第三話 急行の寝台列車
朝、ローズは婆さん家から覚めた。
眠そうにベッドから降りて、準備した荷物を見ながら自分の身元を考えていた。ローズは自分の両親がどんな人なのかと考えている。たちまち、部屋の外から婆さんの声が届く。
「ローズ、朝ごはんできたよ」と婆さんは言う。
ローズはあとでチャイナタウン行きの列車に乗らなければならないと思うと、慌てて部屋の外に出て身支度をする。身支度が終わると、ローズは椅子に座った。テーブルの上に朝ごはんが置かれている。牛乳、婆さんのちょっとの遊び心で作った可愛いタコウインナーと目玉焼き。
黄身がぷるぷるな目玉焼きはまるで温泉たまごみたいだ。こんなにぷるぷるな目玉焼きは婆さんの特技である。婆さんしか作りれないのだ。真珠ペンダントを取り戻すと二度と婆さんが作ったぷるぷる目玉焼きを食べることがないかもしれない。それを思ったローズはついに涙がぽろっと出た。
ローズは気づいた、これが人間の感情だと。ローズに背中を向いている、洗い物をしている婆さんは多分ローズの感情に気づいていないだろう。婆さんはローズのお椀を方付けたあとにローズと一緒に荷物を持って駅に向かったのだ。駅は人が多くて、切符売り場に人がたくさん並んでいる。
しばらく待った後にやっとローズと婆さんの番が来た。二人は行きの特急券しか買わなかった。列車の切符を受け取った時にローズは心の中に不眠の緊張感があった。初めて寝台列車で夜を過すのだ。
ナサーズ帝国の一部の全列寝台、また全列座席の列車を除き、ほとんどの長距離列車は主に列車先頭は車掌室、貴族ルーム荷物車両、貴族ルーム個室、貴族ルーム食堂車、郵便車両、庶民ルーム寝台車両、庶民ルーム座席車両と庶民ルーム荷物車で構成されている。庶民の寝台車両に仕切りがあり、各仕切りに寝台があるのだ。
夜になると、乗務員が列車の廊下のカーテンを閉めたのだ。夜間運転時に進行方向の逆方向から列車が来た時、運転者は遠近光を交互に使用して相手に示す必要があるので強い光は真っ暗な環境で特に乗客にとって眩しいのだ。また、列車が駅に入る時や市街地を通過する時カーテンを閉めるとカーテンは窓の外の光を効果的に遮断できるのだ。
列車の揺れでローズは眠りにくく列車の音を聞いているうちにお腹が空いた。ローズはテーブルでパンとお水を出した。美味しそうにパンを食べる、お水は軟水で口に優しいのだ。パンを食べ終えて暫くすると、ローズは寝台で横になった。そして、夜中に定時に止まるための列車のブレーキはぜんぜん気持ち良くなく、無重力感があるのだ。
寝台で横になっているローズは列車に乗る前に婆さんが言った言葉を思い出した。寝台は座席に比べて緩やかな幸福感を感じるが上の段の硬い寝台は幸福感の範囲外である、横になって寝るのにぴったりであるが他の動きはできないなのだ。ローズの寝台は下の段で良かった、動きが少し取れる。
この時、ひとしきりの尿意がローズに襲った。お水を飲んだせいでローズはお手洗いに行くことになった。お手洗いに有名な探偵小説であるオリエント急行殺人事件の本が置かれてあった。この探偵小説はマーガレットの屋敷の図書室で見た事がある、しかし、これは誰かの忘れ物なのかな?ローズは思いつつ、手を洗い流してベットに戻った。
次の日、列車の音が一晩中に伴ったがなんとか浅く寝てた。ローズはぼんやりと目を開け、空が青く、日差しが柔らかく寝台列車の窓から差し込んできた。朝が来たのだ。乗務員は廊下のカーテンを開けたのだ。ローズは目覚めた後に婆さんのベットを見た、婆さんは珍しくまだ起きていない。
ローズは婆さんの家に住んでいた時に毎朝、婆さんが先に起きて朝ごはんを作って置いた。今日、ローズは先に起きたので洗面所から戻った後に婆さんの分の朝ご飯をテーブルに出しとこうとローズは思っている。列車の音であんまり休められなかったと思うが、それでも睡眠を多く婆さんに取らせるため、起こさないようにローズは洗面所に向かった。
