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白練  作者: 高月和泉
第一章 帝都
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第七話 回想-羅生門の中1

チャイナタウンの破損点検を終わって、ひとまずはシャオのレストランに戻った。一晩中、みんな寝ていなかったのでひと休みした後にローズの話を聞くことにみんなで決めた。


シャオのレストランは今日も休みなのだ。


お昼過ぎに柳宇りゅううは起床した、一階のカウンター席へ行き、暖かい欠伸をしながらリーの横に座る。もう、みんなは既に起床してテーブル席に座っているのだ。


「何かでも飲む?」とシャオは言う。


「白湯が欲しい」と柳宇りゅううは言う。

暁は白湯を持ってきて柳宇の目の前に置いた。


「ローズの究極の禁術が心配です。祓魔業界では、あの門の中で百鬼が夜行し、門の中に入るもの百鬼の闇市の道で迷うといった言葉がある」と婆さんは言う。


ビオラもあの門のことを聞いたことがあるのだ。


「祓魔一族と天下一の祓魔術式師ふつまじゅつしきし柳氏りゅうしすら触れられないあの門を召喚できたってことはローズはすでにあの門の中の管理者になったってことかぁ」とシャオは言う。


みんなはシャオを見つめていた。


シャオは何か知っているでしょう?」と柳宇りゅううは言う。


「何も知りません」とシャオは言う。この時の暁の気持ちは憎しみもあり、心配もあり、気にもしているとても複雑なのだ。


「言いたくなったらまた言いましょう」と柳宇りゅううは言う。


「列車で倒れた時にどうやって体術を習ったのかローズ本人の話を聞こう」とリーは言う。今、一番待ちきれない人はリーなのだ。なぜなら、リーはローズを一番心配しているのだ。


「その前にリーに聞きたいことがある」とローズは言う。


「どんなことなの?」とリーは言う。


「この真珠のペンダントは私と妖狐の王の間のことを教えてくれるが一族と両親のことは教えてくれない、この真珠のペンダントをくれたのでリーは私の両親と一族が誰なのか知っていると思う、両親と一族はどこにいる、どのような人なの?」とローズは真珠のペンダントを握って言う。


「答えられない」とリーは言う。


実は、当初に助産師だったリーはローズに身元を伝えたかったが、当時ローズが生まれる前にリーはローズの両親と約束があったので例えローズに聞かれてもリーは約束を守るのだ。


婆さんの魂は元々ローズのものであり、ローズ生まれつき二つの魂があるのでローズの第二の魂としての記憶があるのは生まれて今までのすべて、実際、両親や一族に対する印象も真っ白なのだ。第二の魂も自分の身元を知りたがっているのだ。


主体の魂の記憶は妖狐の王に殺されて長安から旅立った後のことなのだ。主体の魂が未完成の錠剤のせいで記憶が欠損したことがあるので、たとえ第二の魂が記憶が蘇っても第二の魂と主体の魂との間に記憶が共有できないのだ。


それに第二の魂は婆さんの口を通して主体の魂が欠損している一部の記憶を言おうとしても宜しくない結果になるのでできないのだ。そして、リーは約束のためローズの身元についてはどうすることもできない。全てのことはローズ自身に探させなければならない。


「分かった」とローズは言う。


「今ここいる皆はローズを心配している、あの門を召喚できたことを話してくれるかな?」とリーは言う。


ローズは思い出しながら話し始めた。


当時、寝台列車の中でビオラがローズを看病していた時にローズの魂がある骸骨の前に来た。


ローズの魂は目覚めた。


「ここはどこ?」とローズは独り言を言った。


「ここは地獄です」と骸骨は言う。


ローズは頭を上げた。目の前に現れたのはマントを被っていて、人間のように振る舞う骸骨がいた。


「骸骨が動けるっていうことは、妖じゃないの?」とローズは言った。


「誰が妖ですって?私はこの地獄を管理している死神です、神ですよ!」と骸骨は言った。


「え!私は透視眼とうしがん陰陽眼いんようがんを持っていないのに死神を見える」とローズは言った。ローズは初めて骸骨を見た、元の世界に戻るためにできるだけ怖がっている気持ちを隠していた。


「誰でも私が見えるため君も私を見えている」と死神は言った。


「もし、見えなかったら危険じゃない?透視眼とうしがん陰陽眼いんようがんをハーイスピードで得られないかな?」とローズは言った。


「これはハーイスピードで得られないものです、透視眼とうしがんは生まれてきて修業を重ねてから周りの妖怪や魂、個人情報を見える目のこと、陰陽眼いんようがんは生まれつき妖怪や魂などを見える目のこと、両者は見える範囲やものも少しは違う」と死神は言った。


