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白練  作者: 高月和泉
第一章 帝都
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第一話 帝都

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地球の隅っこに存在するナサーズ帝国。


王室と貴族と言う身分から遠く離れた田舎に住んでゴロータ・エマには秘密があるのだ。その秘密はある事件に関係あるのだ。この事件は王室や貴族であろうと、庶民であろうと関係なくナサーズ帝国の国民ならばきっと耳にしたことがあるはずだが......


「この事件は帝都伝説なのか?」


「これは実在したことなのか?」


「きっと天地開闢てんちかいびゃくをしナサーズを造った神が人間の世界に降臨したんだよ」


人々の言い方が異なるのはもちろんだが、なんだが変な言い方になっていく。どうしてそうなったのか、誰も分からない。少なくとも誰かが事件に対する世論を操っているのだ。


操られている世論によって一部の国民たちは「信じたがるもの」を信じる、そこで人によるがプライドと偏見を混じり込んで信じたものを決定的瞬間だと思い込んでから「真実」だと信じるのだ。


しかし、「真実」を分かっていてもあの子は現在どうなっているのか、何処にいるのか、誰も分からない。本当のただ一つの真実は誰も気にしようとしないし、知る人は誰もいない。それはそうだ。人はこのように自分と関係のない人は気にしないのだ。


たとえ、相手は死後に魂は天国か、地獄かでも。しかし、いつまでも世論に気を取られる輩もいる。濁った世論に対し自分こそが正義と主張するものも、批判を煽るものも、繁栄の時代であるように願うものもいる。


エマ・ゴロータはどう見ても世論の渦巻きには立たない人だ。別に財閥の令嬢でもない、王室の当主でもない。姿も普通の田舎の農家の子である。エマの暮らしは帝都の貴族の豪邸の暮らしに比べると両者はとても程遠いが、田舎では少し良い暮らしをしている。


しかし、エマは家族のために奉公することに決めた。順調に奉公先が決まり、夢を見てながら田舎から帝都に旅に立つ日がやってきた。


「エマ、気をつけね、変な連中を見かけた途端にすぐに逃げるのよ」と母親のマリアは言う。


「心配しないで私は強いから、大丈夫」とエマは言う。


「これ奉公先までの旅費、大事にするのよ」とマリアは言う。


エマは旅費が入った巾着袋を開けた、中に三十万ビーがある、ビーはナサーズ帝国の共通通貨である。


「多すぎるよ」とエマは言う。


「これからエマと離ればなれになるから、受け取って欲しい」とマリアは言う。


「ありがとう」とエマは言う。


「気をつけていってらっしゃい」とマリアは言う。


「ありがとう、お母さんもお大事に」とエマは言う。


エマは歩き出した、駅まで遠いのだ。

徒歩の代わりに乗り物があればいいなと思ったエマは首を横に振った、ダメだ、旅費はもらったばかりなのに大事にしないと、エマは歩きながら悩んでいる。その時に少し遠いがエマの目の前に現れたのは干し草を運ぶ馬荷車だ。


「おーい、エマ!もう帝都に向かうのか」と叔父であるレオは言う。


「そうだよ」とエマは言う。


「ちょうど干し草をおろしたところなんだよ、駅まで送るよ」とレオは言う。


「ありがとう」とエマは言いながら馬荷車に乗った。


「帝都は厳しい所だよ、夢を見るのも良いけどさ、気をつけろよ」とレオは言う。


エマは荷車で寝落ちした。

目覚めた時は既に駅に着いていた。


「目覚めたか、着いたぞ」とレオは言う。


「ありがとうございます、こ...これ」とエマは言いながら巾着袋の紐を解いていた。


「金はいいから、さっさと列車に乗れ、遅れるぞ、エマは歩みたい人生を歩むんだよ」とレオは言う。


「はい!ありがとうございます」とエマは言う。


煙草を口に咥えているレオは笑顔で手を振った。

エマは改札中でレオに手を振った。


エマは列車に乗ってすぐ拡声器から放送が流れた、「間もなく発車します」


エマは庶民の車両に乗っている。

窓辺に座っているから、暖かい日差しで眠くなりそうだ。大事な旅費を守ろうとして睡魔と戦っているエマの前に見知らぬ男の子が座っていた。見知らぬ男の子の姿がぼやっと見える、真夏にチョコミントのアイスを食べたかのようにエマは目覚めた。


「こんにちは、お前も帝都に向かうのか?」と見知らぬ男の子は言う。


「そうよ」とエマは大人の口調で言う。


「俺も帝都に向かうんだ」と男の子は言う。


「そうなんだね」とエマは言う。

エマの本音は、ゔっせえ。


「俺は北に向かうんだ」と男の子は言う。

またエマの本音は、知るかボケ。


「俺、やりたいことがあるんだ」と見知らぬ男の子は言う。


「へー、そう」とエマは言う。


「ところでさあ......」男の子は話の途中に別の男に金が入った巾着袋をひったくりされた、「おい!俺の旅費、返せ」


エマは余計なことを言わずに逃げようとしたひったくり男の背中を蹴った。ドアの前に飛びかかって行ったひったくり男の背中を拳で何度か強く殴った。エマの拳は自身で言った通りに強い、農作物の世話しているから日々拳を鍛えてられているのだ。


「お前!強いな」と男の子は言う。


「そこを気にかけてよ」とエマは言う。


「何を?」と男の子は言う。


「もういい、これ取り返してやったよ」とエマは言う。


「ありがとう、やっぱり強いな」と男の子は言う。


「うるさい」とエマは言う。


エマの言葉が切ると同時に車両の奥から車内警察が出てきた、「何事だ!?」床に転がっているひったくり男はひったくりで何度も署に出入りしているのだ。車内警察はひったくり男を逮捕した。手錠をかけた瞬間に拡声器で車内放送された、「ていーとー駅、帝都駅です」