洗面所は寝台車両の引き継ぎ所にある。一つの車両に二つの洗面所があるのだ。今、寝台に人が少ないので顔を洗うのがちょっと便利である。ローズは洗面所のドアを開け、先に目に入ったのはオリエント急行殺人事件の本であった、また誰かの忘れ物かとローズは思いながら、歯ブラシに歯磨き粉をつけた。
洗面所で支度が終わった後、係員にこの忘れ物を届けに行こうとしたローズは洗面所から出た。ローズが持っている本を見た見知らぬ女がローズに話をかけた。「これってどこにあったの?」と見知らぬ女は本を指しながら言う。
「洗面所にあった物です」とローズは言う。
「それ私のです、さき洗面所で忘れていた」と見知らぬ女は言う。
「そうなのですね、係員に届ける所でした」とローズは言う。ローズは本を見知らぬ女に返した。
「ありがとうね」と見知らぬ女は言う。見知らぬ女は思わず微笑みを浮かべ、その笑顔には人に知られざる危険の匂いが隠されている。
「いいえ」とローズは言う。
婆さんは寝台から起きた時、ちょうどローズは寝台のほうに戻って来た、ローズの手を見た婆さんはローズに話しをした。
「ローズ!あの手はどうしたの?」と婆さんは言う。
「何が?」とローズは言う。
「気づいないのね、その左手はローズと違ったオーラが出ている、ローズは変なものでも触ったの?」と婆さんは言う。
「いいえ、何も。たださきは誰かの忘れ物があって届けに行っただけです」とローズは言う。
「そうか」と婆さんは言う。忘れ物と言えば、婆さんが思い出すのは昨日お手洗いで見た探偵小説である。ローズを心配で婆さんはさらに問いかけた。
「届けに行った忘れ物は何だったの?」と婆さんが言う。
「洗面所で置かれてあった本で題名はオリエント急行殺人事件です」とローズは言う。
「洗面所にもあったんだ。昨日、お手洗いで同じ探偵小説が置かれてあった、悪のオーラが漂っていた。移転の術なのかもしれない」と婆さんは言う。
「移転の術とは?」とローズは言う。ローズの頭中にはてながポンポンポンと出ている。
「移転の術は触った物に残るオーラは次のひとに取り憑かせる、本や他の物などを媒介とし、その取り憑かせたオーラはヒトを腐食する」と婆さんは言う。
「そんなに厄介なものが世に存在するなんて」とローズは言う。
「これだけはまだ厄介ではない、最も厄介なのは触った者は知らずに次から次へと拡散するのである。今からローズは暫く何も触ってはいけない、何も触らなければ拡散しないが、腐食が始まるまでは何とかしないと」と婆さんは言う。婆さんの話す声が消えた途端に廊下から胸が張り裂けるような魂の悲鳴が聞こえた。
「ギャアアアアアア、やめて、腐食しないで助けて」と廊下にいる女の魂が言う。
悲鳴を聞こえたローズと婆さんは顔を見合わせた、婆さんは先に廊下に行った、ローズは婆さんの後ろについて廊下に行った。二人の目の前に現れたのは頭の半分を腐食された女。
「腐食のスピードが早すぎる、救えに間に合わない」と婆さんは言う。婆さんはしゃがんで地面に横たわっている女性の魂を見つめ、両手を合わせた。
チーン。
女性は魂が腐食されていたので肉体が残されて、抜け殻になったのだ。抜け殻だけは行動がとても不便なのだ。抜け殻の女性は廊下の壁に沿って床に座り込む。廊下の通りすがりの人は腐食された女の魂を見えないので床に座り込んだ女性に対し両手を合わせた婆さんを見てびっくりした。
中に親切な通りすがりの人がいる。
「どうしました?大丈夫ですか?」と親切な通りすがりの人が婆さんに尋ねた。
「コンタクトレンズを探している」と婆さんは言う。
「婆さんがコンタクトレンズを探すのをちょうど手伝おうとしているところだよ、ありがとうね」とローズは言う。