「分かった、それよりなんで私はここにいるの?」とローズの魂は言った。


「魂回収者による間違いと思う、不死身は命が絶えるはずがない」と死神はローズを見ながら言った。


ここは地獄なので死神はものを死後に魂の生前の善悪ぜんあく正邪せいじゃによって、これからの魂の行方を決めるのだ。行方は死神しか知らないのだ。死神は一人ひとりの生前のストーリーを生死帳簿せいしちょうぼに記録しているが例外もある、その例外の者はローズなのだ。


「信じられない、不死身の私はここに来たっていうことは何かがしたんでしょう」とローズは言った。


「ほんとうに何もしていないって」と死神は言った。


「本当にほんとうなの?」とローズは言った。


「本当です」と死神は言った。


「うーん、やっぱり怪しい。管理しているということは記録表とか何かがあると思う、確認したいから記録表を見せてくれないかな」とローズは言った。


「すみませんが天機を漏洩してはいけないので見せられません」と死神は言った。


「へー、そうなんだ。じゃ、私は不死身なのに元の世界に戻れないじゃない?」とローズは言った。


「私は不死身を管理する権限はないので戻る道を聞かれても分からない、不死身を管理しているのはその中の管理者です」と死神はある門を指しながら言った。


透視眼とうしがん陰陽眼いんようがんを持っていない君を護送する」と死神は言う。死神はローズを他の見知らぬ魂の嫌がらせを避けらせるためでもあり、ローズをある門の前まで護送した。


この門は羅生門なのだ。


「これずいぶん、ぶっ厚い門だね」とローズは羅生門を見上げた。ローズは死神を恐れていなかったのでこれから会う管理者も恐れない。


「この先は君一人しか行けない」と死神は言った。死神は地図を広げた。


「ここが管理者のいる場所」と死神は星印を指しながら言った。


「じゃここは出発地点だね」とローズは別の星印を指しながら言った。


「そうであるがこの出発地点は迷宮から脱出後の出発地点です」と死神は言った。


「迷宮ですか?」とローズは言った。


「門の中に迷宮がある、迷宮の壁は常に変化する、変化の迷宮は門の中の街を守るものでもある」と死神は言った。


「そっかー」とローズは言った。


「迷宮を脱出後に堕落した神や堕天使、魔と鬼などが商売をしているの街に着く、しかしやつらとは関わるな、管理者に会うことが先、これは死神からの命令です」と死神は言った。


ローズの目つきが平淡で目の前の門を見てゆっくりと門を押した。


「なんか、優しい死神だね」とローズは最初の一歩を踏み出す前に死神に一言を言った。


その通り、この死神は優しい死神を目指していた。死神は初めて優しいと認められた、しかも十五歳の少女に認められた。死神は感動して泣きたいが涙腺がないので泣けないのだ。死神はローズの魂に向かって手を振った、ローズの魂は手を振っていなかった。羅生門に入ったローズの魂は少し歩いた。


迷宮は思ったより複雑であった。


普通の迷宮は何度も試していれば出口が見つかるが、この変化の迷宮の壁は動くのだ。来た道を振り向いて見ると道がなかったり、突然に左右に道があったり、見た目は行き止まりなのに道があって前進できたり、きっと出口も別の所に移動してしまう。


壁が変化する時に隙を見つけ出し飛び越えても先が読めないのだ。しかも、壁は特殊な材料でできているので祓魔の術は効かないのだ。ローズは困った、今は疲れて大きく息をしながら手は壁を支え無意識のうちに壁にあるスイッチを押した。


この時に変化の壁の動きが止まり、ローズ気づかなかった。矢が襲ってくることローズは知らなかった。


頭を下げている大きく息を吸ったローズは急に頭を上げた、一本の矢が眉と眉の中心に向かっているのを見て、慌てて横に避けた。次に二本の矢が射した、ローズは伏せたので二本の矢を避けた。


また三本の矢が射した、ローズは伏せたまま頭を上げると一本は眉と眉の中心に向かう、残りの二本は両目に向かう、ローズはとりあえず矢を避けたのだ。矢が続々と射すると思ったローズは立ち上がる時間がなかったので迷宮で内力ないりょくを使ってみるしかなかった。


これは迷宮で唯一に試してないものなのだ。ローズは手のひらで一回だけ地面を叩いき、手のひらの内力ないりょくが体を支えていたのでローズは側方倒立回転をした。


両足は無事に着地したが矢はまだ出ていない。この時にローズはこの迷宮で誰かが監視ている、もしくは観察したりしているのか、それかこの迷宮が体術の練習室なのかもしれないと思ったのだ。それに矢はいつ来るか分からないのでローズは油断していないのだ。


