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2.贈り物は思いやり

「兄さんの言い訳はわかりました」

「言い訳じゃないって。俺は悪くねえって言い分を述べただけだからな」


 実の妹に半目で睨まれた。実の兄を信じてもらいたいものだ。

 俺の妹、アリシアはフィーナと同い年の女の子である。重たそうな黒髪に、透き通りすぎて青白い肌という極端なコントラスト。ビキニアーマーなんぞを装着してきたフィーナとは違い、魔法使いらしい全身ローブで肌をすっぽりと覆っている。

 さすがは俺の妹だ。フィーナに比べて防御力が段違いに高い。

 一時的に防御力という概念を捨ててしまったフィーナだが、今はまたビキニアーマーを身に着けている。さすがに裸よりはマシだ。


「ごめんごめん。私がちょっと勘違いしただけなんだ。だからその……話を蒸し返さないでくれ……」

「大丈夫。フィーナは何も悪くない。悪いのはフィーナを卑怯な口車で乗せた兄さんの方。フィーナは純情可憐なのだから、兄さんがもっと思いやりのある言葉を選ぶべきだった」


 アリシアは優しくフィーナを抱きしめた。

 そうですか。悪いのは全部兄さんの方ですか……。

 フィーナとアリシアは同い年というのもあって、村では一番の仲良しなのだ。あまりに仲良しすぎてアリシアが兄の味方をしてくれないほどである。お兄ちゃんは悲しい。

 しかしまあ、今回ばかりは俺も反省しなければならないだろう。

 フィーナは突拍子のない行動をする奴だと知っていたはずだ。成人したばかりでガキンチョ精神がいきなり抜けるはずもない。大人扱いをしようとした俺が悪かったのだ。


「フィーナ、どうやら勘違いさせてしまったらしいな。俺が悪かったよ」


 謝罪を口にしながら頭を下げる。誠意は男に必要な精神だ。

 どんな勘違いをすれば男の前で全裸になるのかという話は置いといて、フィーナからすれば俺に裸を見られたのは大事だろう。いくら親しい仲とはいえ、謝るのが筋だ。


「あ……、やっぱり勘違いなのか……はぁ~……」


 謝ったのに落ち込まれてしまった。なぜだ。


「兄さんのバカ。デリカシーがないのだから」


 アリシアに怒られてしまう。俺にこれ以上どうしろってんだよ!

 やっぱり俺の言い分の方が正しいって。あれは不可抗力なんだからな! ちょっと裸を見たくらい……見た、くらい……。やっぱり俺が悪いか。

 何はともあれこんなやり取りを続けていたら身が持たない。早々に打ち切らせてもらおう。

 俺は部屋の隅にある棚へと向かう。

 棚の中から一つの小箱を手に取った。それをしゅんとしているフィーナの目の前へと持って行った。


「え、何これ?」

「フィーナが今日で十五歳になるのはわかっていたからな。まああれだ、誕生日プレゼントってやつだよ」


 訝し気に小箱を見つめていたフィーナではあったが、俺の言葉に目を見開くとすごい勢いで小箱をぶんどられた。


「テッドが私に? 私にプレゼント? おおっ!」


 目を輝かせて小箱を高々と掲げる。そんなに見せびらかせるようなもんじゃないぞ。


「ねっ、ねえねえ開けていいの?」

「好きにしろ。もうフィーナのもんだからな」


 待ちきれないとばかりに小箱を開けるフィーナ。見開いた目が限界を超えて大きくなる。


「こ、これ……」


 震える声。それは彼女の手にも伝わってしまったようだ。震える手で中身を取り出している。

 フィーナの手には首飾りが一つ。装飾は控えめなので女受けは悪いかもしれない。


「見た目はあれだが目をつぶってくれ。手作り臭さがかっこ悪いのは認めるけど、一応魔法を込めてあるからな」

「もしかしてテッドの手作り?」

「ああ。で、その首飾りにはな──」

「わぁーい! テッドから手作りプレゼントもらっちゃったーー!!」


 聞けよ。って、はしゃぎ出したフィーナに聞こえるはずがないか。

 前から「冒険者になる!」と公言していたフィーナである。元冒険者の父親に鍛えられていたこともあり、相当な実力の持ち主であるのも知っている。たぶん剣の腕だけなら村で三番目くらいに強いと思う。

 しかし、どんなに実力があったとしても冒険者は危険な職業だ。

 聞くところによれば強い魔物と戦わなければならないらしい。この辺の獣なら弱いからなんとかなるが、だからって調子に乗って危険な魔物にでも遭遇したら大変だ。

 そのために、あの首飾りには申し訳程度ではあるが守りの魔法を込めてある。何もないよりはマシなはずだ。

 だけど、そんな俺の気遣いもビキニアーマーで全部台無しになってしまっているがな。



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― 新着の感想 ―
[良い点] デッド・アンド・アライブみたいな。
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