おはよう、世界
どうもshiです。初めて書いてみたので拙い所もあるとは思いますが、まあ楽しんで頂けるとありがたいものです。
※3月31日更新。カクヨム様の方でも投稿開始しましたのでその旨をここに記しておきます。
「おはよう」
そんな声で私は目を覚ました。
自分の声じゃない。
でも聞いたことのある誰かの声でもない。
ただその4文字を聞いただけ。
そして、同時に自分の体が宙に浮いているような感覚を覚える。
この重力に支配されない何とも心地よい感覚が…
………
………あれ?
足が地面についていない。
というか、体のどの箇所も地面に接していない。
そう。"宙に浮いているよう"ではなく、本当に"宙に浮いていた"。
「えーーー!?」
慌てて体を動かしたものだから私の体が保っていた絶妙な安定感は失われそのまま地面へと落下した。
受け身なんてとてもじゃないけど取れるような姿勢でもなく、そのままドスンと地面へと落下した。
「いったぁ……」
仰向けのまま落下したことで打ち付けた背中をさすりながら体を起こす。
しかし、落下したことによってボンヤリしていた意識が少しハッキリしてきた。
そして、同時に自身の置かれている環境に気づいた。
「ここ、どこ……?」
辺りを見渡してみると、現実のようではあるがどこか違うような景色が広がっていた。
どこまでも澄み切った空にどこまでも広がる草原がそこにはあった。
こんな景色は世界中を探せばどこかにはあるだろうが、少なくとも私が住むところにはこんな景色は無い。
それが現実ではない感じがした理由である。
私の住んでいるところはこんな自然溢れるような場所というよりかは、人工物と雑踏がそこかしこにあるような所だ。
だからこそ、このような自然的で静かで奇麗な景色に違和感を感じたのだろう。
「…どこなんだろう。ここ…」
私の頭は目の前の情報で混乱しているが、ここで立ち止まっていてもこれ以上の情報を得ることは出来ない。
私は立ち上がって辺りを散策し始めることにした。
一体全体ここはどこで何があるのか。
とにかく情報が欲しい。
とにかくしばらくの間、歩き回ってみる。
しかし、どれだけ歩いてみても似たり寄ったりの風景が続くばかりでこれ以上の情報を得ることは望めそうにない。
「うーん。やっぱり現実とは思えないなぁ」
私がそう思うのは目が覚めた時の状況だ。
目が覚めた時に私は「宙」に浮いていた。
宙に浮くなど現実において到底考えられる事ではない。勿論、無重力なら話は別なのだが。
まあ、その後落下していて未だに腰が少し痛むあたり無重力の線も消えるだろう。
「そうなるとここは今流行りの異世界って事かな!?」
ここが異世界であるならば、突然こんな場所で目が覚めた事も起きた時に宙に浮いていたことも説明が付く。と思う。異世界ならそういったご都合主義的展開はあるような気もしていた。
「じゃあ私も何か超能力みたいなもの使えるんじゃない!?」
ここが現実ではないと確信し始めた私は少し気持ちが舞い上がったが、現状ではぶっちゃけ何も分からない。
それでも、このまま散策を続けていれば何か新しい発見や変化があると思って歩き続けた。
しばらく歩いていると遠くの方に何か大きな塊があるのが見えた。
「ん~~?」
遠すぎてその塊が何かは分からないが、とりあえずこのまま何もない景色の方に歩き続けるよりはいいだろうと思い、その塊の方へと歩き始める。
数歩、また数歩とその塊へと近づく。
もうそれなりに歩いただろうと思った頃にはその塊が何であるかが分かった。
イノシシだ。
その瞬間、私は近くの茂みへ身を隠した。
そのイノシシは普通のイノシシとは明らかにおかしい所があった。
そもそも普通のイノシシが遠くから見える訳がない。
そのイノシシは普通のイノシシの数倍の大きさがあった。
(やっぱこの世界は現実じゃない…!)
あんなものに襲われたらひとたまりもないと、私は茂みの中で息を殺し何とかやり過ごそうと決めた。
(ヤバいって!あんなのに襲われでもしたら死ぬって!)
心の中でそう思った私の首元に生温かい風が当たったのが分かった。
恐る恐る振り返るとさっきのイノシシが私の目の前に。
「ハ、ハロー…」
自分でも何を言ってるんだろうとか思う暇もないうちにイノシシが雄叫びをあげた。
「ギャアーーーーーーーーー!!」
私は一目散のその場から逃げ出した。それはもうとんでもない速さで。
走りながらもチラっと後ろを再び振り返ると少しずつ近づいてきているイノシシがいる。
このまま逃げ続けても埒が明かないと思い、
「どうせ異世界なんでしょ!なんか技とか出るんじゃない!?」
と言いながら、向かって来るイノシシに向かって両手を構えて
「なんか出ろーー!」
と叫んだ。
その直後に私の体は宙を舞っていた。
能力など出る訳もなく私の体はイノシシに呆気なく吹き飛ばされていた。
「ぐぅっ……」
吹き飛ばされた時の衝撃に加え落下の衝撃で私の意識は朦朧とした。
しかし、朦朧とした意識の中、治癒系の能力なんかが使えないかと祈ってみたが、さっきも能力なんか出てないんだから治るはずもなかった。
次第に意識が遠のいていく。
吹き飛ばされた時に打ち所が悪かったのか、体が思うように動かない。
骨も何本か折れているような気もする。
「あーあ…。このまま終わるのかな…?せっかく異世界にでも来れたと思ったのになぁ…」
最早、意識も消える寸前に私はそんなことを思った。
「能力も使えなかったし死にそうだし結局なんなんだよ、もう…」
そう思ったところで私の意識は途切れた。
再び目を覚ましたと思ったら、そこには見慣れた天井があった。
10話以降は毎週月曜日の19時に投稿します。
話が更新される度にpixivの方でもキャラの名前など設定を更新しております。最新話までの情報が載っているので最新話を読む前にpixivの方へ行きますとネタバレのオンパレードになりますのでお気をつけください。
感想やなんやらもよろしくお願いします。