親切な通行人もあまり考えずに去っていった。列車内は平和で静かである、一般人に知られたらまずい事になるので、これは眼に見えない魂同士の戦いなのだ。
「貴女たち、見えるよね」とある女性は言う。女は意図的または無意識に庶民ルームに現れた。
「何をですか?」とローズは言う。
「何をって、「コンタクトレンズ」です。ここでそれについて話すのが不便なので場所を変えましょう」とある女性は言う。
女性の声を聞いた婆さんは察した、この女性は自分とローズと一緒に戦いたい、同時にこの女性の自身の目的も完成したい。しかし、この女性はどんな目的があるのかをはっきりしなければならない、良い目的であったらそれでいいが、悪い目的であったら自分とローズも後々変に巻き込まれ良い結末はないだろう、婆さんは警戒心が起こしあの女性を見た。
皺のない純黒の長いトレンチコートに黒い服、金色のメガネ、メガネのレンズを通し瞳が見える、冷たい瞳に少しの動揺も現せない、まるでどこかの医学生の姿のようだが正統派の医学生とは少し何かが違う。汚れがない靴。持ち物は茶色の手持ちのスーツケース。この女性は祓魔師......いや、祓魔師ではない、祓魔師とは違ったオーラを感じる、見覚えがある女なのだ。
婆さんは思い出した、この女性の名はビオラ・サルビア。結構、数年前に指名手配状に載せられたことがあり、町中から指名手配されたことがある。一人の謀士のおかげで指名手配を撤去された。その後、二度と指名手配されなかった。言わなきゃ今頃の人々はほぼビオラが指名手配された事を忘れいるだろう。
「貴女に会ったことがある。貴女と相談したいことがある」とビオラは言う。
「一度だけ会ったことがある人に相談事ですか?」と婆さんは言う。
「そうです」とビオラは言う。
婆さんは無言。
「貴女と一度会ったことがあるので、話すのがもっと楽じゃないですか?」とビオラは言う。
婆さんは頭の中にクエスチョンマークを湧き出しながら無言。
「婆さん、「コンタクトレンズ」の件は協力してください」とビオラは言う。婆さんは分かっていたがすぐに応じなかった。
ビオラは床に座っている女を一瞥した。
「この女は今日が命日じゃないのに死んじゃった、魂は腐食された時は救えない、今救える術はまだ開発されていない、この列車の人を救わないと魂回収者も大変だろう」とビオラ言う。
婆さんは沈黙した。
「女の魂はとりあえずはここに安置しよう、済んだ後に女を故郷に帰させる」とビオラは言う。ビオラは水晶の玉を取り出した、魂を水晶の玉に宿りさせた。
廊下で通りすがりの人はビオラの行動をスールする人もいるし、ビオラが変な人だなとじろじろ見る子どももいる、そして、再び別の親切な通りすがりの人が婆さんとビオラに尋ねた。
「あの、大丈夫ですか?どうなさいましたか?」と親切な通りすがりの人は言う。
「ちょっとコンタクトレンズを落としてしまった」とビオラは言う。
「彼女がコンタクトレンズを探すのを手伝おうとしているところだよ、ありがとうね」と婆さんは言う。婆さんは表情を隠すのが上手いのだ。
ローズは婆さんとビオラの反応を見て笑いを我慢したのだ。仕方なく列車の窓の外の景色を眺めているふりをした。
「そうなんだね、コンタクトレンズ透明ですから見つかると良いね」と親切な通りすがりの人は言う。親切な通りすがりの人はあまり深く考えずに立ち去った。
ビオラは女性の魂を水晶の玉に宿させた後に婆さんはビオラに話をかけた。
「ビオラ、「コンタクトレンズ」件の話を聞くので静かなと所へ移動しましょう」と婆さんは言う。
婆さんに名前を呼ばれたビオラは気持ちの浮き沈み少しもなかった。目つきはずっと穏やかである。
「ここへどうぞ」と婆さんは言う。婆さんは寝台室に戻り、ローズも再び戻った。婆さんは一段目の寝台の下から折り畳み椅子を出して広げた。