エマと男の子は無事に列車から降りた。エマは去ろうとした時に男の子は言った、「お前、名前は?」


「帝都へ行く人さ、あなたは?」とエマは言う。


「俺は、旅人、また何処かで会いましょう、ありがとうなあ」と男の子は言う。男の子はきっとエマの体からのお茶の香りを忘れられないだろう。男の子は逆方向の改札口に向かった。


帝都に着いたばかりのエマは改札口での人混みが苦手と言うよりも、怖かった。母親からもらった奉公先までの旅費は十分に足りている。母親に育てられたエマは母親の恩を気にかけていた。へそくりを貯めていたのだ。


実際、エマも食べたいものは食べたいし、母親の目線で見るとエマはまだ子どもである、そう、エマまだ十五歳なのだ。子どもにも自尊心や物事の達成感を感じる気持ちはあるのだ。


母親はエマのへそくりのことを知っているが子どもの気持ちを込めて貯めていたへそくりを知らないふりした。エマは改札を出た後に隣の売店で念願のチョコとコーラを購入した。チョコとコーラは田舎には無かったのだ。一度、食べたかった。


この国では貴族と庶民のものは二つのメーカーで分けられているのだ。エマが買ったのは庶民のものである。チョコレートを一口食べた。舌は味蕾と絡み付く絶妙な甘さに浸かっている。


コーラも飲んだ、喉奥は爽快に弾ける強い炭酸、その醍醐味はまさに甘みと強烈な清涼である。味の余韻に浸っているエマは初めて豪邸へ行きの馬車に乗った。馬車の外側の縁は念入りに作られた金に包まれて金に模様が彫られている。屋根の角は馬車用のランタンが付けられてあるのだ。


車体の両脇に四つの窓があり、左右のドアにも大きい窓が付けられてある。馬車中の屋根の縁やドアの縁とドアノブも金色になっているのだ。大きい淡藤色のボタン留めソファーにエマが座っている。使用人を迎えるとしては良い過ぎる馬車だ。


エマの奉公先はかなりの豪邸に違いないのだ。


エマは馬車の窓の外の景色に気が取られているのだ。窓から鮮やかな洋服と人が行き交う道が見えてエマの目が回った。良く街を見渡せばお店が街を埋め尽くされ、田舎町とは全く別の世界。エマにとっては初めて衝撃的な興奮なのだ。


奉公先に着いた時は既に午後。

門番は見上げる程の重々しい黒い門扉を開けた。森ではないかと思う程の庭がエマの目の前に現れた。敷地内は池、遊歩道が整備され、小鳥の囀る声、植物や珍しい生き物まで揃えている。


郷里に戻ったではないかと勘違いするくらいの景色である。エマは庭園で迷子になりそうだ。長々の遊歩道に歩いているエマは庭園の花に気をとられて、しゃがんで花を見ている時にお嬢のような人から声をかけられた、「どちら様?何をしていらっしゃるですか?」


エマはお嬢様のような人の声を聞いて気が戻った。「はい!お初にお目にかかります。新しく入りましたゴロータ・エマです。宜しくお願いします」とエマは言葉を切ると同時にお嬢のような人に一礼をした。


「こんにちは」とお嬢のような人は言う。お嬢のような人は庭園で菫菜を鑑賞している、手に持ったのも紫色の菫菜だ。菫菜の妖精と思う程に美しく、紫の美にふさわしい人だ。


エマはお嬢のような人が持っている花を見ている。お嬢のような人もそれを見ている。それからお互い見つめあった、瞳にお互いの姿が映っている。二人はの視線はぶつかり合いながら甘く絡み、瞳の甘い感触は周りの庭園を透明にした。良い雰囲気だ。


まさに愛おしさが衝突しているの一目惚れである。菫菜は思慕しぼと懐かしいものとして、少女の花と呼ばれ、ナサーズ帝国の国花でもある。エマは前から侍女長にもらった懐中時計を手にした。


「あ!いけない!侍女長との約束の時間が過ぎちゃいそう!すみません、お先に失礼します」とエマは言う。エマは遊歩道に沿って走り去った。


本館の扉に辿り着き、扉の前に待っていた侍女長は扉を開けた。エマの瞳に映ったのは家の真中に黒い紋路がある大きいな白い大理石階段だ。階段の踊場から左右に二階へ通る階段が更に造られてあり、広い玄関から二階までは吹き抜けである。


全体が北欧風な造りである。エマは天井に飾ってあるシャンデリアに圧倒された、正直に言うとこれはどこからが家なのかエマは変な考えを持っていた。無音という音すら聞こえない程の静けさを感じた時に侍女長の声が耳に届いた。


「二度目にエマとお会いできて嬉しいです」と侍女長は言う。


「私も侍女長とお会いできて嬉しいです、本日から宜しくお願いします」とエマは言う。


「こちらこそ宜しくお願いします、部屋へ案内します」と侍女長は言う。


「かしこまりました、侍女長!宜しくお願いします」とエマは言う。


「ニーナと呼んでくださいね」と侍女長は言う。


「はい、ニーナさん」とエマは微笑みながら言う。


侍女長は先にエマの荷物を置かせる為にエマを使用人の寝室に案内した。寝室は大きく清潔なベットとタンスがある。寝室を見たエマは私一人だけが贅沢になるのはいいことですか?エマは家族に申し訳ない気持ちが湧き自分に問いかけたのだ。


しかし、どんな仕事でも行き先が決まったエマは安堵した。田舎の母親から聞いた話では豪邸に住いの年上のお嬢様の相手を務めるのが主な仕事である。侍女長はこれからエマが使用人になる為の勉強の部屋とお仕事で出入りする主な部屋を案内したのだ。


侍女長によっての案内の後は既に夕陽が沈む頃である。風呂上がりのエマは寝室のベットで寝転がっている。家族と郷里の人々に失望させないようにエマは明日の仕事の為の気合いを入れたところ、侍女長はエマの寝室のドアをノックした。


エマはドアを開け、明日の朝以降は留守と言う事での伝言があった。夕陽は夜の暗さに変わり、地上が厚い闇に包まれ、暗い中に遊歩道に沿って設置されいたガス灯が灯されていた。エマの郷里の夜の道は真っ暗なのだ。初めてガス灯を見て衝撃であった。


