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坂崎コウスケ、襲来

 お祭りの雰囲気は、たちまち消えた。


「何かしら……?」

「行商人でもないだろうし、誰だろうな?」


 不安と疑問のざわめきが広間に伝播(でんぱ)する中、俺とカノンには察しがついていた。


「……あの声は、まさか……!」


 顔を見合わせる俺達を急かすように、今度は地鳴りにも似た声が聞こえてくる。


「聞いてんのか、天羽!」

「早く出てこねえとぶっ殺すぞッ!」


 おまけにひとりじゃなく、何人もの声が重なってる。

 カンタヴェールに不穏な空気を漂わせるには十分なほど、物騒な声だ。


「……お兄さん……」

「俺をご指名みたいだな。行ってくるよ、皆はここで待っていてくれ」


 不安げなキャロルの頭を撫でて、俺はひとりでカンタヴェールの小さな門に向かおうとしたけど、後ろからぞろぞろと皆がついてくる。


「おいおい、イオリの困りごとは俺っち達の困りごと、だろ?」


 先頭に立つブランドンさんのキモチは嬉しいけど、今回は相手が悪い。

 俺の予想が当たってるなら、町に来てるのはオーク以上に話が通じない(やから)だ。


「……相手はスキルを持ってると思います。それに、俺の勘が当たってるなら、ブランドンさんや町の皆を殺すのにあいつは躊躇(ちゅうちょ)しません」


 だけど、俺の警告を聞いても、ブランドンさんは胸をドンと叩いた。


「安心しな。俺っちも、クソ野郎の顔面を殴るのに躊躇しねえぜ!」

「皆で行こう、イオリ君!」


 カノンにもこう言われたなら、突っぱねるわけにもいかない。


「……分かった」


 俺を先頭にして、ブランドンさんやキャロル、カノン、そしてカンタヴェールの町民がぞろぞろと続き、声のする方に歩いてゆく。

 そして町と部屋の境界線に来た時、俺の予想は見事に的中したと悟った。


「やっぱりお前か――坂崎」


 声の主は俺の元クラスメート――坂崎コウスケだ。

 ただし、スキンヘッドや大量のピアスはそのままに、世紀末丸出しの格好や全身にちりばめられたシルバーアクセサリーも含め、服装は随分変わってる。

 それはもちろん、坂崎の子分達も同じだ。

 これじゃ世界を変える転移者というより、蛮族って表現した方がいいかもな。


「まさか生きてるとは思わなかったぜ! お前の言う通りだな、マッコイ!」

「だ、だから言ったでしょう、転移者がいるって……」


 隣にいるデブの奴隷商人マッコイの頭をはたき、坂崎が俺の前まで来る。


「小御門にぶった斬られたってのに、しぶといやつだな、天羽! それで生き返って、こんなクソみてえな田舎町で隠れて暮らしてたってか!」


 転移する前なら、こいつとなるべく目を合わせないようにして逃げていた。

 今は違う、この外道と正面切って話すだけの力を手に入れたんだ。


「お前も、お前の子分も変わらないな。学校にいた頃から、何も変わっちゃいない」

「随分とデケェ口をきくようになったじゃねえか? ゴミカスのスキルしか持ってねえ分際で、なんでそこまで調子に乗れるのか教えてくれよ、なあ?」

「今のイオリ君は、君よりずっと強いよ」


 カノンが話に割って入ると、坂崎の視線が彼女を舐め回すように向く。


「おーおー、銀城じゃねえか! おめーはもういっぺん、奴隷にしてやるからよ!」

「……ゲス野郎……」


 嫌悪を剥き出しにしたカノンの侮蔑の表情も、坂崎は意に介してないな。

 もうすっかり慣れたのか、気づけないほどマヌケなのか、さて、どっちか。


「お兄さん、この人……」


 ところでキャロルの疑問も、俺が解消しておかないとな。


「紹介しとくよ、こいつは坂崎コウスケ。俺が死ぬ原因を作ったひとりだ」


 俺の死因というのは、あながち嘘じゃない。

 小御門がやらなかったら、まず間違いなくこいつらが俺を殺してたに違いないし、もっと苦しみを与えてから川に落としてたはずだ。


「後ろのやつは友田に五十嵐、伊藤……後のやつは覚えてないけど、全員俺を殺した現場にいたよな。殺された方は、よく覚えてるぞ」


 なんで3人だけ覚えてるんだって?

 蹴られた方、殴られた方は忘れないんだよ――陰湿とか言うな。


「……イオリに何をしたんだ、おい」


 こいつらをどうするか、と俺が考えるよりも先に、ブランドンさんが俺の前に躍り出た。

 その目には、めらめらと怒りの炎が燃えてる。


「あ? 酒臭ぇ口を近づけんなよ、オッサン!」

「じろじろ睨んでんじゃねえぞ、クソが!」

「いいか、天羽に田舎者のゴミ共、いっぺんしか聞かねえからよーく聞け!」


 2メートル手前の巨体が仁王立ちしてもビビらず、坂崎が高らかに叫んだ。


「そこの銀城と天羽を俺達に渡して、町の金目のもん全部よこせ! 逆らうなら男は皆殺し、女とガキは全員奴隷にして町を燃やすぞ!」


 坂崎が話した内容は、信じられないものだ。

 こいつら、もう転移者じゃなくてただのならず者じゃねえか。

 しかもマッコイはドン引きするどころか、坂崎の機嫌を取ってばかりだ。


「あのですね、奴隷にする時は、なるべく女子供は傷つけないでくださいよ……特にあそこの牛角族はレア物で、高く売れるんですから……」

「バーカ、奴隷にするならあのデカ乳角女は売らねえよ! あいつは俺の性欲処理係だ!」


 挙句の果てに坂崎はキャロルを指さして、ゲスの極みにもほどがある発言までかました。


「……っ!」


 キャロルが視線を逸らすのを見て、俺もブランドンさんも黙ってられるわけがない。


「坂崎、テメェ……」

「このガキ、キャロルに何言ってんだオラァ!」


 ブランドンさんが殴りかかるより先に、坂崎が右手を突き出した。

 腕に刻まれたスキルの紋章が光り、地面が揺れる。


「うるせえんだよ、カス共が! 俺のスキルを見ても、同じことが言えるかァ!?」


 そして坂崎が叫んだ途端、地面が割れた。

 カンタヴェールの玄関口を破壊しつくして現れたのは、一軒家に匹敵するサイズの魔物が3匹。

 ふたつの頭を持つ鷹、巨大な花弁を持つ百合の花、毒々しい色の蛇。


『『ギャアアアアアアースッ!』』


 常軌を逸したサイズの魔物が叫んだ瞬間、空気が震えた。


「これが俺のスキル、【魔物使役(しえき)】! イグリスでも特にヤバい魔物を自由に操る、最強無敵のAランクスキルだァッ!」


 坂崎もまた、巨大なしもべを従えて、細い目を見開いて笑った。

【読者の皆様へ】


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