「どうぞ、おかけください」と婆さんは言う。
「ありがとう」とビオラは言う。
ビオラと婆さんは椅子に座った。
ビオラは話し出した、「婆さんは私がどんな目的があるのか、目的が良いのか、悪いのか、それとも私がいったい誰なのかを知りたいですね、私の職業は巫医です、この職業は巫女と医者の二重の機能を兼ね備えている」
婆さんはもともと貴族だった時、ナサーズ帝国の人ではないのに最高裁判所の貴族院で地位を獲得し、ずっと屹立していた。これは一般人ができる事ではない。そして、当時の最も勢力が大きくてあからさまに国王や王妃を監視できるほどのフィス公爵を告発し、フィス公爵を倒した後に謀士を育成した。
引退後、自ら貴族の世界を離れて庶民になった。そしてまさか婆さんは祓魔の力を持っていたとは思ってもみなかった。心は鉄のように堅く、庶民と付き添い、先例となる事を恐れなかった婆さんは確かに当時に居た場所がナサーズ帝国ではなかったら何者でもない。
婆さんがナサーズ帝国に居たからこのような伝説的な人物の婆さんと向き合うビオラは手の内を明らかにしない理由がないのだ。
「私は医療学校の学生でした、私自身だけでこの列車の人を救えないので、貴女たちの助けが必要です。それだけではなく王宮に大事な人がいるです、その人を救たい」とビオラは言う。
「王宮で救いたい人は誰ですか?」と婆さんは言う。
「マーガレット・キャヴェンディッシュ」とビオラは言う。
「分かった、協力する」と婆さんは言う。婆さんは既に心当たりがあるのだ、マーガレットは婆さんが育成した隠れた謀士の一人だからだ。
「ありがとうございます、あと今まで私はある子どもを探していきた」とビオラは言う。ビオラは婆さんに手伝ってもらいたい。
婆さんは王宮のタイミングが熟したことを知った。
「ビオラ、はっきり言うとどうせ列車の人を救うことについて最後は協力するですから。貴女はさっきの廊下で私は価値があるからに話をかけて来たでしょう」と婆さん言う。
「そうです」とビオラは言う。
「貴女が思った通りに私を利用させる。同時に貴女を利用するので、私が手伝う事を期待しないでください」と婆さんは言う。
婆さんが既に貴族院から引退したので今は庶民の身分であり子どもの事を気にしたくなかったので断った。婆さんとビオラの一面の縁も子どもを王宮から送り出した日に過ぎない。
婆さんに断られたこれはいいですね。期待しないと失望しない。忠誠心を持たない事は裏切りをしない。絆などが逆に面倒くさいので、婆さんと労働協定書でも契約したくなったなあ。ビオラは婆さんの隣りにいるローズを一瞥してローズの手を見た。
「それ貴女の手にいると腐食しないね」とビオラはローズに言う。
「え?」ローズは言う。
「ごめん、貴女のお名前は?」とビオラは言う。
「私はローズ・アウロラ・デ・アレグザンドラ・ディビスです、ローズと呼んでください」とローズは言う。
「自己紹介が遅くなってすみません、私の名はビオラ・サルビア、ビオラと呼んでね」とビオラはローズに言う。
「そのオーラがローズの手に付いてから結構な時間が経ったでしょう、普通なら既に腐食が始まっている、腐食性オーラはローズを強くすることができる、ローズの体質はそういう体質だから」とビオラは言う。
「そうなんだ」とローズは言う。
「ビオラはどうしてそんなに詳しく知っているの?」と婆さんは言う。
「医療学校の学生だった頃に腐食性オーラをテーマにして、研究をしていた」とビオラは言う。
「そうなんだね」と婆さんは言う。
ビオラは茶色のスーツケースから手袋を取り出した。
「ローズと初対面なので小さな贈り物をあげる、これは安全手袋と言い、これをつけるとローズの手にあるオーラは隠され、遮断できる。人と握手しても問題ないよ」とビオラはローズに言う。