星が瞬く音も聞こえそう程の静寂の中に郷里の家族との思い出が溢れいる。いつの間にか寝落ちたも分からず目覚めた時は既に朝陽の光が庭の木を染めている。侍女長は再びエマの部屋のドアをノックした。


「おはようございます。大浴場に行きましょう」と侍女長は言う。


毎朝、使用人たちは屋敷内の使用人専用の大浴場で入浴するのだ。エマは初めて本格の温泉に入った。田舎ではドラム缶に水を入れ、薪を燃やして風に吹かれながら風呂していたのだ。ナサーズ帝国では温泉自体は朝に入るもの、これは紅茶の国からの文化であるが、紅茶の国は風呂を朝に入るのだ。


庶民から貴族や王までの日常習慣だ、ナサーズ帝国は温泉を持つ人が多のだ。ナサーズ帝国の財産はアーロンマスクとジェブベゾスを合わせたよりも非常に多く「他国の王や億万長者も夢を見るしかない」ほどの贅沢な生活を送っている。


お金と権力の力を示し、二つを合わせて庶民たちが想像できない世界を作り上げた。このような大金持ちの国は王宮も、各貴族の豪邸にも温泉がある。さすがに秘境にありそうな温泉は豪邸で造れないが、貴族ならそのような温泉に行けるのだ。


そう、ナサーズ帝国は和ノ帝国のように温泉大国なのだ。熱い湯に浸かり、ドラム缶の風呂とは全然違った感覚になったエマは心地よくゆっくりとしている。農作物の世話をしたせいで髪の毛も顔も日焼けになった。


顔に大きな目はいつもきらきらと輝いている。純朴で大自然で育った子である。エマの小麦色の肌は輝くみえる、体はまるで花の蕾のように咲きそうなのだ。肉付きの良いすっきりした足。エマの体は自然にほのかなお茶の香りがする。綺麗である。


風呂が終えてたエマは使用人の服に着替えようとする。身分は同じく使用人であるとは言え、大浴場での着替えの恥ずかしさでエマはの頬に目立つ赤みが浮かび上がった。午前のメイド服である、紺色のワンピース、プリント生地の外側にレースのついた白いエプロン。そして黒い靴。


「エマ、ここに座って。時間ないから髪だけは手伝うよ」と既に着替え終わった侍女長は言う。


エマは椅子に座った。

二人は鏡を通してお互いの顔が見える。

エマとニーナ。


ニーナはエマの顔を見て、ある思い出の中に落ちた。エマの後に立つニーナは両手をエマの左右の肩に掛けた。ニーナの頭が微かに横を向いき頭を下げ、エマの耳元で軽くある一言を言った。


「あることは残酷ですが、幸せでもある」


この言葉の意味が理解できないエマの頭がぼんやりしている。エマがぼんやりしているうちに髪はニーナに整理された。髪を整えた後にエマは白い帽子をかぶった。ニーナは更衣室の扉を開け、廊下の世界と交じり合う。エマは廊下に出て見渡した。


室内灯は綺麗に細工をしたものであった。壁に飾ってある高価な絵、アンティーク家具、美味しそうなケーキとモーニングティーに綺麗な床、全てが清潔感に溢れている。侍女長はエマを御主人の部屋へ案内した。


侍女長はノックしてからドアを開ける、眩しい太陽の光を遮るカーテンが引かれた部屋。エマは驚いた。 昨日の庭園で会ったお嬢様らしい人が屋敷の御主人だったとは思ってもなかった。


この屋敷の静寂に相応しい人。


「おはよう御座います、御主人様。新しい使用人をお連れしました。用件がございましたらお呼びください。失礼致します」侍女長はお辞儀して退室した。


屋敷の御主人は腰を掛けた革の椅子から立った。凛とした美しい姿勢、ゆっくりとした優雅な動きの女性にエマは目を疑った。紫のロングドレスを着ていた細い身体に絹のような白い肌、ロングヘアにパーマをしている。小顔に眉毛が前髪に隠されている。


ゆるやかな美しい目に長いまつ毛、左眼の下に黒いほくろがある。そして、小さい口。可愛いフランス人形のようだが実は押しが強く、気性が少し荒い女性である。性格は午前のメイド服を着ているエマとは正反対だ。


御主人のはかなげな指先がエマの視界に入った。エマの頭を撫でた。


「お......おはよう御座います」とエマは赤面になった。


「あなた...」御主人は指でエマの顎を持ち上げ、目を見ながら言う。


「は.......はい」とエマは言う。


「名前は?」と御主人は言う。


「私はエマ・ゴロータと申します」とエマは言う。


「そうか、エマって良い名前だね。私の名はマーガレット・キャヴェンディッシュ。今日からエマは私の侍女。宜しく」と御主人は言う。


貴族でもない私が侍女なの?何かの間違いなのではないか?エマは思った。しかし、せっかくの仕事なので侍女でも、下級雑用でも構わない、仕事さえあれば大丈夫とエマはそう思った。


「承知しました」とエマは言う。


マーガレットはエマの顎から指を下ろした、「私は後で王宮に向かうので、馬車の用意はしたか?」とマーガレットは言う。


「御主人様、侍女長が既に用意しておりました」とエマは言う。


エマの言葉を切ると同時にマーガレットは蝶の羽の如きの瞬きをした。沈黙な間にエマと瞳を逸らす事なく見つめ合い、どこから寂し気な感じをした。


「ありがとう」とマーガレットは言う。


「失礼致します」エマは礼をして退室した。廊下にいるエマは暫くすると、廊下の窓からマーガレットが馬車に乗る姿が見えた。


この日、留守と言っても実質は留守ではなかった。


今度、エマの目の前に現れたのは家庭教師だ。王妃候補者や王太子候補者に侍るものに選ばれなかった人対しての行儀から乗馬や狩猟など幅広いレッスンがあるのだ。この家庭教師は貴族の予約が来年まで入っているベテラン鬼教師である。