今度は矢が背後から射したのだ。


ローズは振り向く瞬間に腕で矢を振り払った。この時に両側から矢が射した、ローズは巧みに矢を避けながらちょっと振り払った。すると、ローズの現在地は普通の迷宮の壁や道になった。体術トリガーをクリアしたら迷宮から出られるとローズは推測した。


ローズは次の体術トリガーのスイッチを探していた。


一部の普通になった迷宮の壁の角っこに二個目の体術トリガーのスイッチがあった、そのスイッチは壁と同じ色でよく見ないと分からないのだ。ローズはスイッチを推した、今度は地面から火が噴射した。火の噴射は避けるしかないのだ。噴射する火は徐々に強く、うっかりして炎に髪の毛の先を焼けていた。


ローズは自分の髪をちらっと見た、髪の先は焦げているのだ。この時に炎が顔の横で噴き、炎の熱気が周囲に残った。ローズは顔は焼けつく熱さを感じた。ハラハラしたが一応無事だったため、ローズは二つ目の体術トリガーをクリアした。そして、残りの体術トリガーもクリアしたのだ。


変化の迷宮は普通の迷宮になったのだ。


普通の迷宮になったため、ローズはまた何回もルートを試してやっと迷宮から出られた。ローズ視点では、目の前に現れたのは誰もいない殺風景な街であった。実際、街にいる妖怪、悪魔や堕天使などはローズを見つめていたのだ。


ローズは透視眼とうしがん陰陽眼いんようがんを持っていないため見えないのだ。しかし、居る気配はローズが感じるのだ。


ローズは余計な事を考えずに行くべき所にささっと行きたい、それからささっと世に戻りたいのでローズは地図を広げた。この時に管理者が街を巡回のためにちょうど街にいた。街にいる妖は管理者を見て、失礼な事を言う勇気もなく、管理人のふりをするのは言うまでもないのだ。


管理者は妖であったため、ローズは管理者を見えなかった、声しか聞こえなかった。


「不死身のローズ」と管理者は言った。管理者がローズに声をかけるとローズの周りに居た妖は離れた。


「誰?」とローズは言った。


「ここの管理者です」と管理者は言った。


「どうやって私に信じさせるのですか?」とローズは言った。


「仕方がないなあ、修行で透視眼とうしがんを得るまではこのコンタクトをあげる、つけてあげるから少しはびっくりするかもしかれないけど動かないで」と管理者は言った。


すると、ローズは街の妖が見えた。

管理者も見えたのだ。

ローズの目の前に居た管理人は梅の花の妖怪なのだ。


「これは特殊な材料で作られたコンタクト、普通のコンタクトのように気軽に外せる」と一輪の梅の花は言った。


ローズは試しに右目の特殊コンタクトを外し、右と左目で見えた光景は違うのだ。特殊コンタクトをつけている左目は妖がはっきり見えてた、つけてない右目はただ街が見えた。少しスリラーだとローズは思ったので外した特殊コンタクトを右目につけ直した。


特殊コンタクトをつけながらローズは思った、生まれつきで持つ陰陽眼いんようがんのものが見た光景はもっとスリラーだろう。特殊コンタクトをつけた後に梅の花の妖怪は人に化けた。


人の姿の梅の花の妖怪は淡雅な衣服を着ていて、長い黒髪が自然に垂れていた、頰は初春の桃の花のようの淡い赤みが浮かび、躍動的な目はまるで幾千万の星が込められているかのように魅力的な光が輝く、唇の角が少し自信と神秘的な微笑みを浮かべていた。


