そう思っていた。思っていただけだった。
”認識を変える”
これまでの応用だという入りから想像していたものよりもはるかに複雑で応用的過ぎないかと感じる。
「ここは夢の世界。であればこの世界は多かれ少なかれ脳の影響を受けている、いや想像の影響を受けていると言った方がある意味正しいのかも」
「勿論、それもあくまで仮定に」
「過ぎませんけどね」
ユイとヒイラギはお互いを黙ったまま見合っている。
あくまでもこの世界が夢の世界であるのならば、所詮は私たちの想像を越えない。
逆に言えば想像の範囲内であれば私たちが望んでいることなら叶うのでは?
「皆さんが僕のことを女性だと認識した。それは本当のことではなくで僕が作った誤りの認識です。実際に僕が昨日ユイさんと源さんと一緒の家に泊まらせてもらった時にここにいない方も含めて誰もその状況に違和感を抱くことが無かったですよね?」
「それは確かに…」
あまりに予想外過ぎる量の情報を知らされて脳の回転が全く追い付いていない。
でも、あの集落で一緒にご飯を食べた時とかの気さくな雰囲気ではなく、ただ真面目な顔で私たちにその能力?みたいな説明をされるととてもヒイラギが嘘をついているとは思えない。
「……あなたが男性であっても女性であってもあなたへの印象が変わることは無いと思うわ。ただ、何故そのような認識の改変を昨日の私たちにしたかどうか教えてくれる?その理由をキチンと話してもらわないとこれからの信用について関わってくると思うの」
アヤが神妙な面持ちのままヒイラギに問いかける。
認識を変える、いや、認識に限らず何かを変えるということは本来そうすべき理由が無ければ行う必要のない行為である。場合によっては変えたことによって変える前よりも状況が悪化することだってある。
今回の認識を変えたことだって例外ではない。
認識を変えたその理由に正当性があろうがなかろうが、この場においてはヒイラギはその理由を私たちに話すべきである。これは私たちの個人的な関係だけでなく2つの国家の間の信用にも関わり得る問題なのだから。
ヒイラギはそんなアヤの疑問に答える。
「あれはただ単純に皆さんの男女比を考えて僕のことを男性だと思っておいてもらった方が寝る時のスペースだったりいろいろと都合が良いと考えたからです」
ヒイラギはベッドに座り、更に話を続ける。
「それでもずっと認識を改変したままでいるのは、この能力について不確定な情報のままでは危険だと思ったので、源さんとユイさんが寝た時に元の認識に戻しておきました。本当は朝起きた時にも一時的に認識を改変しようかと思ったんですけど、ユイさんは先に家を出ていましたし、源さんはまだ寝てました。ですので、皆さんの認識は僕が女性であるというある意味正しい認識になっていたはずです」
確かにヒイラギはあの集落で私たちに会ってからこの認識の話を私たちにするまで自身の性別を私たちに言った事はただの一度も無かった。私たちが一度も性別を聞かなかったのだからわざわざ自分から性別を言う必要もそもそも無いのだが。私たちは初めてローブを取ってその顔を見てヒイラギのことを美少女だと認識していた、それほどヒイラギの顔は私たちに男性であるかもしれないという可能性を作り出さなかった。だからこそ、私たちは勝手にヒイラギが女性であると思い込んでいた。そう認識していたのだ。