「おはようございます!わたくしはバーバラ・アイルドと申します。今日は行儀教育を行います」とバーバラは言う。


「お...おはようございます。お初お目にかかります、わたくしは...」とエマは初めて鬼教師を見た、とても緊張しているのだ。


「声は優しく、笑顔で自己紹介はもう一度!」とバーバラは言う。


「はい!わたくしはゴロータ・エマと申します」とエマは言う。


「宜しいです。今から筆記レッスンを開始する、筆記用具の準備終えたか?」とバーバラは言う。


「はい!」とエマは言う。


「まずは、女使用人について説明する。貴族は幼少頃から王宮で行儀見習い係として奉公したことから上級使用人の始まり。その中から選ばれた人は王妃候補者の使用人であるが秘書に似たもの、レキナの称号を与えられてから奉公する。


レキナになるための実技や筆記試験も厳しく見られ、採点される。引退後のレキナは一番多いのは家族経営の会社を継承するが今は家庭教師になるものもいる。下位貴族が上位貴族に侍る女は侍女である。料理師は資格取得が必要のため特別使用人である。


それ以外は下級使用人であり、下級使用人は王宮からの指名があれば昇格できる。特別使用人は万が一重大な罪を犯してしまった場合には貴族条例により資格を剥奪し下級使用人とする、または奉公禁止とする。


次は、男使用人の説明する、従僕を勤め上げた者が執事に昇格できる。万が一重大な罪を犯してしまった場合には貴族条例により奉公禁止とする」とバーバラは言う。女下級使用人は昇格なしに等しいのだ。険しい道のりだなとメモしているエマは思った。


ところどころに休憩を挟んでの四時間後......


「歩き方の練習をします。練習のうちに姿勢矯正しますのであちらの本と林檎を頭に乗せてください」とバーバラは言う。


「はい!」とエマは言う。


時が過ぎ、厳しいレッスンを終えた頃は既に午後である。早速、エマは使用人としての研修が始めた。漏れた美しいピアノのメロディが廊下にいたエマの耳に少し響いた。これの曲は「グリーンパラダイス」と呼ばれる園芸の国の民謡である「蛍の光」。


エマはドアをノックして王宮から帰って来たマーガレットの部屋に入り、蓄音機から切ないポエムのようなピアノのメロディが部屋に溶け込んでいた。


「こんにちは御主人様、アフタヌーンティーをお持ちしました、本日のお茶はゴロータファーム製の茶葉です」とエマは言う。


「嬉しい、ゴロータファームは評判が良い、茶農家として貴族の心を得ている」とマーガレットは言う。マーガレットはゴロータファーム製の茶葉がとても好むのだ。


「そうなのですね」とエマ言う。


一部の貴族は農家を認めていることはエマが知っている。貴族はせいぜい他人の良いものは、自分のものにしたがる、自分の良いものは自分のものであるとエマは思う。


「どうしてここに奉公に来たの?」マーガレットは言う。


「家族のためです」とエマは言う。


「そうなんだ、手紙の仕事に興味はある?」とマーガレットは言う。


「手紙ですか?興味あります!」とエマは言う。


「手紙類のお仕事は任せるよ、素早いエマがいれば私は助かる」とマーガレットは言う。


「はい、頑張ります」とエマは言う。


中等科で卒業したエマは自分が持った偏見に対し恥ずかしい気持ちが湧いた。主からお仕事を任されたエマは行儀レッスンを受けたあとに図書室で中等科よりも難しい文字を勉強している。図書室は特別使用人を含め、侍女以上のものしか入れないのだ。


それ以下の者は図書室の外で朗読を盗み聞きを結構するのだ。本職をやりながら勉強を頑張る日々である。こんな日々が続いて一週間経ち、エマは他の一部の使用人たちに良い目されなかった。中にはプース男爵の娘、ローズマリー・ライティンネンがいる。


愛称はロージーである。

ローズマリー副侍女長は嫉妬心が凄い人だ。まさにエマが持った偏見のような人だ。田舎から来た侍女であるエマに対して、ローズマリーはなかなか気分は晴れなくて廊下で暴走したのだ。手を上げて思い切りエマの頰に平打ちをした。


「私はどれだけの苦労で今の副侍女長になったのか分かる?え?田舎人なのに侍女だと?笑わせるな、こんなことをしてどうせ媚を売りたいでしょ」とローズマリーは言う。


エマの頰はライターの火の気が当てられたように熱く痛みが頭に貫いた。平打ちされて混乱状態のエマは信号みたいに顔色がコロコロ変わるローズマリーを見て首を竦めている。


「副侍女長、この子は我々が教育します、落ち着いてください」メイドは副侍女長の右腕を止めた。


「冷静になさってください」家令の瀬波須智博せばすともひろも副侍女長の左腕を止めた。


「あんたをめちゃくちゃにしてやる!こら!離せ!離せ!」ローズマリーの腕は抜け出そうとしている。


屋敷の廊下の突き当たりはT字路になっているのだ。ある壁の後ろにいたワルーア・シャロットは一部始終を目にした。尊敬すべき人に自ら頭を下げ部下になる。これはワルーアの座右の銘である。主にも、同僚にも、部下にも心には明確の判断を付けている。


しかし、廊下の事を目にしたワルーアはエマにそんな価値がないと思っている。エマは田舎出身だからではなくただの人間としてなのだ。なにせよ、自分の尊厳と身の安全を守れないような人はそういった価値はない。


時間を無駄にして彼女を軽蔑や侮蔑するのも必要がないし、屋敷で下級使用人は裏で上級使用人のエマを嘲笑している所を見たとしても、知らないふりをするのが常である。重要でない人に対しては私情を挟まず原則性に従うのがワルーアという人である。


人に優しくするのは人間として、いや、むしろ執事のリテラシーである。ワルーアはドアをノックして、マーガレットの部屋に入った、「お嬢、ご命令した通りにエマを見張っていますが、周りは相変わらずです。今日で副メイド長が暴走していました」とワルーアは言う。


