なんとも物騒な世界だな。絵や小説といった創作作品がないのもそのせいか。
それにしても、軍事以外の仕事がないなんて、有り得るのだろうか?
「それじゃあ、食料や生活必需品はどうやって供給しているんだ?」
「軍事以外の仕事は、全てロボットがしているわ」
「全てロボットが! それはすごいな」
やはり、彼女の世界は、俺の前世より遥かに進んでいるようだ。
だが、そうなると逆に疑問に思うことがある。
「でも、それなら軍事もロボットに任せてしまえばいいんじゃないのか?」
軍事といえば戦争だろう。命の取り合いとなるのだから、それこそロボットに任せた方がいいような気がするが。
「そんなのだめよ。ロボットに軍事を任せたら、あっという間に人間がロボットに支配されてしまうわ」
確かに、社会の全てをロボットに任せているのに、軍事力まで任せてしまったら、ロボットに反抗された時、人間に対抗する術はないだろう。
「確かにな。しかし、それだけ進んだ世界でも人間同士の戦争はやめられないんだな」
「大きな武力衝突はここ数百年起きてないけど、小競り合いや裏での抗争は後を絶たないわね」
「それで、ヴィーの任務は深宇宙の探査だっけ? それも軍事なんだ」
「もちろんよ。戦場に出るだけが軍人の仕事じゃないのよ。とはいえ、今は戦場より深宇宙の調査の方が危険なんだけどね」
「そうなのか?」
「さっきも言ったとおり、人が大量に死ぬような武力衝突はここ数百年起きていないから、深宇宙で死んだり、行方不明になった人の方が多いくらいよ」
「そんなに危険な任務なんだ」
「深宇宙って、未踏の宙域ということだから、何があるか分からないの。だからこそ、危険がないか、逆に、有用なものはないかとか調査するんだけど、危険なものに当たっちゃった場合命の保証がないのよ」
「ヴィーは、何でそんな危険な任務に就いていたんだ」
「階級が上がって、その分給料が増えるし、未踏宙域の調査なんて面白そうじゃない。だいたい、危険だとは言ったけど、言うほどではないのよ。……ないはずだったのよ」
彼女は「言うほどではない」という言葉を言い直した。実際、自分が行方不明になっているわけだからな。つまり、危険がある任務だとは知っていたが、自分は大丈夫だとたかを括って、目先の利益と好奇心を優先したということか。
「でも、ほら、死んだわけじゃないし、無事帰還できれば特別昇級も期待できるわよ」
「二階級特進しないで済むことを願っているよ」