ローズがこんな美しい人を見たのもキャヴェンディッシュ邸以来なのだ。


「はじめまして、私は小梅おうめです」と管理者は言った。


「は......はじめまして」とローズは言った。


「不死身のものは小梅おうめが管理しているですよね」とローズは言った。


「そうだよ」と小梅おうめは言った。


「早く私を元の世界に戻してください」とローズは言った。


「戻しても良いけど、ここの次の管理者はローズと見込んでいた、迷宮から脱出できたってことは体術が優れている、誰が教えたのか教えてくれる?」と小梅おうめは言った。


「認めたくないけど、体術は妖狐の王に仕込まれた」とローズは言った。


「妖狐の王ですね、妖狐の王はまだ悪事をしているでしょう」と小梅おうめは言った。


「そうです。先に言っとくけど管理者をやらないよ」とローズは言った。


「まあ、いつかローズが気が向いてくれたらまた管理者のことを話そう」と小梅おうめは言った。


ローズは無回答。


「妖狐の王が教えた体術を廃すことを考えたことがあるかな?」と小梅おうめは言った。


「そう考えたことあるけど、廃したあとのことを思うと怖い」とローズは言った。


「廃したあとは何も無いよ、ただの体術の初心者に戻るだけ、望むなら私は助けることができる」と小梅おうめは言った。


眉をひそめていたローズの目つきが重く、小梅おうめを見つめていた。


「なぜ、私を助けるですか?」とローズは言った。


「必要だと思ったから」と小梅おうめは言った。小梅は後ろに振り向いた。振り向くにつれてその黒髪が淡い梅の花の香りが漂った。


「もしかしたら、小梅おうめは心配事があるかもしれない」とローズは言った。


小梅おうめはちょうど行こうとしたところ、足が止まった。ローズに図星されたので呆然としたのだ。そして、小梅おうめの気持ちは憤慨、心配、気にする最後に仕方なくへと変わった。小梅おうめの気持ちは複雑なのだ。


小梅おうめはまたローズに振り向いた。


「まあ、せっかくこの街に来たので少しだけは参観して行こう」と小梅おうめは笑顔で言った。


「ありがとう、行きましょう!」とローズは言った。


小梅おうめの案内でローズは街を参観し始めた。


「この街は昔の神々によって作られたもの、迷宮もそう」と小梅おうめは言った。


ローズは気づいたのだ。


妖や妖のものが見えず神や神のものが見える、これはシャオが言った祓魔一族の血筋に関係あるかもしれない、もしかたら一族は血筋とは別のものが引き継いでいるかもしれない。あと、死神自分で言った、誰でも死神が見えるため、つまり死神は例外なのだ。


「ここは羅刹街道らせつかいどうです」と小梅おうめは言った。


「これは」とローズは言いながら好奇心で物を触ろうとした。触ろうとしたのは皿屋敷のお菊の皿なのだ。


「触ったらダメ!」と小梅おうめは言いながらローズの行動を阻止した。


すると、お菊は二人を見つめていた。

お菊はかなりの美貌の持ち主なのだ。


ローズが小梅おうめ様の友人であることを見てお菊は何も言わなかったのだ。お菊は当時の皿屋敷で自分の身にあった怨念が消えたことで「普通」に居たかっただけなのでここで九枚の皿をセットにして売っていた、常連客にたまには一枚皿をサービスしていた。


羅刹街道らせつかいどうのルールを破けてはいけないので小梅おうめがローズを阻止したのだ。そのルールは不死身であろうと、なんだろうと、ここの買おうとしない品物を触ってはいけない、そうではないと元の世界に戻れないのだ。


小梅はローズに羅刹街道らせつかいどうのいつくかのルールを教えた。そのルールは小梅おうめが一つ一つ詳しく教えたのだ。ルールに禁句があったため小梅は紙に書いたのだ。


一つ目、生死と言われる二つの文字は禁句です。羅刹街道らせつかいどうを離れる時に耳が何を聞いても、目で何を見ても、背後に振り返ってはいけない、ここの神秘さに触れてはいけない。これも必要のないものの纏いを避けるためなのだ。


二つ目、羅刹街道らせつかいどう飲み物と食べ物を飲み食いしてはいけない、そうではないと羅刹街道らせつかいどうの者に属になるのだ。


三つ目、取引禁止されているのは寿命です。寿命で品物や能力に交換したい輩もいるが、危険な取引なので絶対に拒否するのだ。


四つ目、買おうとしない品物に触れてはいけない、触った者は元の世界に戻れないのだ。買った品物の払い戻しや交換もしない、何万年の間ずっとそうだったので品物を買う時に頼るのは観る目と判断力です、賭け性もあるのだ。これは自身のレベルを試すためだ。


最後の五つ目、静かに尊重する。買い手と売り手が駆け引きをしているのを見た時に話しかけて横取りしてはいけない、たとえ、もっと高い値段で買いたいとしても、他の買い手が諦めるのを待つしかない。これは挑発と見なされないためなのだ。


ローズは不死身であっても自身の安全のためにルールを覚えたのだ。


「そこの高い建物は私の家、ついでに私の家も参観しよう、ローズは信頼できる人なので参観させる、普段は私の家を他人に勝手に参観させない」と小梅おうめは言った。


ローズは小梅の家に行った。小梅おうめの家は外観でみると結構大きいのだ。


「お邪魔します」とローズは言った。


小梅おうめもローズも座った。


「本当はローズにお茶やせんべいでも出したいけど、元の世界に戻れないのを防ぐために出さない」と小梅おうめは言った。


「大丈夫」とローズは言った。


羅刹街道らせつかいどうの以外の街も世界中の妖やあの世のものが集まっている、龍の国の夜叉と白骨夫人はっこつふじん、和の国のお菊、河童や貞子、ナサーズ帝国の堕落の神、ヨーロッパの大魔王や堕天使など」と小梅おうめは言った。