「ありがとう」とマーガレットは言う。


「失礼致します」ワルーアはお辞儀して退室した。


この世の全ての理や価値観と人、または気持ちが共通している、ある意味で共通していない、これもまた人生の醍醐味の一部とマーガレットは今日でメアリーが暴走したと聞いてそれを一瞬でそれを思った。マーガレットは明日に王宮への馬車の用意の予定を立て、大事な手紙を書いた。


次の日。

マーガレットは王宮に向かっている。日差しの中で優雅な馬車はゆらゆらと王宮のに近づき、窓は白いカーテンに遮られ、外の人は馬車中を探ることができない。馬車に乗っているマーガレットは外が見えるのだ。外の景色を見ながら色々を考えているうち、あっという間に王宮に着いた。


マーガレットはゆっくりと馬車から降りた、応接間まで歩きいた。王宮のレキナは応接間のドアを開いた。「女王」に謁見する専用の応接間は企業の殺風景な応接室と違って、立派なインテリアと大きく金のフレームが付いている絵が壁に飾られ、平和な太陽の光を感じる絵だ。


絵の真下に小さいテーブルがあり、テーブルの真中に透明な花瓶が置かれてある。花瓶中にピンクの満開の花が挿され、茎についている緑の葉はとても心地良く見える。花を交換する度に花瓶中の花は違ってくる。花瓶の両側に親族の写真が飾ってあり、実に暖かいのだ。


そして、絵の横下の壁側にある暖炉は古代の神殿のような荘厳な雰囲気だが重厚な物に見えず、応接間の空気も、人の心も、優雅に暖かくするのだ。暖炉の上にいくつかの装飾品が置かれ、装飾品は個性が引き出さられているが乱れることがない。


暖炉はアンティークな椅子に囲まれて、ゆっくり過ごせる雰囲気だ。床は清潔な真赭まそお色に白い模様の絨毯が敷かれてある。応接間の空間はロマンチックな特性と身分、地位、尊貴と権力を象徴している、迫力があるのだ。


絵に少し離れた所にもう一つ小さなテーブルがある、テーブルの上に家族との他の写真が飾ってあるのだ。写真以外はそこに春の訪れを感じさせる和ノ帝国と違った大きいピンクの鈴蘭が置いてある、繊細なベル型の花は古くからナサーズ帝国の王族とゆとりが深く、母の愛と純潔の象徴なのだ。


マーガレットは応接間に入り椅子に腰を下ろさず「女王」が来るまで待ち、「女王」後に応接間に入った。マーガレットは女性の宮廷作法の最高格であるカーテシーと言われる挨拶をした。右足の膝を左足の膝の裏に入れ、膝を曲げた、背筋は伸ばしたまま両手で正装ドレスの端を少し持ち上げ、体をかがめた、目線は相手の膝を見ている。


「ナサーズ帝国の太陽及び帝国の母に謁見いたします」とマーガレットは言う。


ナサーズ帝国では国王が太陽と称えられ、王妃が月と称られる。女王も太陽と称えられるが、女性であるため挨拶の言葉に帝国の母と加えるのがルールなのだ。


「礼を免じるの許可をする」と威厳のある「女王」は言う。


「感謝いたします」とマーガレットは言う。会話の礼儀では女王に話しかけられるまで口を開いてはいけないのだ。


「あの要件は容易なことではないわ」とマーガレットの気持ちを察した「女王」は言う。


「しかし、私はとても心配している」マーガレットは女王が座った後に椅子に腰掛けた。


「あぁ」マーガレットの考えを見ぬいた「女王」は顔に難色を示した。


胸にこっそりと忍び寄る灰色の雲が空気に広がり、徐々に黒い雲になっていく。胸の雲を取り除こうとしたマーガレットは「女王」の言葉を聞き何かに気づいた、「王宮の趨勢すうせいがこのままだと......」


「女王」は少し首を横に振った。

「マーガレットが言った通りでもあるが、問題は見えない壁だ」と女王は言う。


「見えない壁とは?」マーガレットは疑惑した。重い空気と胸のはっきりしない雲のダブルパンチで陰鬱になりそうだ。


「あの見えない壁は薄い言っても薄いだけども、厚いと言っても厚い、どちらかと言うと本人次第だわ」と「女王」は言う。


「見えない壁......」マーガレットは胸の黒い雲が拭かれたようであるが、心の中でまだ何かを考えているようだ。


「本人は気づいていないかもしれないけど、しかしこのままだと......本人のやるべきことは本人の心によって阻まれるわ、それに北帝都には前国王が育った残党がまだいる」と「女王」はため息をした。


マーガレットは「女王」の言葉を聞き確信した、「難しいですね、北帝都にいる残党は全て前国王の忠実な腹心であります」


ここで絶対に本音と頭の良さ示してはならない、じゃないと北に派遣される。南帝都はこんなに安らかで誰も北には行きたくないはずとマーガレットは思う。暖炉の揺らめく炎に薪の焼く音が聞こえる。


「ええ、腹心ね......」と「女王」は言う。


「前国王の腹心は我々のものにしましょう」マーガレットは言う。マーガレットは危うく本音を言うところだった。


「簡単ではない、忠実な心を示した残党は前国王に対して裏切りするような真似はしない、分かったわ、人を派遣するよ」と女王は言う。明らかに「女王」はマーガレットの本音を分かった上かわいがる。再び薪の焼く音が暖炉から聞こえ、薪に燃え上がる炎がより赤くなっている。


「女王」は再び笑顔になった、その笑顔に隠された深い意味は女王自身しか分からないが気持ちも、空気も反転し、応接間に似合う雰囲気になったのだ。


「マーガレット、あの要件は考える、あの子を迎えに行けるのは貴女しかない」と「女王」は言う。


「承知しました」とマーガレットは言う。


「女王」は退室してからしばらくすると暖炉の炎は消えていた。


マーガレットは帰りの馬車に乗り込み、再び考え始めた。庶民と貴族の価値観の違いどこから手をつければ良いのか。しばらくの間は様子を見ように決めた。考え事をしているうちに今までの自身のことを思い出した。マーガレットの先祖代々は宮廷医なのだ。


