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第十三支年賀状

作者: 石神観遥
掲載日:2025/12/31

 送られてくる年賀状に描かれた干支が、もし猫であったなら安心してもらったほうがいい。

 仲間外れにされた恨み辛みがあろうがなかろうが、愛されている種族だからだ。

 干支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥と慣習法で決められ、FA宣言やトレードで入れ替わることができない。

 歴史と伝統で凝り固まった慣例は、安心と当然をもたらしてくれる。当たり障りがないことはけっして表面化しない喜びなのだ。

 見覚えのある差出人からのものも、見覚えのない差出人からのものも、投函時か集荷時か配達時か、あるいは初めから透かしのように埋め込まれているからか、一様にデザインの一部が描き換わることがある。

 可愛らしいキャラクターの胴体は牛で、顔の部分だけが人。それも水墨画風のイラストだろうが仲睦まじいどこかの家庭の写真だろうが、ふだん覗いている鏡に写った顔を投影した、フルカラーだ。

 そう、人面獣。

 へりくだった薄気味の悪い笑顔は、鏡の前で浮かべているものではないはずだ。

 どの角度から見ても目の合う自分の顔には、見ている側にはない特徴がある。

 ひと目でわかる。

 額だ。

 十三という数が、いかにも角ばった太めの書体を擬した焼きゴテを当てられ、肉の焦げた臭気が漂ってきそうな痕跡がある。

 年賀状の人面獣の口は、スマートフォンをかざさなくても、肉眼で、確かに動いているのが見えてしまう。

 一定のリズムを繰り返すのではなく。声帯の震えさえも伝わってきそうなほどで、一言一句、訛りも乱れも誤りも生じさせない。

 どの年賀状からも一斉に、合唱のように、同じ。

 あなたが言っている。

 読唇術の心得などは不要だ。

 たとえ耳を塞いだとしても明瞭で不吉な予言が聞こえてくる。

 とりあえずも楽しみにしている裏面から受ける驚きと戸惑いのあまり、よく検証しようとせずに破り捨てたとしても意味はない。

 送られてきたということは、宣託の成就が決まっているということだ。

 あなたの手元に届かないことを祈る。

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