「小梅、今はあの世って言ったよね、小梅は元々妖じゃないと思う、本当に妖だったら小梅はあの世ではなく、この世って言うはず」とローズは言った。


「ローズは鋭い、隠しても仕方がないね」と小梅おうめは言った。


すると、小梅おうめは自分の事を語り始めた。


ある街に三人の幼なじみがいた、それぞれの名は、シャオリャンゼンなのだ。怒られる時もあったが愉快な日々だった。ある日、妖狐の王はやってきて財宝や金品が欲しかったのではなく、子どもを連れて行きたかったのだ。


街の皆はもちろん自分の子ども守るためドアや窓をしっかり閉めていた、しかし、この行動は妖狐の王を怒らせた、青い光が現れ街が半分以上に消え、親も消えた、幸い幼なじみは生きていたが、ゼンは僧侶に拾われ、リャンは妖狐の王に拾われた。


シャオは独りで祓魔協会に身を寄せて、妖狐の王を捕まえると誓った。子どものあの頃は誰かに拾われるだけで良いことと思っていた、しかし、それは違った。妖狐の王の元で梅の花の妖及びここの管理者になった。


祓魔師、妖怪と僧侶。

今、幼なじみの途が異になった。


「そのリャンと言う人は今の小梅おうめですよね」とローズは言った。


「そう、梅の花の妖なので小梅だよ」と小梅おうめは言った。


「小梅は妖になりたくないけど、とても仕方がありないのは分かる」とローズは言った。


「途が異になった以来、三人は会ったことあるの?」とローズは言った。


「あるけど、ゼンは来なかった。暁と約束した、この一生会わない」と小梅おうめは言った。


小梅おうめは静かに頭を下げて両手で顔を覆い、肩が激しく震えた。黒髪が滝のように小梅の表情を覆っていた。小梅おうめは泣いたのだ。ローズは小梅が泣いているのを見て、どうやって慰めるか分からなくて片手を小梅の肩に乗せた。


この時に小梅おうめは頭を上げた。きらきら光る涙が小梅の目の中で転がり、大きくて丸い涙が小梅の頬に沿って口元、そして地面に滴り落ちた。小梅おうめの涙はまるで北極の静かな美しいオーロラのようで人を懐かしがらせるが悲しくもさせた。


その瞬間、涙はローズを崩壊させた。

ローズは小梅おうめを助けたい。


「今、小梅こうめは誰に一番会いたいの?」とローズは言った。


ゼンです、あれはどんなお寺なのか?良く生きているのか?心配なの」と小梅おうめは言った。


「じゃ、一緒にゼンを探しに行こう、小梅の願いを叶えましょう」とローズは言う。


「ありがとう、でも私は羅刹街道らせつかいどうから出れない」と小梅おうめは言った。


「なんで?」とローズは言った。


「ここの管理者になると離れることはできないの」と小梅おうめは言った。


「それじゃ、次の管理者は私がなるよ、小梅は私と召喚の契約してくれると私はここの管理もできるし、自由に出入りもできる、それに良い事を思いついた」とローズは言った。


「良い事を思いついたってなんの?」と小梅おうめは言った。


「百鬼夜行、来るものは百鬼の市の道で迷わず、百鬼が祓魔」とローズは言った。


「祓魔の新時代が来そうだね、私はローズの願いを叶えさせる」と小梅おうめは言った。


「ありがとう」とローズは言った。


「実はかなり昔に私はあるお寺に行った、ゼンはそこに居なかったがある僧侶はこの金鐘罩きんしょうとうの修行マニュアルをくれた」と小梅おうめは言った。


小梅は一冊の本をテーブルに置いた。


「私は自身で妖狐の王に叩き込まれた体術を廃してから金鐘罩きんしょうとうの修行マニュアルを見ながら修行していた」と小梅おうめは言った。


「実は、私も妖狐の王から叩き込まれた体術を廃したい」とローズは言った。


「体術を廃す時かなりの勇気が必要であり、体術を廃すこと自体が祓魔業界やカンフー業界では相当な一大事である」と小梅おうめは言った。


「一大事......」とローズは言った。


「祓魔業界では気持ち強いものが具現化できる、執念や怨念の場合は祓魔師が手元に神器しんきがない時に体術で戦うしかない、カンフー業界では体術がないと生計ができないためただの廃人になる」と小梅おうめは言った。