父は宮廷医の臣民公爵のフィップス・キャヴェンディッシュであり、母は女王と宮廷の女性たちに診察するために宮廷女医になった公爵夫人のソフィア・キャヴェンディッシュなのだ。マーガレットは行儀見習い係の為小さい頃はほとんど王宮で過ごしたのであった。


大好きなおもちゃは針なしの注射器だった。祖先代々が医師であるためと知的好奇心を刺激されたマーガレットは人体に興味を持つようになり、母より優れた宮廷医を目指していた。五歳でエスカレーター式の医療学校に入学した。


教育期間は十年あまりだが優秀な成績、優れた実習能力を高評価されて飛び級で五年間で首席卒業した。当時、卒業後に医療学校から王妃の専属医になる為の推薦書が国王の手元に届きあまりに若すぎたのと医療の道が遠いのでマーガレット自ら見習係になった。


この推薦書は医療学校とその時の国王からマーガレットへの最後の卒業試練であった。もし、その時マーガレットは推薦を拒まなければ今のように国民からの尊敬と愛されることもない。しかし、マーガレットが一人前の宮廷医になるための見習い係になった時から全ての事が平和に見える。


王宮外の国民の世界も平和に見えるが王宮内の硝煙のない戦争はますます激しくなっている。


実際、当時の国王は次男に王位を譲ることが遺言なのだ。長男は陰険にかつ狡猾で次の国王になれなかった。しかし、長男は自分の障害の原因で国王であった父親に軽蔑されていたと勘違いして、国王になれなかったと思い込んでいるのだ。


それで長男は恨みを抱いた。


ある貴族を利用し、その後に当時の王妃と王妃は埋葬された。母を亡くし、妻も亡くした次男は狂い、現に追放塔に閉じ込められているのだ。次男に子どもがいる、その子どもは王宮の外に送り出されているのだ。その子どもが原因で「女王」も「前女王」も実権を持っていたが即位式を行わなかった。


今は代理の状況である。


次女である現「女王」は長女である「前女王」に相談した結果、その子を連れ戻す事に決めた。マーガレットは国王の子どもを迎えに行くため近日に出発する。突然、マーガレットが乗った馬車は急停止した。まるで骨がない動物のようにぐらりと体を大きく揺らせて横の窓にもたれかかりそうになった。


考えことをしていたマーガレットは夢から現実に引っ張られたかのように気が戻った。馬車の外の人がざわつく中マーガレットは馬車から降りた、目に映ったのはローズマリーの馬車だ。ローズマリーはマーガレットが馬車を降りたのを見て自分も馬車から降りた。


「プース卿、お怪我はありませんか?」とマーガレットは言う。


「恐縮です。私は大丈夫です。閣下はお怪我ありませんか?」とローズマリーは言う。


「ええ、私は大丈夫です。プース卿はお怪我がなくて良かったです。お先に失礼します」とマーガレットは言う。


マーガレットは再び馬車に乗り込んだ。

危うく事故を起こすところであったことと庶民の前で貴族の良いイメージと名誉を保つ為でもあり、ただの挨拶でも不可欠なのだ。もちろん、スピード違反したのはマーガレットではない。時が過ぎ、マーガレットは屋敷に着いた。


今日の乗馬レッスンを終えたエマは貴族を侍るのテーブルマナーのレッスンを受けているのだ。マーガレットは侍女長からエマの現在地を聞き、晩餐会スタイルのテーブルの間のドアを開けた瞬間にエマのふざけた歌声が聞こえた。


「ちゃららら〜」とエマは歌う。


「はっ!キャヴェンディッシュ女公爵!エマ!行動を慎みなさい」とマーガレットを見たバーバラは言う。


エマを見たマーガレットは優雅に微笑した。


一方、生意気で狂いそうなローズマリーは前国王から賜った屋敷に帰り、心に鬼に飼ったかのように馭者に言った、「マーガレットが憎いの、三大傑出女性の称号を与えられた。マーガレットはの馬車を見かけたらスピードを上げなさいと言ったでしょう」


「申し訳ない、夫人の安全のためにそれはできぬ」と馭者は言う。


「では...あなたは私の安全のために何でもするのですか?」とローズマリーは馭者に聞く。


「夫人の安全の為なら何でもします」あるじに誠実な心を持った馭者は言う。


ローズマリーは再び歪んだ考えを抱き始めた、「よろしい、今私の地位、財産と名誉の安全はある子の存在自体によって脅かされているの、保身のために頼みたいことがある」


「誰に脅かされてるですか」と馭者は言う。


「エマ・ゴロータは知っているかしら」とメアリーは言う。


「あの子ですか、貴族でもないのに侍女に成り上がって、社会で傑出けっしゅつした女公爵が貧乏人を愛人にしている、まさかこんなに卑しいことをするなんて」と馭者は言う。


「まあまあ、あの子はつい最近から乗馬のレッスンを受けているの、あの子がいつも乗る馬に薬をあげて、なんとかして崖までに連れていき、馬は体調が悪い時にあの子を崖から突き落とすこと。そして、あの子が崖から落ちたことを馬のせいにする。これは昔に殺し屋として紅葉と言う名を馳せた貴方にとって簡単なことでしょう、ハレル・チャールズ」と憎しみに目隠しされ、コントロール欲が強いローズマリーは言う。


表は馭者、裏は傭兵であるハレルは主人に忠実な心を示す為に殺し屋の本性によってローズマリーの任務を承諾しよとしている、また、馭者の報酬とは別報酬なのでハレルはローズマリーに適切な報酬を払わせることを考えているのだ。