「わぁ!綺麗な手袋ですね、ありがとうございます」とローズは言う。
ローズは安全手袋を受け取り左手に付けた。サイズは大きくなく小さくもなく、良い感じなのだ。まるでローズのためにオーダーメイドでもしたかのようだ。
「これからこの列車を助けるしかない」とローズは言う。
「助けないとこの列車にいる人だけでなく、列車以外の人も腐食性オーラに感染し亡くなってしまう可能性もある、あの女はこの列車中での病原体である」とビオラは言う。
「しかし、列車を助けるにあの女を探し出せなければいけない」と婆さんは言う。
「ローズはあの探偵小説を受け取った女の顔を見たでしょう?今はローズにあの女の似顔絵を描いてもらうしかない。私たちは絵を持って分けて探しに行く」とビオラは言う。
ローズは鉛筆と紙でその女の姿を描いた、立体感があり、まるで絵から飛び出そうようなのだ。三人とも女の似顔絵を手に持った。
「あの女が降車したら探す範囲が広くなるので、その時になると私たちで探し出すのは無理もある、出来る限り列車が次の駅まで到着する前に探し出そう」と婆さんは言う。
「私と婆さんは庶民の切符なので列車先頭の貴族ルームに入れない、私と婆さんは庶民ルームで探す、貴族ルームは......」とローズは言う。
「貴族ルームは任せて!」とビオラは言う。
これでローズ、婆さんとビオラは暫く別行動なのだ。列車の庶民ルームの廊下は少し人が混んでいる。ローズは腐食性オーラを移転の術で人を感染させるものは悪の祓魔師か、魔物かを定めることはできず、この人を探すこと自体の重要性を分かっている。ローズは人探しの事を周りに知られないようにひそかに周りを眺めいる。
あの女がローズ達は人を探している事が知っていても知らなくても個人の都合で次の駅で降りる可能性もあるのだ。それを思ったローズの焦りは列車が徐々に次の駅に近づいき時間がない焦りなのか、それとも一刻も早くこの列車を助けないといけない焦りなのか、分からなくなってしまっている。
ローズがとても焦っていた時に背中に寒い空気が襲来した、突然、その寒い空気とともに冷たい静寂中に引き込んだようだ。現実から離れ、列車の音と周りの人の会話の音が聞こえない。冷たい静寂中に鳥肌が立つ視線を感じた。寒い空気をローズの焦った気持ちを消させた。
ローズの焦った気持ちが消えた後に背中から伝わってくる視線感が消え、まさにこの感じでローズはあの女が魔物である可能性がもっと高いと信じている。この時、婆さんはローズの後ろに立っている。
「不安と焦りの気持ちで何もうまくできないので、焦らないで」と婆さんは言う。
ローズは婆さんに何を言おうとしたばかりで婆さんの顔を見ると少し違和感を感じて、言葉が口元から出そうとした時に飲み込んだ。ローズは落ち着き考えた。ビオラは列車の貴族ルームへ行ったのだ。婆さんは列車全体の後半にある庶民ルームの先頭へ行き探し始めた、婆さんの足が普通の人より歩くスピードが遅いので早くここに辿り着かないのだ。
まして、庶民ルームの廊下は出入りする人も多くなった。今、ローズの位置は庶民ルームの座席車両なのだ。婆さんがローズの居場所に着くのは時間がかかるに間違いないのだ。庶民ルームの座席車両にある座席は乗客の乗車時の気分の良さのために先頭の進行方向に向いているのだ。
座席に座っている人々は各自が自分のやる事に追われている。窓の外の風景がさっと通り過ぎた。これはごく普通の列車のようだ。庶民ルームの隅に柳宇という若い推理小説作家が座っている。柳宇は新しい作品のインスピレーションを探しているが今回の旅行はまさに柳宇が特別に手配したものだ。
観察と体験を通じて新しい物語の手がかりを見つけることを望んでいる。突然、怪しげな雰囲気が漂ってきて魔物が見える人は車内の温度が急激に下がるのを感知することができ、邪悪な力がこっそりとこの空間を侵食しているようなのだ。