ローズは小梅の言葉を聞いて、金鐘罩きんしょうとうの修行マニュアルの表紙を見てた。


「これは少林寺しょうりんじの拳法!部外者でも修行できる!少林寺は世界有名なので、ある意味でこれは虎の巻じゃないか」とローズは修行マニュアルを見ながら言った。


小梅おうめはずっとゼンは少林寺の中にいると思っていた。善は小梅に会いたくないので人を派遣して、小梅にこの修行マニュアルをあげたと思っている。なぜなら、小梅がまだリャンだった時の小さい頃、ゼンはよくリャンを守っていたのだ。


しかし、ローズの言葉は小梅の考えを払拭した。


「そうね!ローズは妖狐の王の体術を廃してから、新しい体術と金鐘罩きんしょうとうを修行しよう」と小梅おうめは言った。


小梅はローズを見つめた。


妖狐の王の瘴気しょうきは体術とともにローズの身体に叩き込んだ、ローズの身体に元から自身の神気しんきが発していた。このままだと、瘴気と神気が衝突し、体内の内力ないりょくが不安定になり最終的にローズの命が危ないのだ。


今はローズがまだ気がついてないけど、ローズが気がついた途端は既に手遅れなのだ。おへそより指三から四本分下にあるツボが丹田たんでんと称される、マイクを使わない舞台や演劇では稽古や本番時に丹田から発声すると台詞がはっきり観客に伝わるのだ。


祓魔業界とカンフー業界は内力ないりょく丹田たんでんに貯蔵されて、内力の脈を通して内力が身体に流れるのだ。内力と体術は互いに補完し合い、内力は電池に相当し、体術は機械に相当し、電池があって機械がなければ電池の使い道はない、機械があって電池がなければ機械が動かないのだ。


今、ローズの内力ないりょくは未来のローズから貰ったもの、妖狐の王の体術と瘴気しょうき、ローズ自身の神気しんき二種類の気は内力ないりょくと次第に絡み合い始まるので難しいのだ。ただ体術を廃すや内力を廃すなら方法はいくらでもある。


凶悪な方法としては、外部打撃で障害に至ると自然に体術や拳法を使えない、また、方法は十分に巧みで出血が少ない代償で手と足の脈を断ち切ると廃すことができる。肩甲骨と鎖骨を刺し通すは長期監禁に適用される、あまり皮も肉もないので刺し通すと痛いのだ。


血管や内臓に関係ないので命の保証はある。


また、肩甲骨と鎖骨は内力ないりょくが通る脈にあり、ついでに内力も廃れるので敵に命の保証をしたい場合は肩甲骨と鎖骨を刺し通す方法は一石二鳥なのだ。他に凶悪な方法は丹田たんでん自体を廃す、内力が通る脈を廃す、相手からの打ち傷及び毒を盛るなどいくつかの手段がある。


しかし、ローズは小梅おうめの友人なので凶悪な方法を使えないのだ。すると、小梅おうめは医療の術とも称される流転の術を使い、両手は肩甲骨に当てて妖狐の王の瘴気しょうきをローズの身体から押し出そうとした。


治療中にローズの目が閉じっていた。ある場所がローズの記憶の奥深くから浮かび上がた。


その場所は、深い山と谷の中で緑の竹は守護の障壁のように世間の視線から遮り、太陽の光が竹の葉の隙間を通して斑々とした光と影を形成し、神秘的で静かな感じなのだ。竹の障壁の中に小道が通り、周囲に様々な珍しい草花の香りが空気中に漂っていた。


入り口は澄んだ川に古い石橋が架かけられ、川の水が流れあった。囀る小鳥と耳に心地よい水の音がして、まるで自然が用意したシンフォニーのようだ。石橋の両側は生い茂った竹の林があり、竹の林を通り抜けると広い芝生が目の前に広がった。


絨毯のような芝生に柔らかい緑の芽が生えてあった。芝生の中央に柱と屋根のみで作られていた壁がない四阿しあがあり、簡素な建屋ではなかった。四阿の頂上にトーテムが彫られていた。トーテムをはっきり見ようとしたところ、ローズがいた場所が消えた。


その場所にローズが実際に行ったことあるのか、ただ印象深い夢だったのか、ローズも不明なのだ。


治療が終えて、ローズは目を開けた。長年に渡ってローズの身体に蓄積された瘴気は、一気に取り除くのは簡単なことではなく、小梅おうめ内力ないりょくを尽くして、ローズの治療を手伝った。押し出された瘴気は煙のように消えたのだ。


