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イオリのパワー全開!

「な、なんじゃこりゃあ……!?」

「大木の幹を全部まとめて大蛇にしました。俺がナイフを振っても威力は低いですけど、こいつが突き刺せば、オークでも一撃です!」


 ブランドンさんが驚くくらいなんだから、この大蛇のプレッシャーはすさまじい。

 大木の根の硬さを持ち、ナイフを自在に操るんだから、アナコンダとかよりもずっと強い。


「ブランドンさん、魔物が困惑してる今のうちに、キャロルを!」

「お、おう!」


 俺の声に応じて、ブランドンさんは駆け出す。


『ブヒィーッ!』


 俺達とキャロルの関係を悟ったのか、あるいは蛇には敵わないと思ったのか、オーク達の狙いはまたも彼女に変わった。


「キャロルをさらって逃げるつもりか……そうはさせるか!」


 一番キャロルに近いオークを指さすと、大蛇が地面を()い、敵に巻き付く。


『キシャアアアーッ!』

『ブ、ブゴ……オゴオオォ!?』


 そしてたちまち全身に巻き付くと、オークの骨が砕ける音がした。

 大蛇は相手が自分よりずっと大きくても締め付けて、筋肉も骨も丸ごとバキバキに破壊して丸呑みにできる。

 棍棒を振り回すしかできないオークが、勝てるはずがない。


「ナイフを使わなくなって、大蛇に締め付けられれば、小舟くらいなら潰せるんだ。オークがどれだけ硬いか知らないが、壊せないわけがないだろ!」


 骨を砕かれて地面に倒れる同胞を見て、オークはブヒブヒと鳴いて困惑する。

 一方でブランドンさんは、無事にキャロルのもとに辿り着いた。


「お父さん……!」

「イオリ、キャロルは助けたぞ!」

「ナイスです、ブランドンさん! だったらあとは、オークを倒すだけだ!」


 大蛇だけでも倒せるけど、確実に倒すなら増援が欲しい。

 だったら今度は、辺りに無造作に生えている花々を、俺の味方にしないとな。


「スキル【生命付与】! 言っておくが、こいつはライオンやオオカミよりタチが悪いぞ!」


 俺の声に応じて、野花(のばな)が集まって変化を起こす。

 たちまち命を与えられて変化したのは、全身が茎や葉でできて、頭にぴょこんと花を生やした獰猛な獣――ハイエナだ。


『『ウオォーンッ!』』


 3匹のハイエナは雄たけびを上げて、残ったオークに一斉に噛みついた。


『ブギィイ!』

『ギィ、ブヒョオオ!』


 しかも1匹が1匹のオークを狩るのではない、3匹がまとめてオークの頭、腕、足に噛みついて、残虐な暴力を繰り広げてる。

 葉でできた歯じゃ、何も噛めないって?

 どっこい、オークの分厚い皮を貫くくらいの力は付与してるっての。

 SSランクのスキルは伊達じゃないぞ。


「ハイエナは群れで獲物を狩る、しかも狡猾だ! 1匹だって逃がさない!」


 棍棒で殴る間もなく、たちまち肥えた体が食い千切られ、皮と骨だけになってゆく。

 で、残されたオーク2匹のところには、当然大蛇が襲い掛かってる。

 ナイフを装備した蛇の俊敏な動きにオークが抵抗できるわけもなく、最初の犠牲者と同様に頭を貫かれ、どうと倒れた。


「あいつが戦うところなんざ想像したことがなかったが、こりゃたまげたな……」


 ブランドンさんが感嘆の声を上げた頃には、オークはことごとく地に()していた。

 頭に風穴が開いたもの、ハイエナに食い尽くされたもの、骨と筋肉を潰されたもの。

 どう見ても、全部死に絶えているだろうな。


「よし、オークは全部倒したみたいだ。皆、元の姿に――」


 集まってきた動物達をねぎらいつつ、木の幹と草花に戻ろうとした。


『ブルオオオオオォォッ!』


 その隙を突こうとしたのか、ナイフで刺したはずのオークが起き上がり、拳を振り上げた。

 はっきり言って、オークが俺を殴るより、大蛇が巻き付く方が早い。

 だから俺は避けようとしなかったし、反撃で仕留めてやるつもりだった。


「――させるかってんだ、オラァッ!」


 ――ブランドンさんがオークをぶん殴るのは、さすがに予想外だったけど。


『バブギャアアアアッ!?』


 顔面がめちゃくちゃに歪んだオークは、ブランドンさんが殴り抜くと地面にめりこんで、今度こそ動かなくなった。


「俺っちのかわいい娘に手ェ出したんだ、一発ぶん殴ってやらねえと気が済まねえぜ!」


 ふん、と鼻を鳴らすブランドンさん。

 オークの顔面には、拳の痕が残ってる。

 人間くらい、マジで(ひね)り潰されそうだ――鉄くずを丸めて球を作るくらいなんだから、そりゃとんでもない腕力なんだろうけど、想定以上にもほどがあるぞ。

 まあ、とにもかくにも、オークが全滅したのはいいことだ、うん。


「それにしても、こんなにオークがいるなんて、やっぱりどこかの誰かがブリーウッズの森に魔物を放ったんでしょうか?」

「だったら、町にも注意しとかねえとな。これで終わりとは……キャロル!」


 ブランドンさんの声を聞いた俺は、キャロルがぐったりと倒れてるのに気づいた。

 さっきまで意識はあったはずなのに、どうなってるんだ。


「キャロルは大丈夫ですか!?」

「……気を失ってるだけだ。ずっと張り詰めてた、緊張の糸が切れたんだろうな……」


 確かにキャロルには、ケガをした様子はない。

 オークに襲われて死ぬかもしれなかったんだから、気を失っても仕方ないか。


「ケガがなくて、本当に良かったです」

「ああ、本当に良かった……この子に何かあったら、俺っちは死んでも死にきれねえよ」


 ブランドンさんがキャロルを背負う。

 俺を見て、にっこりと笑う。


「ありがとな、イオリ。店のこともそうだが、お前さんにゃ助けられっぱなしだ」

「助けられたのは俺の方ですよ、ブランドンさん。俺は家族のためなら、なんでも……」


 その温かさにつられて、つい俺は余計なことまで言ってしまった。

 名前も血のつながりもない居候なのに、家族だなんて踏み込み過ぎだ。


「あ、すいません、変なこと言って! 家族ってのは、その、つい――」


 でも、ブランドンさんは俺の言葉を否定しなかった。




「――お前さんはもう、俺っち達の家族だぜ」


 代わりに、俺を家族だと言ってくれた。

 そう告げられた時、心臓の奥から温かい気持ちが湧きあがってきた。


「帰るぞ、イオリ。俺っちと、キャロルと、お前さんの家にな」

「……はいっ!」


 俺も笑顔で応えて、ブランドンさんの後ろについて行く。

 再び松明で照らされた道を歩くあの人の姿が、俺には父親のようにも見えた。

【読者の皆様へ】


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