まずは拠点から
支配人に案内してもらって2階の部屋に向かう。
外観と同様に豪華絢爛といった内装ではなく、無駄は無くそれでいて質の高さを感じる内装。
シングルベッドが2つとソファが1つ、あとは長机に椅子が並べられており、ガチャガチャすることなくそれでも必要なものが十分にある内装だ。あとでもう少し探索してみよう。
控えめに言わなくても私がこれまでに見てきた中で文句無しのトップクラスの宿。
とりあえず手に持っていた荷物を床に置く。
「は~!つっかれた~~」
そう言いながらベッドに向かって飛び込む。
ふっかふか!何これ!ふっわふわ!
ゴロンと仰向けの姿勢になるとアヤがやや笑顔のまま何かそわそわしていた。
ここで察しちゃうのが私なんだよね。
「ヘイ。アヤも私の真似して良いんだぜ」
これまでとは違う環境に何か変な喋り方になってるけど、このベッドは全ての人をそうするだけの悪魔的な力を持っている…。
「そ、そうかしら…。これまでそんなことしたことなかったのだけれど…」
少しばかりの抵抗感が言葉から感じられるが、そう言いつつもアヤの両足は確実にベッドの方へぐんぐん進んでいき、ユキと同様にダイブを決め込んだ。
「ふっかふか!何これ!ふっわふわ!」
さっき私が心の中で思ったことを口に出した。
というか、やっぱこの人も私と同い年だよなぁ。普段の態度とか話し方とか雰囲気とかは私よりも大人びて見えるけど、やっぱ素の姿は私と大して変わらないや。
「凄いわ!こんなふわふわのベッドなんて私の家のベッド以外で初めて!」
おおふ。
「さあ、ユイもおいでよ!ふっわふわだよ!」
「ユイさんも!ふっかふかよ!」
私とアヤで同時にユイの方を向く。
「あー、僕は後でやらせてもらおうかな。支配人さんもいることだし」
苦笑いをしているユイの後ろで同じくらい苦笑いをしている支配人と目が合う。
まだ、部屋の位置を案内してもらっただけで全体の案内が終わったわけじゃなかった。
私とアヤは全くの同じ挙動でベッドからスッと降りるとそのまま黙って支配人の案内の続きを聞くことにした。
「よ、よろしいですか…?」
「「はい」」
「えー…、こちらの部屋が皆様に泊まって頂く部屋となっております。そちらの国からどれだけの方がいらっしゃるのかが分かりませんでしたので、ひとまず3部屋は空けておりますが、いかがなさいますでしょうか」
今回、私たちは全部で5人で来ている。部屋にはベッドが2つあるので2:2:1で分かれば問題ない。
ということでそのまま3部屋を今回アイダムに来ている間、泊めさせてもらうことにした。
その後、ここ全体の基本的な説明を支配人の方からしてもらい最後に部屋の鍵を預かり一旦私たちは自由時間に入ることになった。
「よし。じゃあ荷物をどこに置くかも含めて部屋割りを考えようか」
「とりあえず男女で分ければ良いんじゃないかな。男は僕だけだから1部屋はそれで確定して、残りの2部屋の組み合わせを考えようか」
なんか1人だけ部屋をフルに使えるのがちょっとズルい感じもしたけど、男女が混ざるのもそれ以上に変な感じもするから、まあしょうがないという事にしましょう。
「そしたら私たちをどうやって分けるかだけど…。あれ、そういえばヒイラギさんはこの後どうするの?」
「私も今回の来国の間は基本的に皆様と行動は共にしますよ。なので、私も皆さんと一緒にこの宿に泊まります」
そうなると、残りの2部屋を2:2で分けることになる。
現実での付き合いで考えたら私はアヤと組みたいけど、そうなるとアイラがヒイラギと組むことになる。
多分、ヒイラギのことだから言葉の問題は無いとは思うけど、アイラにほぼ初対面の人と一緒の部屋にするってのは流石にか。
「そしたら私がヒイラギと一緒の部屋にするからアヤとアイラが同室はどう?アイラも私たちが一緒の方が緊張しないでしょ」
「そ、そうかい?でもユキとアヤは友達なんだろ?別に私は気にしないから2人で一緒の部屋にすれば良いんじゃないか?」
「別に寝るとき以外は直ぐに会えるし大丈夫だよ!それにアイラはいつもと違うところで泊まったこととかないから知らないかもだけど、どれだけベッドがふっわふわでも中々寝付けないものだよ?」
「それは確かにユキさんの言う通りね。私たちは交渉のために来ているわ。言語の都合上、私たちも付いてきているとは言え、あくまでもこちらの代表はアイラさんよ。寝不足の状態で交渉に行くというのはよろしくないんじゃないかしら?」
私に加えてアヤにもこう言われてしまってはアイラにこれ以上、部屋の割り振りに関して否定する理由もない。
「そうかい?それじゃあ私はアヤと同じ部屋で寝させてもらおうかね」
ということで、それぞれアヤ&アイラ、ユキ&ヒイラギ、ユイの組み合わせで泊まることに決まった。
ヒイラギにもその部屋割りを伝える。
「えー…っと、一応確認しますけどこの部屋割りで大丈夫ですか?」
「え?うん。男女で分けて私とアヤがそれぞれ分かれるってことで…」
「それなら僕とユイさんが同室の方が良いんじゃないですか?」
「え、何で?」
「だって、僕、男ですよ」