そして、漢方で補益の目的に必要に使われる丹薬たんやくをローズに飲ませた。医療の術と称される流転の術と合わせて丹薬たんやくを使うとローズの瘴気は完全に消えた。丹薬は羅生門の品物に所属しないためローズは食べれるのだ。


丹薬は人族じんぞくで採った薬草を使い練ったもの。人族にお盆と春秋彼岸があるのだ。年に一度のお盆と春秋彼岸に羅生門が開門する、開門後に羅生門に所属する者は一時的に親族のもとへ戻るために羅生門から出るのだ。


人族じんぞくではお盆休みに帰省ラッシュがあるのだ。羅生門の者が親族の元へ戻るために同じく帰省ラッシュがあるのだ。お盆と春秋彼岸だけ小梅おうめは年に三回ほど羅生門から出られる機会がある、その際に丹薬に使う薬草を探しているのだ。


小梅おうめは丹薬を練る事と自身は元々人間である秘密を隠すために屋敷に使用人や誰も居させない。これで小梅おうめと屋敷はより一層に神秘さに包まれていく。普通は好奇心などの気持ちによって神秘さの正体を突き止めたいのだ。


しかし、羅生門中の者は誰も小梅おうめの神秘さを触れようとしない。これは妖狐の王が裏で小梅おうめを支えているだからではなく、むしろ、羅生門でも神秘さに触れるにはリスクがあるのだ。そのリスクとはプライバシーの侵害なのだ。


神秘さの正体を突き止めた者はいらないものに纏われて成仏できないのだ。もともと羅生門中の者にもプライバシーがあり、これも小梅おうめが気づいたのだ。羅生門中の者が成仏できるよう小梅おうめが管理者になった後自ら発布した最初のルールなのだ。


つまり、このルールによって、羅生門中の者の成仏率せいぶつりつが高くなったのだ。同時に小梅おうめも自分自身を守った。この時、肩甲骨に当てた小梅の手を離れた。ローズはまるで固まった身体がほぐされたかのように気持ちいいのだ。


「治療の最中に私は山、谷と竹林を見えた」とローズは言った。


「そこはローズが行ったことのある場所だと思う」と小梅おうめは言った。


「なぜ、そう言うのですか?」とローズは言った。


「そこは魔族まぞくの谷です。ローズが見た場所は魔族の中で最も純粋な場所であり、魔族の立入禁止区域です。小梅になった私は神器しんきを羅生門へ帰還させるために魔族の谷へ向かった、そこに赤ん坊がいた、その赤ん坊は魔族の谷でとても違いに見える、魔族の経由でその赤ん坊と知り合ったが、残念なのはまだ幼かったので私の事を覚えてないかもしれない、その赤ん坊の名はローズ」と小梅おうめは言った。


「今、どうやって私がローズと分かったのですか?」とローズは言った。


「身体はローズ自身のものではないが魂はローズのもの、全ての魂はユニークです、普通の魂は魂回収者に収められた後に元の名前は消えるが、不死身の魂は魂回収者に収められても名前は消えない、それに私は魂の認識ができるが元の名前は何だったのか等の、名前消えた魂を認識できない、それを認識できるのは死神と魂回収者しかない」と小梅おうめは言った。


「そう言う事だったのですね、小梅おうめは私の身元を知ってる?もし、知っていたら私に教えてほしい」とローズは言った。


「貴女の名前はローズしか知らない、貴女はどんな一族とどんな家庭に生まれたのか、私は分からない、今まで、これからも私が知ってる事をしか言えない」と小梅おうめは言った。


ローズは頷いた。


「昔、魔族まぞくからローズが高貴で純粋な血統を持っていると聞いた、身分も生まれてすぐ頂点のもの、印象では魔族がローズが現れてから混乱し始め、これもローズが他の種族が望む物になり更に種族大戦の原因にもなった、当時の種族大戦に入った種族は最初の魔族まぞくです、他に妖族ようぞく冥族めいぞく幽鬼族ゆうきぞく魑魅族すだまぞくです」と小梅おうめは言った。


「私の身分と高貴な血統は一体何ですか?」とローズは言った。もうすぐ答えを得られると思ったローズは少し気持ちが昂った、イントネーションが少しだけ高くなった。


「私もよく分からない」と小梅おうめは言った。


「そうよね、小梅はただ魔族から話を聞いただけですから」とローズは言った。


「私は梅の妖怪になった後に妖族ようぞくの一員になったが、種族大戦時に私は既にここの管理者だったので大戦に触れていなかった、もともと触れたくない」と小梅おうめは言った。


