変わりゆくもの
「え!?」
そう言ったのは私だけではない。
その場にいた全員、いや、ヒイラギを除く私たち全員が同時に口に出した言葉だった。
「え?え?だって昨日はユイと源さんと一緒の家で寝てたんだから男なのは当たり前で」
「なら、どうしてユイさんと同室にすべきだって誰も疑問に思わなかったの?」
普通に考えれば昨日のことを考えればヒイラギが男であることは全く違和感がない。
なら、何故、アヤが言うように私はヒイラギとユイを同室にしなかったのか。
何故、ユイだけが男だと認識していたのか。
ヒイラギが女だと仮定して話を進めていたのか。
ふっとヒイラギの顔を見る。
まるで美少女のようなその整った顔立ちがより私を混乱させる。
あれ?なんかだんだんよく分からなくなってきたな…
「ん?……あっ」
ヒイラギがやっべぇって顔を一瞬見せたか見せなかったのかも分からないうちに私たち全員と目が合わない方向に顔を逸らした。
そんな素振りを私たち(アイラ以外)が見逃すわけもなく、まず即座にユイが部屋のドアを閉めて私とアヤがそれぞれヒイラギの両腕を抑える。
「いやいやいや。その顔は何か隠してるし何か知ってる顔だよねえ」
「ここで私たちに不信感を持たせるのは得策ではないのではなくて?」
ヒイラギは両目をとんでもないスピードで動かして、両側にいる私とアヤを交互にn度見した。
「……こりゃ、隠し通すのも無理ですね。良いでしょう、正直に話しましょう。なので、一旦この手を離してもらっても良いですか?」
私とアヤがヒイラギを押さえつけていた手を離すと、ヒイラギも特に抵抗とか逃走とかそういう素振りも見せずにベッドに座り直した。どうやら本当に観念したらしい。そもそも1:4の状況ならそうせざるを得ないような気もするけど。
「ユイさん、ユキさん、アヤさんの3人は初めてこっちの世界に来た時に思いませんでした?なんでアイラさんたちと会話出来るのかって」
コッチの世界に初めて来た時のことを思い出す。
確か最初にこっちに来た時はイノに突撃されてそのまま気を失って。
で、2回目はあの集落でゴブリンを始めとしてアイラやユイと出会って。
そこでユイに言われるがままに会話が出来るように念じたらいつの間にか会話できるようになってて。
後から来たアヤもそういえばいつの間にかアイラたちと会話出来てたし。
「会話が出来る以上に非常識な世界だからこそ、その違和感も飲み込めていたんだとは思います。でも、それでも改めて再認識すると変な話ではあるわけです。そこから次の段階に進んだのが僕のしたことです」
「次の段階?」
するとそれまで部屋のドアの辺りでヒイラギが逃走しないように構えていたユイがヒイラギに近づく。
「より複雑であったり異なる願望もこの世界では実行できるんじゃないか。ってところかな?」
「流石。察しがいいですね」
「僕も水くらいは操作できるようになっているからね。君がしたことよりも単純なことかもしれないけど、多分君と同じ道は辿っていると思うよ」
「ユイさんの言ったことは概ねその通りです。会話できる、水を操る、いずれにしても何かしらの願望がそのキッカケになっているのなら、いくらでも応用は効くのでは無いか?そう考えた結果を実行したのが僕の能力みたいなものです。僕は皆さんの認識を少し変えたんです」