「貴方はもう一度紅葉と言う名を馳せてみないか」とローズマリーはハレルに聞いた。


「ロージー、あの頃に戻れるならもう一度でも良い。でも、今からは俺のやり方でな」とハレルはローズマリーの愛称を呼んで話した。


ローズマリーは長い間で自分の愛称を聞かなかったのでロージーという愛称に馴染みはあるが実際に耳に入るとまた極めて見知らぬ感じがするのだ。


「私にこんなふうに話すなんて、度胸があるね」とローズマリーは言う。


ハレルは無言。


「いいわ、貴方のやり方でいいよ」とローズマリーは言う。ハレルが沈黙した時ローズマリーは威圧的な恐怖感が頭に刻まれたと感じた。あることに気づいた。


それは、今まで当たり前のようにハレルに不満をぶつけて見せびらかしたきたが、しかし、馭者はハレルによって虚構なものであったと。そう、ハレルは馭者を演じていたのだ。


ハレルは壁に寄りかかった。

ローズマリーは黙った。


ハレルは煙草を口に咥え吸殻に火をつけた。一口煙草を吸った。口から灰色の煙を吐き、煙は人を奈落へ誘う悪魔の囁きのように空気に消えていく。殺し屋であった残忍な心のハレルは敵に追い詰められ、ローズマリーに助けてもらった。


その後のハレルは気が軽くになっているようだ。ハレルは優しいかったローズマリーを見て優しい心に憧れ始めた。ローズマリーの優しさのため初めて愛慕に触れたがどうしても本当の心の奥底を開けられない。


誰もハレルの心に入ることはできないのだ。そう、いくら気が軽くになっていても根っこは殺し屋なのだ。ローズマリーとハレルはお互い視線を合わす事なく残酷な静寂は空間に満ちていき二人の色を褪せらせた。


一瞬、ナサーズ帝国も色褪せたようだ。この国では国王を征服した貴族ではない女が色々な面からみて一般人ではないのだ。その一般人ではない女が貴族の人妻なることはナサーズ帝国の男にとって光栄なのだ。たとえ、悪女でも。


ローズマリーは悪女ではなかった。絶世の美女とは言えないがそれなりに魅力が溢れているのだ。オレンジ色の髪に顔は彫刻のように顔つきがはっきりしていて高い鼻と赤い唇。多情に満ちている外見。


今、ソファーに座っている人それがローズマリー。前国王が亡くなった後にローズマリーは思い出でその長い日々を過ごした。ローズマリーと言う女の性格はある花の花言葉と同じ、名前はある花から来ていると言うべきなのだ。


花言葉は思い出、追憶、あなたは私を蘇らせると私を思ってである。生きている環境の関係でローズマリーはもっと優秀にならなければならないのだ。かつての優しさで自分の人生全体を台無しにしそうになったので、見た目が悪女に変わり始めたのだ。


本当のローズマリーの本性は悪くないのだ。

マーガレットの高貴さを欲しいローズマリーは貴族に認められたいである。脅かすものを排除するローズマリーである。欲求を重ねてるうち虚しいものを求めるようになった。


失意が恨みに変わり、また深い執念にはまっていることはローズマリー自身は知らないのだ。高貴を求めたローズマリーはハレルを殺し屋であると知った上で孤高な光のようなマーガレットの高貴な身分を奪えられるならどんな代償でも構わない、悪魔に魂を売っても三途の川も渡ってもいい。


ローズマリーの深い執念が悪魔を呼び出したのだ。それは深淵の王と呼ばれ、世を滅ぼすと人を奈落の底に落とす力を持つ、アバドンである。心が悪魔に奪われたローズマリーは放心状態になり、アバトンの姿を直視してソファーで気を失った。


「解放された」とアバトンは言う。アバトンはソファーで仰向けになっているローズマリーの前に行った。


この時のローズマリーの魂は幽体離脱して彷徨っているうちにブラックホールのような底無しの穴に来た、底無しの穴は堕落した天使のためのものである。ローズマリーの目の前に現れたのはアバトンに千年も閉じ込められて、火の湖の裁判を待っているサタンだ。


サタンを縛る専用の鎖がぼんやりと見えている、鉄柵に近づこうとした時のローズマリーは地獄の空から落ちた息に深く衝撃を受けた。その息は、アバトンが現実にいる肉体のローズマリーの顔に吐いた灰色の息である。


息の衝撃により目覚めたメアリーの瞳は美しかった青色からアバトンと同じ色の瞳になっていく。そう、悪魔の緑色である。緑色の瞳のローズマリーはハレルが寄りかかった壁の方向にギョロと見た。ハレルは既に消えている、消えていた場所に灰色の煙が薄く残っている。


「契約しよう」とローズマリーの視線はアバトンを見ながら言う。


「本当にいいのか?」とアバトンは言う。緑色の瞳と赤い唇のローズマリーは妖艶に見える。


「構わないわ」とローズマリーは言う。


「僕と契約するには条件付きだ」とアバトンは言う。


「どんな条件なの?」とローズマリーは言う。


「サタンを解放してはならない」とアバトンは言う。


「ならば、こっちも条件があるわ」とローズマリーは言う。


アバトンは無言。無言時のアバトンのオーラはハレル並み、いや、それ以上だ。


「前国王は私との約束を果たしていない、前国王を蘇らせるの」とローズマリーは言う。


「無理ではないが、前国王が蘇らせた後にすべての願いが叶ったら代価を払うべきだと受け取る」とアバトンは言う。


「代価とは?」とローズマリーは言う。


「魂だ、千年に一度の成熟した悪の魂、その悪の魂はきっとサタンも欲しがるだろう」とアバトンは言う。


この時、屋敷の外はあっという間に黒い雲が立ちこめ雷が鳴り稲妻が走り、激しい風雨が交錯する。近くの河水も氾濫そうなのだ。ローズマリーの部屋はいつの間にか外の風と違った怪しげな悪魔の風が吹き、冷ややかになっている。


空間は悪魔の風に包まれているのだ。


「今度、悪の魂の匂いを嗅ぎサタンが脱獄しようとしている」とアバトンは言う。実は、サタン一度は脱獄しようとしたのだ。


これで二回目だ。


床に地獄への入り口が現れ、入り口は緑色の光に囲まれている。アバトンは急いで地獄に戻った。屋敷の前に通った奉公先に帰る途中のエマは緑色の光を見えた。街の人々は空模様を見ていて、うっかり緑色の淡い光を目撃した。マーガレットも自宅の屋敷の窓から緑色の淡い光を見えた。