ローズは沈黙した。


「当時、年に一度のお盆と春秋彼岸時に種族大戦が休戦していた、どんな事であろうが孝行が先なのでお盆と春秋彼岸のために道を空けた、特にこの羅生門のため」と小梅おうめは言った。


この時のローズは小梅おうめが管理者になる前に羅生門でいったい何が起こったのかを知りたがっていたが、しかし、それよりもローズは自分の身分を知りたがっていたのが先なのだ。


「その時は種族大戦で多くの場所が荒野になり、薬草を採るのは難しく、その時の薬草と丹薬たんやく人族じんぞくで非常に珍しいもの、まして、私が出かけられるのはお盆と春秋彼岸時にしかので、例え私が手に入れた薬草は人族と同じ物でも、はるかに貴重のもの」と小梅おうめは言った。


「うん、そう言われるとそうですね。まだ知りたいのは魔族まぞく妖族ようぞく冥族めいぞく幽鬼族ゆうきぞく、そして魑魅族すだまぞくは一体何ものなの?」とローズは言った。


「まず、魔族まぞくは残酷で殺に飢えていて、パワーを崇め、強力な魔力マーナ武力オフェンシブパワーを持つ一族、本当の魔族の住み所は烈火が激しく燃えて闇が深く、破壊に満ちている」と小梅おうめは言った。


座っていた小梅は立ち上がり再び本棚に向かった。ある本を本棚から取り出した。一冊の本を手に持った小梅はローズに振り向いた。


「これは?」とローズは言った。


「これは全種族が記載された種族典しゅぞくてんです、人族じんぞくの辞典のようなもの、種族典は種族大戦の時に破損されてたが最善を尽くして修復している」と小梅おうめは言った。


「全種族の種族典......」とローズは言った。ローズが欲しかった答えは種族典に載ったかもしれない。


「次、妖族ようぞくはそのものの形態がそれぞれ異なり、あるものは妖艶で魅力的であり、あるものは凶悪である。強力な妖力ようりょくと呪術を持っているが、その呪術は祓魔師が使う呪術とは全く別物であり、妖気ようきに満ちている、妖気とは妖怪の命の源である、妖族が住む場所はリスクとチャンスに満ちている」と小梅おうめは言った。


「リスクとチャンスね」とローズは言った。


すると、小梅おうめはローズに答えなかった。むしろ、種族典しゅぞくてんを開き、一枚の紙に両面に種族の情報が載っていた。小梅は頁をめくりローズは種族典しゅぞくてんを見ていた。


冥族めいぞくは亡霊です、亡霊の気を呪いに変えれたのと繁殖力を持ち始めたことで亡霊の範疇から離れて一族になり、子孫は生まれつき呪いに精通している、一族の建物は奈落の橋と三途の川があり、住む場所に彼岸花が咲き、神秘と悲しみに満ちている」と小梅おうめは言った。


ローズは静かに聞いていた。


幽鬼族ゆうきぞくは異常な情熱で生きているものを絡み、世界の初めから闇の存在である、一族は怨霊の怒りの具現化です、一族は炎獄の炎を操れる、住む場所に噴火する火山とマグマがあり、常にデンジャラスが満ちている」と小梅おうめは言った。


ローズは手を伸ばして種族典しゅぞくてんの頁をめくり一頁が欠けていた。この時、ローズは種族典に自分が望む答えがないはずだと思った。


「最後、魑魅族すだまぞくは目標を達するのに異常に極めている、世界の初めから闇の存在であり、悪霊の私利私欲の具現化です、一族は極寒を操れる、住む場所は常に豪雪があり、白い雪の中に魅惑が満ちている」と小梅おうめは言った。


「なるほど、小梅が話した種族に人族じんぞくと私の一族以外もほかの種族がいるよね、私は種族大戦を知らなかったが、常識的に言えば大戦の最中に私の一族は大戦を知らないはずがない私を危険に晒し、助けてくれないのはどうして」とローズは言った。


「ほかの種族もいるよ、妖精族ようせいぞく、人魚族、霊族れいぞく仙族せんぞく獣人族じゅうじんぞく竜族りゅうぞくがいる、ローズは種族大戦を知らないのは人族じんぞくにいたからと思う、一族が助けないのではなく、助けられないのかもしれない、一族には一族が困った事があるかもしれない」と小梅おうめは言った。


「一族が困った事......」とローズは言った。


「個人的に知ってる事はこれだけ、羅生門で情報を得る方法が先端ではないので最新情報を得たとしても一年前のものしかない」と小梅おうめは言った。


「ありがとうね、小梅」とローズは言った。


ローズは自分の身元にもう一歩は近づいた。

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