柳宇も感知した。ふっと頭を見上げると車両の果てに黒い影が現れた。黒い影が段々はっきりしてきて、魔物だなんて!魔物の体つきは背が高くて、全身に暗い気配が漂っている。その目は赤く輝いていて、まるで人の全て見抜くことができるようだ。
柳宇は驚いた。柳宇は世の中に他人が見えないものが見える能力があることを知っているが、自分がそのような能力を持つとは思っていなかった。同時に柳宇はすぐにこの魔物が人を探しに来ていることを悟った。
柳宇はその魔物が若い女の子と話しているのを見た。魔物は柳宇に気づかなかった。柳宇は自分の推理を利用して謎を解くことにした、車内の乗客を観察し、可能な手がかりを探し始めた。
車内の一部の人たちが異常に穏やかに行動し、まるで魔物が存在しないかのように行動していることに気づいた。穏やかに行動している人たちは魔物が見えない人たちだ。柳宇の視線はついに若い女の子のローズにとどまった。
ローズの目つきに少し不安が表れているが何か秘密が隠されているようだからなのだ。柳宇は手がかりが得られるかどうか、まだ分からないけどローズと話すことにした。
「こんにちは、私は柳宇です」柳宇は微笑みながらローズに挨拶した。
ローズは少し驚いて柳宇を見た、「こんにちは、私はローズです、柳さんは作家でしょうか?ずっとみんなを観察しているようですね」と答えた。
柳宇はうなずいて、「その魔物に気付きましたか?なぜそれがここに現れたと思いますか?」と尋ねた。
ローズはしばらく沈黙した後、「柳さんが申し上げた魔物と戦ったことがないので、確実ではないがこの魔物は千の顔を持ち、八方美人で人の心を惑わすのが上手と思います」とささやいた。
柳宇は驚いてローズを見つめた。なぜ、普通の十代の単純の女の子が年齢に合わない言葉を言うのかは理解できない。まさか、何を経験したんじゃないか?柳宇は疑問を持って問い続けることにした。
「なぜ、この魔物は千の顔を持ち、八方美人で人の心を惑わすのが上手だと言うのですか?まさか、ローズはどんな目的があるですか?」柳宇の声は疑惑に満ちている。
ローズは余計な問題を起こしていけないと思った。そうしないと狂人病院に護送されるだけでなく、婆さんとはおさらばなるのも、今までの旅も失敗する。ローズはため息をついた、「私はメイドで、貴族の人間性が複雑だ。荘園や大豪邸のことは財政権の以外に召使の目と耳から逃れることはない」と説明した。
柳宇はローズの説明を聞いて考え始めた。昔に自分が読んだ人間性と術式に関する本を思い出した。本の中には心魔という術式が書かれてあった。この術式の力は魔物の力と並んでいるという。
もちろん、陽に転じて陰を制す、人であれ妖であれ、気持ちに喰われるし、または気持ちを食う。人を食う気持ちはどこから来たのか?これは一体誰の術式ですか?柳宇はローズを助けられるか、どうかを試してみることにした。
「今、気になるものを探そう」と柳宇は言う。柳宇とローズは一緒に調査を始める。ローズは荷物車両の方向に一瞥した、第六感はローズに一つのことを教えてくれた。
「最後尾の荷物車両のほうはちょっと尋常ではないかもしれない」とローズは言う。
しかし、荷物車両は荷扱い事務室も設置されているため、乗客の立ち入りを禁止されいる。鍵は荷扱い乗務員が保管しているのだ。真実のために行動するしかないのだ。ローズは荷物車両のドアから中を眺めた。見えたのは廊下、点検用の器具室、洗浄室、お手洗い、独立暖房ボイラー室、廊下の突き当たりに荷扱い事務室がある。
「荷物室は荷扱い乗務員の事務室の奥にあると思われる」とローズは言う。
「どうするつもりですか?」柳宇はローズと知り合ったばかりがローズ意図を推測できるけれども......