次の日。


人曰く「昨日の緑の光を見えたの?」


人曰く「見えたよ、あの方向でしょ、あれは悪魔の色、きっと変な儀式をやっている」


人曰く「変な儀式やらなくてもあの女は悪魔よ、娼婦の娘だから悪魔の子よ」


街に出かけているエマはうっかり隣の人が話しているのを聞いた。エマは噂を信じないであるが、しかし、小さい頃に親友が悪魔に取り憑かれていたのを見たエマは儀式と悪魔の子を耳にしたことで怖くなり買い物もせずに奉公先に帰ったのだ。


これは副侍女長の屋敷で起こったこと、同時にエマのそばで起こったことでもあるので、エマは不安である。マーガレットは不安なエマを気にしている。気分転換のためにマーガレットは庭園で花鑑賞に誘った。


エマは庭に行った。

たくさんの花が咲いている。暖かい日差しの下で、花が艶やかなるほどに咲く。エマは鑑賞の気分ではないようだ。緑色の光のせいでその不安は誰に対しても口にできないが、マーガレットにだけ言った。


「御主人様......」とエマは言う。


「どうしたの?」とマーガレットは言う。


「副侍女長の屋敷の前で緑の光を見えたです」とエマは声が震えそうなのだ。


「気のせいだよ、最近、エマは頑張り過ぎているから少し休んだほうがいいよ」とマーガレットは言う。


「多分、気のせいなのかな、街の人が副侍女長を悪魔の子であると言う」とエマは言う。そよ風がエマの頬を吹き抜ける。


「街の人が言っている事は信用ならない、プース卿はいつも通りだよ」とマーガレットは言う。


エマはマーガレットの言葉を聞いてほっとしていく。不安から逃れそうなエマは目に庭園の花が映った。サンシキスミレを見てぼんやりしている。鳥の鳴き声で目を覚めた。


「エマ、大丈夫?」とマーガレットは言う。


「大丈夫です、主がおっしゃった通りに私は疲れています」とエマは言う。サンシキスミレが風の中にゆらりと揺れている。


「休暇許可をする、心が安らかになってから、またお仕事きてね」とマーガレットは言う。


「ありがとうございます」とエマは言う。


庭園で花を鑑賞するつもりでいるだが、マーガレットに不安を話してもエマはそう言う気分ではない。マーガレットはエマに言った、「ゆっくり休みましょ」


エマとマーガレットは室内に戻ったあと、庭園は強風が吹き、花弁が次々と落ちていく。エマは休暇のことを侍女長に話したあとに使用人の寝室で荷物を片付けた。ニーナ侍女長はエマを門扉まで送り、門扉を出たエマは再びそよ風に当たる。


さきのマーガレットとの会話ではわざと自分を休ませたようでとても疑わしいのだ。それにエマは図書室で勉強していた時、偶然で自分がキャヴェンディッシュ公爵一家と一緒に撮ったモノクロの写真を見つけた。その写真は外国語の本に挟まれ、本は外国語の本棚の上に置かれてあった。


エマの記憶では使用人として来た以外に豪邸に来たことがない。エマはこの写真のマーガレットの隣りにいる赤ん坊が確かに自分だと気づいた。事実も写真の中の赤ん坊は確かにエマなのだ。


写真についてエマは絶対に黙ったほうが良いのを知って、勉強とレッスンの合間にこの写真と豪邸に関する情報を密かに集めた。しかし、情報が少なすぎるの上に豪邸ついてたくさんの疑問があり、休暇している間に事をはっきりさせたい。


自分の疑問を解くためである、周りに疑れないよう写真の真実を求めたエマは旅に出る。エマは旅の最中に街である婆さんと知り合った。親切な婆さんは落ちぶれの貴婦人なのだ、その姿は成り金よりもよっぽどに貴族に見える。


ナサーズ政府は落ちぶれた貴族を養わないので婆さん一人で茶葉の商売をしている。旅事情をお婆さんに話したエマは暫くの間は婆さんの家に泊まるのだ。婆さんの宅はマーガレットの豪邸と比べるとほど遠いが、今までない安心感が感じられる所だ。


まるでエマと婆さんは孫娘とおばあちゃんのような関係だ。それでもエマは他人の宅で無駄に食べたり飲んだりするのが恥ずかしくて自発的に家事を手伝ったり、徐々に婆さんの店舗の手入れするようになった。


エマによって商品も結構売れている、婆さんの商売はますます繁盛していく。婆さんはルールを作った、婆さんが店番している時の売上は婆さんのもの。エマが店番している時の売上はエマのもの、エマは嬉しいのだ。


母から貰った三十万ビーまだ使っていない、豪邸で侍女としての給料を加えて金が増えていくだけであるがこれから金を使う生活になるだろう。ある日、エマはいつものように家を掃除している時、ベッドの下から手紙を一掃し、手紙はK夫婦に宛のものであった。


手紙の内容は、戦が収まらないの上に意地が収まらないです。既に重病で約束に赴くのが不便である、託したものは保管するのをお願いします。もし、不便でしたらチャイナタウンで骨董品店を経営するリーに渡してください。リーは信頼できる人です。宜しく頼みます。ゴロータ・エマより


エマの顔色が変わり始めた。そこには、エマの名前が書かれていたのだ。しかし、同名の可能性もあると考えた。エマは手紙を隅から隅まで見ている。手紙にあった印に気づき、どこで見覚えのある印だ。


今まで集めた情報を小さめのノートにエマは記録した。エマが今回の新たな情報を記録している最中に婆さんに見つかられた。婆さんはテーブルの上に置かれた手紙を一瞥した。


「エ...エマに見つかったなんて」と婆さんは言う。


「どういうことですか?」とエマは言う。


「真実を伝える時が来たようだね」と婆さんは言う。


「真実とは?」とエマは言う。


「その真実は千百五十年前にも遡る話」と婆さんは言う。婆さんは椅子に座った。向かいの椅子に座っているエマは茶具でお茶を淹れながら静かに話を聞くである。

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