「私は協力します」と柳宇は言う。
ローズは人差し指を口に当てて言う、「しー。一人の乗務員がこっちに向かって歩いてきた、柳さんは睡眠薬を持ってるかな?」
「持ってない」と柳宇は言う。
この時、荷物車両ドアが開かれ、一人の乗務員がちょうど出て左側を見た。一部の人はどこであろうとドアから出ると癖ですぐ左側を見るのだ。ローズと柳宇はその癖を利用するだろう。
「列車の進行方向から乗客の移動がない」と柳宇は乗務員に聞こえないようにローズの耳元でささやいた。
その隙で右側にいたローズは臨機応変に乗務員の後ろ首に手刀でトンとやって乗務員がしばらくの間気絶なのだ。ローズは荷物車両のドアを閉めた。次の事でローズは現場に指紋を残したくない。
もし、自分と関係のない犯罪が起きたら、ローズは魂の調査で残した指紋と靴の跡が警察システムに調べられる事によって「エマゴーロタ」という身分と柳宇はきっと誤解されたりして、トラブルから逃げられないでしょう。
その時ははっきり言えないことが起こるのでトラブルを防ぐ為にローズは器具室に入っり、中から棚にぶら下がっている使い捨てのゴム製の手袋とビニール製の使い捨てのシューズカバーを各二双ずつ取った。
柳宇はしばらく気絶した荷扱い乗務員を見て自分より若い少女がこんなに度胸があり、腕前が普通ではない事に気がついた。もし、手刀の力が軽すぎると相手が気絶しないと同時むしろ相手に治安部隊を呼び出されてしまう。
もし、手刀の力が重すぎると相手が手足から全く動けない重体になる。手刀を首に使うには下ろす時の力をコントロールしなければならないが、一般人にはその腕前がない。少女はただのメイドと見せかけての雇用兵なのか?龍の国のカンフーの達人なのか?
それとも、闇市の関係者なのか?当てはまる職業を考えた柳宇はローズがどんな腕前があるかを見たい。そして、手袋とシューズカバーをはめ終えた柳宇は乗務員の腕を掴み、引きずりながら中に移動している。
移動最中にもう一人の乗務員が廊下でこの光景を見た。他の乗務員に知らせよとしたらローズは手で強く二人目の乗務員の口を押さえた。
「騒がないで」とローズは小声で二人目の乗務員の耳元で言う。
「自分だけでコントロールできないのではないかと心配している」とローズは柳宇に言う。
柳宇は聞こえたけども無回答でいるが、片手はローズの代わりに二人目の乗務員の後頭部を押さえ、もう片手は口を押さえた。二人目の乗務員の白い後ろ首が見えるのだ。ローズはまた手刀でトンとやって二人目の乗務員がしばらくの間は気絶になった。これで乗務員の制服は二着揃った。
ローズと柳宇は各自で乗務員の身体を引っ張りお手洗いまで来た。各自お手洗い中の状況を確認後にローズは女性お手洗いに入り、柳宇は男性お手洗いに入ったのだ。乗務員の身体の安全の為に各自お手洗いの個室に隠して、個室のドアをロックの後に個室と天井の大きな隙間から出るのだ。その後、ローズと柳宇は荷扱い乗務員の事務室に向うのだ。
「これは何の目つきなの?」ローズは言う。
「いいえ、違う」と柳宇は言う。
「何がいいえ、何が違うなの?」とローズは言う。
「私は貴女の腕前が凄いと思う」柳宇は言う。
「今までの行動は私の年齢に合わないと言いたいでしょう」とローズは言う。
柳宇は無回答。
「私はただの十五歳。良し悪しを知っているし、ただ自分の身元が知りたい、私は周りのすべてのものが見るけど、魔物が見えず、魔物のオーラをしか感知できない。柳さんは魔物を見える、私は柳さんを信じる」とローズは言う。
柳宇はこの話を聞いてさらにローズを助けようと決心した。柳宇は事務室のドアを開けると中はデスク、書類棚、金庫、事務用の回転椅子、ベル、荷物室に通じるドアと見張り窓がある。柳宇とローズは調査の場所を分担して、柳宇は事務室を調査する、ローズは奥の荷物室を調査する。
ローズは後退しないでむしろもっとしっかりと前に進み、怖いものと直面するこそ答えを見つけられるとローズは信じている。しかし、自分がドアを開けた瞬間に魔物による致命的な一撃で死ぬことを望まないので、ローズは唇をきつく閉じて荷物室に通じるドアを見て考えた。
また見張り窓から中に状況がないことを確認した後に慎重にドアを開けようとする。ローズは病原体として本を忘れたあの女性が持つ腐食性オーラの真実がここにあることを知す。ローズがドアノブを握って回転し始めた瞬間、運命の歯車も一緒に回転し始めた。